ファッション

「ドルチェ&ガッバーナ」デザイナーデュオが語る メンズ・オートクチュールへの情熱

 「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」の男性用オートクチュール、“アルタ サルトリア(Alta Sartoria)”の最初のコレクションがミラノで発表されたのは6年前のことだ。

 創業者兼デザイナーデュオのステファノ・ガッバーナ(Stefano Gabbana)とドメニコ・ドルチェ(Domenico Dolce)によると、「ドルチェ&ガッバーナ」のオートクチュール顧客の半数は男性で、アジア、北アメリカ、ヨーロッパ、インド、ロシア、そしてメキシコやブラジルといった南アメリカ地域に200人以上の顧客を抱えており、これまでにイタリアの各都市に加えて米国、日本、メキシコでもクチュールイベントを開催してきた。

 中国とは2018年11月にステファノのインスタグラム(INSTAGRAM)アカウントに端を発したスキャンダルによって関係に亀裂が入ったが、関係改善に努める中でブランドの収益は回復しつつあり、イベントの開催も行っている。そこで今回は、デザイナーのステファノとドメニコにメンズのハイファッションについて米「WWD」がインタビューした。

WWD:あなたたちにとって、“アルタ サルトリア”とはどういうものか?

ドメニコ・ドルチェ(以下、ドメニコ):“アルタ サルトリア”は単にかっこいい服のファッションショーというわけではない。その瞬間、歴史、関係性、食べ物、イタリアについてなど、全てのものが詰まっている。プレタポルテはファッションだが、クチュールはライフスタイルだ。顧客と会話をすることで、彼らが特別な日や自身のライフスタイルにおいて何を必要としているのかを理解したい。“アルタ サルトリア”のコレクションは、そうした会話を始めるための提案のようなものだ。

例えばある顧客は、60年代風のスキー用ジャンプスーツを作って欲しいと打診してきた。私はガッバーナと共にこの仕事を引き受けて、当時を彷彿とさせるストレッチの効いたウール素材を調達した。私の父はテーラーだったが、この仕事は単なる服屋ではなく、顧客の夢に携わる仕事だと常々思っている。

WWD:15年に“アルタ サルトリア”をローンチしたきっかけは?

ステファノ・ガッバーナ(以下、ステファノ)&ドメニコ:女性用オートクチュールの“アルタ モーダ(Alta Moda)”は、「ドルチェ&ガッバーナ」のセカンドラインである「D&G」を休止する決断に至るまでの間、何年もかけて検討を重ねてきた重要なプロジェクトだった。そうした流れで、12年7月に伊シチリア島のタオルミーナで“アルタ モーダ”を、15年1月にはミラノで“アルタ サルトリア”のコレクションをそれぞれ初めて発表した。

歴史を振り返ると、上流貴族や王子、マハラジャなど、男性たちは常に特別な瞬間に特別な衣服を選びながら時を刻んできた。そこで“アルタ サルトリア”では、「ドルチェ&ガッバーナ」のDNAと価値観に基づいた提案を行うことで、男性のヘドニズム(快楽主義)や独自性に対する欲求を満たしたいと考えている。

WWD:“アルタ サルトリア”はすぐに軌道に乗ったか?

ステファノ&ドメニコ:すぐに軌道に乗り、素晴らしいフィードバックを得ることができた。プレタポルテの上顧客から声がかかったり、“アルタ モーダ”の女性顧客の夫から注文が入ったり、口コミで広まっていった。

WWD:クチュールショーをどの程度重視しているか?

ステファノ&ドメニコ:私たちにとって、“アルタ モーダ”と“アルタ サルトリア”はイタリアそのものだ。単なるショーではなく、交流や共有の場でもある。そこで顧客として知り合った人びとが、数年後には会うのがとても楽しみだと思える友人となった。彼らとは深いコミュニケーションを取っている。

“アルタ モーダ”のショーでは、イタリア都市の芸術、文化、職人技から食に至るまでの卓越性に触れている。それぞれのショーには物語があり、人生に与える影響の付加価値となっている。

WWD:カップルが2人でオートクチュールの買い物をすることも多いのか?

ステファノ&ドメニコ:カップルの顧客も多いが、“アルタ モーダ”の世界観に惹かれる若者が多いのも興味深い。顧客の息子や娘からイベントに参加したいと言われることも多く、喜ばしい限りだ。

WWD:男性向けのオートクチュールの人気が高まっていることについてどう考えているか?また、昔のオーダーメードスーツとは何が違うのか?

ステファノ&ドメニコ:オーダーメードに関しては批判的な立場だ。オーダーメード製品は仕立てがいいが、産業化されている部分も多い。“アルタ サルトリア”のプロジェクトはその点で大きく異なっている。私たちは、アトリエやテーラーを含むわれわれのチームと顧客との親密な関係性を重視している。会話の中から顧客の世界観を知り、彼ら自身も自分についての新しい何かに気付ける、というのは非常に面白いことだと思う。

WWD:男性用のクチュールで最も人気の高いカテゴリーは何か?

ステファノ&ドメニコ:通常、男性顧客はトラディショナルなスーツを求めて“アルタ サルトリア”を訪れる。ディテールのこだわりこそあるかもしれないが、皆クラシックなものを欲しがっている。しかし、ひとたびリラックスしてくつろいだ気分になると、彼らの個性やヘドニズムが顔を覗かせて、スポーツの世界のような情熱と共に洋服やアクセサリーの要望を伝えてくれる。“アルタ サルトリア”はある意味ファッションではなく、私たちを常に技術的かつ創造的な探求の世界へと導いてくれる挑戦であると考えている。

WWD:メンズのオートクチュールならではの特別なテクニックやスキルはあるか?

ステファノ&ドメニコ:“アルタ モーダ”と“アルタ サルトリア”は実験のようなものだ。これまでにアトリエを拡張し、専門性の高い従業員を集めてきた。“アルタ モーダ”ではイタリアの優秀な職人にもスポットを当てており、ショーの開催都市では特殊な技術やそれを用いた製品があるかをリサーチしている。

例えばシチリア島のモンレアーレでショーを行った際には、レザー、ブロケード、スパンコールなどの異なる生地や素材を織り合わせるモザイクの技法に取り組んだ。また、ミラノのアンブロジアーナ図書館でコレクションを発表した際には、絵画に写し出された感情表現を衣服に再現するための技法にも取り組んだ。

WWD:男性は特別な日のためにオートクチュールをオーダーすることが多いのか?

ステファノ&ドメニコ:“アルタ サルトリア”の背景には“特別感”というコンセプトがある。私たちは、ユニークかつ他では再現することのできない唯一無二の衣服のみを作っている。特別な日に着る衣服を求めて“アルタ モーダ”を訪れる女性顧客とは違い、男性顧客は自分のライフスタイルや夢が詰まった衣服を求める傾向にある。

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

原宿・新時代 ファッション&カルチャーをつなぐ人たち【WWDJAPAN BEAUTY付録:中価格帯コスメ攻略法】

「WWDJAPAN」4月22日号の特集は「原宿・新時代」です。ファッションの街・原宿が転換期を迎えています。訪日客が急回復し、裏通りまで人であふれるようになりました。新しい店舗も次々にオープンし、4月17日には神宮前交差点に大型商業施設「ハラカド」が開業しました。目まぐるしく更新され、世界への発信力を高める原宿。この街の担い手たちは、時代の変化をどう読み取り、何をしようとしているのか。この特集では…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。

メルマガ会員の登録が完了しました。