ファッション

500人以上が来場する出展無料のアート&音楽イベント「TOKYO LOVEHOTELS」 「日本の真面目すぎるアートイベントを変えたい」

 アーティストとして東京で活動するカリン ロー(Kalinlaw 以下、カリン)とロビン・ラステンベリエル(Robin Rastenberger 以下、ロビン)が立ち上げたアートイベント「TOKYO LOVEHOTELS(トーキョーラブホテルズ)」は、“アーティストのための自由な場所”を目指して2019年にスタートした。東京・原宿の「サンキーズペントハウス(SANKEYS PENTHOUSE)」をメイン会場に毎月開催し、出展者は作品の展示・販売などを無料で実施できる。他にないシステムが話題となり、新型コロナウイルスのパンデミック以前は20人前後の出展 ・出演者が集まり、入場料1500円ながら500人以上が来場していた。

 同イベントで扱うのは写真や絵画に加え、アパレルやジュエリーといった物販、ヘアメイクやネイル、クラフト教室などの体験型コンテンツまでさまざま。国内外からアップカミングなアーティストが集まり、これまでには「WWDJAPAN」のU30の若者たちにフォーカスした連載「ユース イン フォーカス(Youth in focus)」で追ったサウジアラビア出身の若者3人が立ち上げたストリートブランド「ウナストーキョー(UNAS TOKYO)」も参加している。

 オーガナイザーのカリンとロビンは、どんな思いでこのイベントを立ち上げたのか。コロナを経て、どんな未来を描くのか。2人に話を聞いた。

WWD:自己紹介をお願いします。

カリン:イギリスと日本のハーフで、東京には10年以上住んでいます。イベントオーガナイザー以外ではアーティストとDJをしています。アーティスト活動はTシャツにエアブラシでペイントをするアパレル作品がメインでしたが、今はキャンバスにもペイントしています。

ロビン:僕はスウェーデン出身で、「どこか遠くの世界に行きたい」と高校卒業後に日本へやって来ました。もう12年間住んでいます。普段はシンガーソングライターとモデルをしています。カリンとは元々「アメリカン アパレル(AMERICAN APPAREL)」で一緒にアルバイトをしていて、その後しばらく会っていなかったのですが、4年前にお茶をしたら、バイトの時以上に意気投合しました。

WWD:「TOKYO LOVEHOTELS」を始めた経緯は?

カリン:最初は自分が作ったアパレルを展示・販売する場所として始めました。ポップアップをずっとやりたかったのですが、主催者に出展料を払うのが難しくて、なかなか実現できなかったんです。その悩みをロビンに話すと、「売れるかわからない駆け出しのアーティストにとって、ポップアップの出展料を先払いするのは厳しいよね」と同じ悩みを持っていました。

ロビン:例えばライブハウスでは、出演にかかるお金は自分で負担し、お客さんがある程度集まったらようやく数10パーセントのキックバック(売上割戻)がもらえるようなシステムも少なくありません。日本にはまだまだアーティストが自由に表現する場所が足りてないんです。

カリン:そんな中、道玄坂に小さなイベントスペースを持っている知り合いから「そこでイベントをしないか」とチャンスをもらったんです。自分が作品のポップアップをして、ロビンが音楽のパフォーマンスをしたらどうかと考えて、話を持ちかけました。それから私たち以外にも興味を持ってくれた友人らが出演、出展するようになり徐々に大きくなっていきました。

ロビン:出展料なしのこだわりは、今でも続けているイベントの原点。“主催者”と“出展者”という上下関係はなく、僕たちはアーティストに場所を提供するだけです。自分たちの売り上げはチケット代からパフォーマーへの出演料を引いた分だけ。アーティストの売り上げには一切さわりません。アートに使うお金も残しておいてほしいっていう気持ちがあるから、チケット代も全然上げていない。本当にアートのためにやっています。

WWD:ユニークなイベント名の由来は?

カリン:初回の会場が道玄坂の“ラブホ街”だったのが由来の一つです。あとは、海外では日本のラブホテル文化がユニークなものとして知られていて、キャッチーだと思い採用しました。

ロビン:音楽やアートを通して、人々が“一夜の愛をシェア”するというイベントのテーマにもぴったりだよね。たまに本当のラブホテルと勘違いする人もいて、インスタグラムのDMで「一泊いくらですか?」って値段を聞かれたこともあります(笑)。

WWD:イベントのマスコットキャラがいると聞いたが?

