サステナビリティ

教えて!パタゴニアさん 連載第3回 トレーサビリティーが大切な理由

 サステナビリティ先進企業のパタゴニアの担当者にその取り組みを聞く連載第3回。今、全産業的に重視されているのが企業活動における“透明性”ですが、ファッション産業では特に、商品をトレーサブル(追跡可能)にすることが重視されています。とても複雑なサプライチェーンを、労働環境や環境への負荷を把握して透明化するのは至難の業。パタゴニアはこの難しいテーマにどう取り組んでいるのでしょうか。篠健司・環境社会部ブランド・レスポンシビリティ・マネージャーに聞きます。

WWD:なぜ衣料品はトレーサブル(追跡可能)であるべきなのでしょうか。

篠健司・環境社会部ブランド・レスポンシビリティ・マネージャー(以下、篠):トレーサビリティーは、複雑なサプライチェーンによって生産される製品に、当社が使用している環境的、社会的な責任を追求した素材・慣行が、実際に用いられていることを証明する最善の方法と言えます。

WWD:改めてサプライチェーンを整理すると。

篠:衣料品のサプライチェーンは、糸の原料となる作物の栽培や毛をとる動物の飼育から、生地を縫製して衣類を製造し、完成した製品を倉庫や店舗、そしてお客さまの玄関先に配送するまでの全ての行程を包括する言葉です。繊維の産地から製品の完成に至るまで、サプライチェーンは多くの関係者によって成立しています。当社の場合も、多くの製造工場、繊維工場、紡績工場、縫製工場、加工工場、リサイクル工場、農場に依存していて、とても複雑です。

WWD:生産過程で環境に負荷が大きくかかっています。

篠:アパレル生産は、あらゆる段階で自然資源に依存していて気候変動に関与しています。例えば、石油を原料とするポリエステル、化石燃料で稼働する機械による織物、化学染料を使った染色や防水処理、工場と倉庫、店舗間の製品輸送、プラスチック製梱包資材を使ったお客さまへの配送などを通じて温室効果ガスを排出しています。

WWD:そうした中でどのように環境や人権に配慮したモノ作りをしていますか?

篠:こうした環境的・社会的影響を最小限に抑えるために、当社は製品の大部分に、オーガニックコットン、トレーサブルダウン、レスポンシブル・ウール・スタンダードを満たしているウール、天然ラバー、あるいはその他のリサイクル素材を含む、環境的に最も持続可能な、あるいは動物福祉に配慮した素材を開発・採用しています。またその公正な労働を推進するためにフェアトレードに取り組んでいます。

WWD:そうした取り組みを証明するためにトレーサビリティーが有効だということですね。

篠:はい。当社では厳格な第三者機関認証を得るためにサプライヤーと協力してきました。第三者認証を受けたトレーサビリティーは、製品に使用している素材が選択したものであることを保証するだけでなく、最終製品に至るまでの多数の工程において、別素材の混在や代替が行われていないことを保証します。

パタゴニアが取り組むトレーサビリティー

WWD:そんな中で、パタゴニアは透明性、トレーサビリティーにどのように取り組んでいるのでしょう?
篠:07年に透明性を最大限にするためにサプライチェーン情報を提供するサイト「フットプリント・クロニクル」をローンチし、ウェブサイトに全ての契約工場のリストを公開しています。現在、弊社のオンラインショップでは、弊社製品が製造された工場の名前と所在地を含む社会的・環境的属性を掲載しており、お客さまが購入前に確認することが可能です。

WWD:具体的なトレーサビリティーへの取り組みを教えてください。

篠:全ての最終製品工場(一次サプライチェーン)に対して社会的・環境的監査を行っています。

・全ての縫製工場とその下請工場(スクリーンプリント、洗浄、刺繍工場など)を含む一次サプライヤーについては、公正な労働慣行、安全な就労環境および環境への責任を促進・維持するために、「サプライヤー職場行動規範」を適用して米国のNGOである公正労働協会(Fair Labor Association)による監査など数々の適正評価を実施しています。

・全ての新しい工場との契約前に、厳密な水準を満たすことのできないサプライヤーを除外する効果的なプロセスとして「4段階スクリーニング・アプローチ」と呼ぶ評価システムを導入しています。

主要原材料サプライヤー(二次サプライチェーン)も監視し、それらの工場に対しても一次サプライヤーに適用しているものと同等の監査/是正工程を採用しています。

・原材料の原産地情報は、品質と環境および社会面での影響を管理するために必要であり、サプライヤーには、調達アンケートとサプライチェーン・マッピング全ての提出を要求しています。

・生地や飾り付け部品に関しては、プロフィールシート、サプライチェーン追跡シート、関連する全ての第三者機関の認定書を要求しています。

・社会的責任プログラムについても、全ての生地と飾り付け部品のサプライヤーが、雇用慣行、従業員の苦情対処方法、リサイクル方針、その他の社会的・環境的の取り組みなどの主要な社会的責任に関する指標について工場の監査をすることを義務づけています。

現在、農場レベルまでのサプライチェーン・マッピングを開始しています。

・パタゴニアが使用する環境に配慮した素材には、オーガニックコットン、トレーサブルダウン、テンセル・リヨセル、ヘンプ、バイオラバーなどの農場に由来する素材を含んでいます。

・適用可能な場合には、NSFトレーサブル・ダウン・スダンダード、GOTS(Global Organic Textile Standard)、オーガニック・コットン・スタンダード、フェアトレードなどの認証を活用しています。

WWD:全てをトレーサブルにするための課題は何ですか?

篠:2007年に「フットプリント・クロニクル」を開始したときの当社の目標は、「全ての製品のサプライチェーンの全段階を示すこと」でした。当社のサプライチェーンは深く、複雑で、変化し続けています。そのためサプライヤーと強固な関係の構築に努めており、多くのサプライヤーが「フットプリント・クロニクル」に掲載されることを喜んでいます。しかし、さまざまな懸念から非公開を希望するサプライヤーもいるのが現状であり、当社はそうした要望を尊重しているため、全てのサプライヤーの所在地を開示することはできておらず、完全な透明性には至っていません。また、当社は、あらゆる場所で何が起こっているのかを瞬時に知ることはできませんが、定期的にサプライヤーを監査し、重要な発見を共有しています。

答えてくれた人:篠健司/環境社会部ブランド・レスポンシビリティ・マネージャー:東京生まれ。1988年、パタゴニア日本支社設立直後に入社。広報、店舗運営を経て99年に退職。2001年に再入社し、物流部門、環境担当を経て現在はサステナビリティ業務を担当。好きなアウトドアアクティビティは、美しい自然の中を走るトレイルランニング。日常的に可能な限りの脱プラに取り組む。10年以上、ペットボトル飲料は購入していない

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