昨年2ケタ成長を見せ、勢いを取り戻したかのように思われたアメリカのデニム市場が、今年に入って再び揺らいでいる。ニューヨークを拠点にするリサーチ会社のNPDグループによると、ウィメンズ・デニムの売り上げは83億3920万ドル(約8422億5900万円)で昨年から5.2%減少し、メンズ・デニムも前年比4.1%減の54億2686万ドル(約5481億1200万円)になった。デニム市場全体では同4.8%減の137億6606万ドル(約1兆3903億7200万円)とふるわなかった。
特に影響を受けたのは、75ドル(約7500円)以上の価格帯にあるプレミアムデニムだ。昨年は9億8607万ドル(約995億9300万円)だった75ドル(約7500円)以上のデニムの売り上げが、今年は6億6521万ドル(約671億8600万円)にまで、なんと32.5%も急落している。NPDグループの市場アナリスト、マーシャル・コーエンは「価格が上がるにつれ、売り上げは下がっている。単純に、女性たちがデニム以外の衣類にお金をかけるようになっているのだ」と話す。デニムの消費傾向が表の結果となった理由として考えられる点がいくつかある。
■ヨガパンツの普及。ヨガパンツのデザイン性が高まり、アクティブウエアとしてではなくカジュアルウエアとして受け入れられるようになった
■ファストファッションや専門店チェーンがデニムの最低価格を引き下げた
■卸売業者が生産を減らす前に、百貨店がデニムの仕入れを大幅にカットした結果、ディスカウント店に在庫が流れ、マーケットシェアが拡大した
■女性がすでに多くのデニムを所有している中、新しくデニムを買うきっかけとなるトレンドがなかった
投資銀行FBRキャピタル・マーケッツのヴァイス・プレジデントでアナリストのスーザン・アンダーソンは、「レギンスや柔らかい素材のパンツの台頭に加え、昨年の半ばまでワンピースが大きなトレンドだったことがデニム市場に影響を与えた。この数字を楽観視する小売業者もあるが、カラーデニムのブームが終息した時期よりもいいだけ。各デニムメーカーや小売業者にとって、新しい試みは不可避だ」と話す。
ヨーロッパやアジアへの海外進出を果たし、売り上げの減少を緩和したプレミアムデニムブランドもあった。「ヨーロッパの消費者は、不景気にもかかわらずデニムにお金をかける傾向がある」とアンダーソン。
プレミアムデニムブランドがフル・コレクションを発表する方法もあるが、デニムに特化したブランドがアパレルを始めるのは難しく、Tシャツやトップスをいくつか販売するだけでは成功しない。商品の品質を下げてしまうリスクもあるため、製造から販売までひとつひとつのプロセスを慎重に踏まなければならない。
前出のコーエンは、海外進出と、店舗・オンラインでより消費者との接点を多く持つことが生き残る方法という。「カラーデニムの勢いに乗ったプレミアムデニムブランドは、トレンドの終息とともに痛い目にあった。これを教訓に進化を続けなければならない。新しい試みが初めから成功しなくても、使い古された策を繰り返すことなくチャレンジすべきだ」とコーエン。