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ケータリングを制するものはバックステージを制する!? ロンドンコレでつまみ食い調査

 ファッション・ウイークの私の密かな楽しみといえば、バックステージでのつまみ食い調査です。2020-21年秋冬シーズンのロンドン・ファッション・ウイーク(以下、LFW)では、3ブランドのケータリングを勝手に取材してきました。前回は、調査を行なった4ブランド全てがイギリスのチェーン店「プレタ マンジェ(PRET A MANGER)」のケータリングという結果に拍子抜けし、「今季も同じ結果だったら記事化はできない……」なんて不安もありましたが、こうして記事を書いているということは……そうです、ケータリングに変化がありました(パチパチ)。前シーズンと同じブランドもありましたが、クオリティーが格段に上がっているブランドを評価しました。

3位(最下位):JW ANDERSON
前回は最高位も、変化が見られず……

 「ジェイ ダブリュー アンダーソン」は前シーズンと同じ「プレタ マンジェ」でした。サンドイッチやクロワッサン、マフィン、ヨーグルト、フルーツの幅広いバリエーションで、見応え・食べ応えたっぷりな内容です。ケータリングのメニューが定番化していて、おそらく今後も変わることはなさそう。前シーズンはベストケータリング賞を進呈しましたが、今シーズンは悩むところです……。

2位:CHRISTOPHER KANE
ソーシャルグッドな“ピュア飯”

 「クリストファー ケイン」が選んだのは、ロンドン市内に22店舗を構えるチェーン店「ピュア(Pure)」のケータリングです。ベーコンとアボカドのベーグルサンド、スモークサーモンのベーグルサンド、トルティーヤのラップサンドが4種ほどと、サラダをそろえていました。同じチェーン店といっても「プレタ マンジェ」と大きく違うのは、09年の創業以来「ピュア」はソーシャルグッドな企業であることのよう。包装紙やプラスチック製容器は90%再生可能、ケータリング用の段ボールは100%生分解性、店頭で余った残り物は全てチャリティー団体を通して寄付される仕組みを取り入れています。卵はゲージフリー(平飼い飼育)、コーヒー豆はフェアトレード認証、肉製品は飼養から販売まで一連の過程を高度な管理基準で保証されたレッドトラクター認証という徹底ぶり。バックステージに置かれたいたストローはプラスチックではなく紙製ストローでした。ちなみに、LFWを取材していた「WWDジャパン」の大杉記者も「ロンドンはどこに行っても紙ストローが出てきますね。プラスチックストローはほぼ見かけない」と口にしていました。自然や環境をコレクションのテーマにする「クリストファー ケイン」だけに、ブランドの考え方はケータリングにも表れていたようです。

1位:TOGA
雰囲気のよさが物語る、質のよさ

 前シーズンは「普通で無難に平均点」と評した「トーガ」こそ、最もクオリティーが上がったブランドでした。ロンドンにあるケータリング会社「ハムディンガーズ(Humdingers)」の、ヘルシーで女性ウケしそうな抜群のチョイス!といっても、ショー開始1時間前に到着したころにはすでにメインのフードは残っていませんでした。それだけバックステージで動くスタッフに好評だったということなのでしょう。メニュー表によると、スモークサーモンのベーグルサンドやトマトとバジルとモッツァレラチーズのベーグルサンド、クロワッサンやデニッシュなどのペイストリー、フレッシュフルーツを用意したようです。スモークサーモン以外は全てベジタリアン向けで、そのあたりの配慮もさすがです。ポテチを食べながら踊り出すモデルの姿からも、バックステージの雰囲気の良さが伝わってきます。「ハムディンガーズ」は見た目の美しさにもこだわるケータリング会社なので、ぜひとも写真に収めたかったし、つまみ食いもしたかったので残念ですが、来シーズンは早めに行って、ありがたくいただきたいと今から企んでおります。

 クオリティーが上がったという点と、モデルがダンスをしてしまうぐらいリラックスしたムードを考慮して20-21年秋冬のLFWの“ベストケータリング賞”は「トーガ」に贈りたいと思います。前述したようにバックステージの和やかな雰囲気がとても印象的だったので、そちらについてはコレクションリポートでご覧ください。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける