サステナビリティ

教えて!パタゴニアさん 連載第2回 環境にやさしい素材

 サステナビリティ先進企業のパタゴニアの担当者にその取り組みを聞く連載第2回。環境への負荷が高いと指摘されているファッション産業は、どのようにして環境負荷を軽減すればいいのでしょうか。ファッション産業のCO2排出量は世界全体の8~10%、水の排水量は約20%を占めるともいわれています。アパレルやフットウエアの製品ができるまでの水やエネルギーの使用量、CO2排出量や水質汚染といった環境負荷を数値化した場合、約6~8割が原材料生産から素材になるまでの工程に由来します。つまり、素材選びが大切だといえます。では環境にやさしい素材とはどういう素材なのでしょうか。細野雅子マーチャンダイジング部ライフスタイル・スポーツウェア担当に聞きます。

WWD:環境に配慮した素材とはどんな素材だと思いますか?

細野雅子マーチャンダイジング部ライフスタイル・スポーツウェア担当(以下、細野):パタゴニアが取り組む環境に配慮した素材とは、「可能な限り環境への負荷を抑えた素材」と「地球環境を再生することが可能な素材」です。

WWD:「環境への負荷を抑えた素材」とはどんなものですか?

細野:例えば、リサイクル素材やオーガニック栽培された原料を用いることです。私たちは1993年にペットボトルを再生したポリエステルを採用したフリースを発表し、1996年にはオーガニック・コットンへの切り替えを完了しました。

WWD:90年代から行っていたのは早いですよね。リサイクルポリエステルだけではなく、今はほかにもリサイクル繊維の開発・利用を行っていますよね。

細野:はい。海洋に流れ出した漁網を再生して新素材として利用することで、環境への負荷を抑えるだけではなく、地球温暖化の緩和やダメージを受けた「地球環境を再生する」ことが可能だと考えます。

WWD:確かにごみを回収して素材にすることは「地球環境を再生する」といえますね。

細野:ポストコンシューマー(使用した後に回収された材料)からのリサイクルや、すでに地球上にごみとして捨てられた物を回収して再生することは、地球環境の再生に貢献する方法だと考えています。

WWD;具体例を教えてください。

細野:2019年から、使用ができなくなり海中に廃棄された漁網を回収してナイロン素材として再生したブレオ社の“ネットプラス(NetPlus)”という素材を用いています。ほとんどの使い古された漁網はそのまま海に廃棄されていて、科学者は年間65万以上の海洋生物が漁網に捕らえられて生命を奪われるか、あるいはケガをしており、生態系に重大な悪影響を及ぼしていると推定しています。私たちはこの素材を特に売り上げの大きいカテゴリーや製品に採用することによって多くの漁網を海中から回収し、有害な廃棄物が海に流出することを防ぎます。またこのプロジェクトを通してブレオ社は放棄された漁網が海に捨てられることを防ぎ、地元の漁業従事者に補足的収入を提供しています。

WWD:「地球環境を再生する」という意味では環境再生型農業にも力を入れていますね。パタゴニアは“リジェネラティブ・オーガニック(RO)”農法と呼んでいますが、あらためてRO農法について教えてください。

細野:土壌の健康、動物福祉、社会的公平性の3本の柱を軸にしています。多種多様な作物を同時に生産し、耕さない、あるいは耕す回数を減らす農法によって、土壌微生物の増加やCO2の土壌への吸収に加え、農家の皆さんの持続可能な経営につながります。現在RO農法に移行中のコットンを用いた商品を販売しています。もちろん、従来のオーガニック・コットン栽培でも、大量の農薬を削減することで、限りなく環境負荷を軽減できます。

WWD:健康な土壌は炭素を多く吸収するといわれているので、環境再生型農業の導入が進めば気候変動対策にもなると注目を集めています。

細野:はい、そのとおりです。また私たちは「産業用ヘンプ(大麻)」にも注目しています。日本のような高温多湿な環境でも快適に過ごせ、天然繊維の中でも抜群な強度があるという機能面はもちろん、環境再生要素が大きいからです。ヘンプはかんがいをほとんど必要とせず、他の作物に比べて肥料の使用量も少なくて済みます。栽培に合成肥料を必要とせず、重要な栄養素を供給して浸食を防ぎます。ヘンプもまた地球環境再生のために最も必要な健康な土壌の維持を支えることができます。

WWD:最後に理想とする環境に配慮した素材はどういうものだと思いますか?

細野:今最も理想とする素材は環境再生型プロセスを経て生産された素材で、強度があり出来上がった製品を購入者が捨てることなく長く使用し続けることができる素材だと考えます。天然繊維ならばRO農法のコットンや産業用ヘンプ、化学繊維ならば、使用した後に回収された廃棄物で再生した素材ではないでしょうか。また、それらの素材を育て生産を担ってくれている生産者の生活も、環境を守るフェアトレード認証の取り組みも同じく重要です。

答えてくれた人:細野雅子/マーチャンダイジング部ライフスタイル・スポーツウェア担当:栃木県出身。2016年入社。パタゴニア入社前は米国で約2000店を展開する大手総合小売店本社に製品開発担当として約10年勤める。大量生産・大量消費の現場、大量生産品でもちゃんと人の手で作られている製品がすぐに捨てられてしまうビジネスに心を痛め、帰国後ベターなビジネスモデルを探しているときにパタゴニア日本支社に出合う。「入社当初はフェアトレード認証を積極的に進めるところに引かれていましたが、環境面での取り組みが革新的であることに驚きました」。好きなアウトドアは山や海で遊ぶこと。日常生活ではゼロウェイスト(廃棄ゼロ)を目標にゴミを減らすことに取り組む

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