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新型コロナ下でもニトリが「34期連続増収増益」を実現する6つの施策

 「お、ねだん以上」のキャッチコピーで知られるニトリホールディングス(以下、ニトリHD)は、2020年2月期で33期連続の増収増益を達成した。その強さを支えるのは、「ユニクロ」や「無印良品」のような製造小売業に、物流とITを加えた「製造物流IT小売業」というビジネスモデルだ。世界的な新型コロナの感染拡大によるロックダウンや緊急事態宣言の発令などの逆風下でも、2021年2月期の連結業績は売上高が前期比1.7%増の6532億円、経常利益は同3.4%増の1133億円を計画する。既存店売上高は上期に同3.8%減、下期に同1.0%増、通期で同1.4%減を予想。設備投資額は250億円を見込む。ニトリを支える6つの施策を読み解く。

 「住まいの豊かさを世界の人々に提供する。」というロマン(企業理念)の実現に向けて、すべての工程にロマンを求めた結果、もともとの小売り=販売部分だけでなく、商品の企画から原材料調達、製造、物流、販売までを一貫して自社でコントロールすることを決意。「流通業の社会貢献のバロメーターである店舗数と客数を増やし続けていく」(白井俊之社長兼COO)一環として、2017年からグローバルチェーン展開を本格化。2032年に3000店舗・3兆円達成を目指している。近い将来の目標は、2022年度の1000店舗・1兆円だ。

 これらの目標達成に向け、2020年度(2021年2月期)の主要施策として、6つのグループ重点課題に取り組んでいくと白井社長。「①コーディネート提案の推進・O2Oの推進」「②グローバル事業展開と事業領域の拡大」「③商品開発・生産体制・品質管理体制の強化」「④国内物流拠点の再構築」「⑤全社業務の生産性向上」「⑥未来に向けた人材育成」の6つだ。

 1つ目の「コーディネート提案の推進」では、お客さまの暮らしをより豊かにするために、商品と売り場でコーディネートを強化していく。「小さなところからでも気軽に、色、素材、柄を組み合わせられること、その人の暮らしまで感じられること、そして、お客さまにはこれらがわかりやすく、商品を選んでいただきやすい売り場にすること。これらの点を強化することで、さらなる需要喚起ができると考えている」。

 コーディネート提案の推進に向けては、「O2Oを推進」する。「お客さまからいただいた声をDX(デジタルトランスフォーメーション)を活用することで、より一人ひとりに魅力を感じていただけるように準備している」。店舗とアプリの連携機能を強化し、お客さまからのデータを抽出するとともに、フィードバックを強化するなど、様々な施策を打ち出す。DXではAI画像検索なども導入。ワン・トゥ・ワン・マーケティングを進化させ、「最高の提案ができる仕組みの高度化」を図る。

 2つ目の「グローバル事業展開と事業領域の拡大」では、各地域の市場特性と成長ステージに応じた施策を実行していく。

 中国では前期、改装により、上海の徐家匯店は旗艦店へと改装して中国ニトリのイメージを刷新。一方の上海の七宝(チーパオ)店では、日本のニトリのノウハウを中国で展開するための標準店作りを進めた。今期は着実な成長に向けて、ホームファッションの標準店実験を踏まえて、プロトタイプの水平展開に着手。地域に合った品ぞろえ、棚割り標準化と定量数の見直しによる坪当たり売上高の改善、EC事業の拡大などに取り組んでいく。

 台湾は新たな成長ステージに突入する。商品やテレビCMの共通化、ウエブ広告やSNSを駆使したニトリブランドの構築に注力。通販事業は前年比20%増を目標に拡大に取り組んでいく。アメリカについてはオムニチャネル戦略を推進する。「家具市場においてアマゾンなどの参入が本格化しているが、以前、顧客の90%が実店舗で購入している。一方、購買行動には大きな変化が生じており、通販サイトで商品を選んでから店舗で最終確認して購入するお客さまが増えていることを踏まえ、オムニチャネルの推進が必要不可欠だ。各商品の育成、ポップアップストア活用とEC機能による拡販に取り組んでいる」。

 3つ目の「商品開発・生産体制・品質管理体制の強化」では、ベトナムの自社工場では。ダイニングチェアを1日1000脚、ベッドマットレスは年間100万セット、ソファ年間20万セットの生産に取り組んでいく。

 グローバル品質管理体制については大きく3つを取り組む。一つは品質規定・基準のグローバル化は、これまで日本で築いた基準をグローバルに展開し運用を開始する。2点目は、海外品質活動の強化だ。「技術評価会」の海外化をはじめ、より効率的に適材適所で品質強化ができる体制を構築していく。3点目はサプライチャー指導・育成では、安定した品質の商品を継続して提供できるように、源流の取引先工場の指導・育成を強化していく。

 4つ目は、「国内物流拠点の再構築」だ。ニトリグループの強みの一つである物流機能については、国内拠点構想により、国内拠点の見直しを行いし、新DC(ディストリビューションセンター)設置に向けた準備を行っていく。2つ目は、店舗適正在庫と最適なリードタイムの実現だ。店舗への搬入方法や搬入頻度を改めて見直し、最適なリードタイムを見極めていく。

 5つ目の「全社業務の生産性向上」の課題について。ニトリグループ全体で、重複作業の統廃合、人員の見直し、業務全体の最適化を目的として、生産性向上の取り組みを行ってきた。物流センターに自動ピッキングシステム「オートストア」を導入したり、定型作業におけるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)化、ベトナムのバリアブンタウ工場におけるロボット導入などもある。「今後は専門部署を中心に、これまで以上に、生産性向上の取り組みを加速させる。また、デジタルトランスフォーメーション導入を視野に入れ、作業スピードアップ、省人化、自動化を進めていく」。

 6つ目は「未来に向けた人材育成」だ。「ニトリは『製造物流IT小売業』というビジネスモデルにより、多岐にわたる業務・職種が存在する。その中で自律的にキャリアに向かい、キャリアに向き合える環境を構築していく」。「タレントマネジメントプラットフォーム」を構築し、個々人の志向と、社内教育(ニトリ大学)を通じたキャリア開発を連動。「現在から未来を見渡したうえで、ニトリグループ全体にとって必要な人材育成に取り組んでいく」。

 2020年度は、国内では「ニトリ」で25店舗、「デコホーム」で20店舗の計45店舗を純増予定。海外では台湾で6店舗、中国では2店舗出店、米国で1店舗の計9店舗の純増を予定。国内外合わせて54店舗の増加を予定し、世界での期末店舗数は661店舗(国内586店舗、台湾36店舗、中国36店舗、米国3店舗)になる見込みだ。

 「とくに中国は経済が止まった感があるので、しっかりみていく。2019年度と2020年度は踊り場であり、足場を固め、20201年からしっかりと高速な出店ができるようにしたい」という。

 なお、大人向けの婦人服アパレル新業態「Nプラス(エヌプラス)」については、2019年度に関東を中心に4店舗と通販をスタートしたが、店舗数にはカウントしていない。今期6店舗を出店して10店舗体制とする。似鳥昭雄会長兼CEOの肝いり業態であり、「数年前から計画を立て、世界中を回って資料を集めて、勉強・研究してきた。日本にはないファッションの店だ。日本には30~50代のコーディネートブランドがなくて、まるっきり(市場が)開いている」と着目した理由を説明。「ファッションは大不景気だが、逆に欲しいものがないといわれている。トップスとボトムスを合わせても4000~8000円で、100%コーディネートできるもの。営業の成績にはまだあまり影響しておらず赤字だが、30店舗ぐらいで黒字になると思う」と見通しを語る。

 なお、ニトリグループの新型コロナウイルスの影響については、サプライチェーンの影響は、一時的な生産のストップ、出荷のストップがあったが、現在は大幅な遅延はない状態だ。地域別では、中国はすでにすべての取引先工場が稼働しており、稼働率も9割を超えている。東南アジアはいくつかの国で行動規制がかかるなど予断を許さない状況ではあるが、ベトナムの自社工場については現在、原材料の調達、工場の出荷は正常に行われている。

 「これまで築いてきたサプライヤーとの密な関係を生かし、情報を常に共有し、問題に対応するなどした結果、現在、大きな問題にはなっていない。引き続き、現地のグループ法人等を使い最新の情報を把握し、さまざまな取り組みを行っていく」と白井社長。「工場の生産管理体制の構築」や「産地の分散化」「売れている商品を中心に前倒し出荷を実現」「原材料・部材・資材を確実に確保するため、先行オーダーを実施」することなどを行っていく。

 消費の減退なども予想されるが、価格は今のまま据え置き、品質と機能の向上に努めたい考え。

松下久美:ファッション週刊紙「WWDジャパン」のデスク、シニアエディター、「日本繊維新聞」の小売り・流通記者として、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)