カリン:よく知っていますね!プロスティ(Prostie)というマスコットがいます。ホテル暮らしをする、独立した現代の女性像を表現したキャラクターです。

ロビン:テーマも毎回異なるし、出展者のジャンルも多様なイベントだからこそ、特定の世界観を出したくて制作したキャラクターです。僕はゲーム作りが趣味なので、彼女をテーマにしたゲームも制作してウエブサイトで公開しています。最近、NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)としてプロスティのデジタルアートの販売も始めました。

多種多様なアートを求め、数百人が集まる空間に

WWD:今では数百人が集まるイベントになったが、どのように認知度を上げた?

カリン:最初は40人くらいの小さなイベントでしたが、徐々に口コミで広がり、色々な人から出演・出展したいと連絡が来るようになりました。反響を受けて、3回目から原宿の「サンキーズペントハウス」に会場を移して規模を大きくしました。ちゃんと人が集まるか不安だったけれど、100人以上集まり、オーナーからも「やるじゃん!」と言われロビンとすごく感動したのをよく覚えています。

ロビン:パンデミック直前には毎月の開催で500人以上が集まるほど大きくなっていました。出演者・出展者も常時20人ほどのラインアップで、クラブや飲食店、ギャラリーが融合したような面白い空間になって行きました。

WWD:どのような出展者が多い?

カリン:ジャンルは多種多様で、アパレル・ジュエリーなどの物販からヘアカット、メイクやネイルなどの体験型コンテンツ、フードやクラフト教室、写真や絵画などの展示・販売など本当に自由です。例えばジュエリーの販売ブースではその場で金属を削って制作するアーティストがいたり、タロット占いやヘナタトゥーを提供する人もいたりします。パフォーマンスもさまざまで、ライブ音楽だけでなくヴォーギング(アメリカの有色人種のLGBTQ+コミュニティにルーツを持つダンススタイル)のダンスパフォーマンス、華道や絵のライブパフォーマンスなどもあります。

ロビン:ただ、ジャンルレス過ぎてもイベントの色が伝わらないので、テーマを設けて、それに沿って出展者を決めることもあります。例えば“地球温暖化”をテーマにした回は、サステナビリティに取り組むアーティストやブランドを集めて、売り上げの一部をオーストラリアで起きた森林火災のチャリティに寄付しました。

WWD:来場者はどんな人が多い?

ロビン:年齢制限は設けていませんが、若い世代が中心ですね。クラブ目的でなくても楽しめるので、子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで遊びに来てくれています。

カリン:自分たちの周りから口コミで広がったこともあって、外国人や帰国子女などが多いです。パンデミック前は海外からの観光客にも人気で、「TOKYO LOVEHOTELS」の開催に合わせて旅の日程を調整してくれる人もいました。これからはもっと日本の人にも来てほしいですね。

パンデミックを乗り越え、世界的なアートイベントを目指す

WWD:新型コロナウイルスで風向きが変わった。

ロビン:本当に大きく変わりました。2020年はほとんどが休止期間になってしまいましたが、夏からは少しづつ再開しました。オンラインでやればという声もたくさんいただいたのですが、体験をメインにしているから、オンラインで伝わらないことも多い。そのため、政府と自治体の感染予防ガイドラインに従い、リアルでの開催にこだわりました。もちろん批判もありましたが、発表の場を失っていた多くのアーティストから感謝の声をもらいました。やって良かったと思っています。

カリン:ほかにも、ポッドキャストでの情報発信を始めました。ゲストにアーティストを招いて、活動について語ってもらい、人々に知ってもらえるプラットフォームになればと思っています。

ロビン:全編英語だし、かなりマニアックな話だけど、とっても面白いから興味のある人は是非聞いてみて欲しいな。

WWD:今後の展望は?

カリン:アート・バーゼル(Art Basel)みたいなイベントを目指しています。スイスのバーゼルとアメリカのマイアミ、香港で開催されるアートフェアで、ファッション・ウイークのアート版のような存在。特にマイアミでは、アートをアカデミックに発表する場でもありながら、イケイケなパーティも開催されるので、全世界から若者が集まります。海外と比べて日本のアートイベントは真面目なイメージが強く、若者が心から行きたい、かっこいいと思えるクールな場所にはなっていません。「TOKYO LOVEHOTELS」がアートを身近に楽しめる場になれたらうれしいです。

ロビン:ここに来れば東京のカルチャーとアートシーンが一度に味わえると国内外の人に認知されたい。そして、出展したアーティストや起業家、出演したパフォーマーがさらに活躍する機会を与えられるようなイベントになればと思います。

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