ファッション

3年後目指す年商は20億円 SNSから派生したブライダルジュエリー「アトリエ エスティーキャット」とは

PROFILE: 林聖子/ 「アトリエ エスティーキャット」代表、狩野明歩/「アトリエ エスティーキャット」クリエイティブ・ディレクター

林聖子/ 「アトリエ エスティーキャット」代表、狩野明歩/「アトリエ エスティーキャット」クリエイティブ・ディレクター
PROFILE: 林代表は、東京都出身。立教大学社会学部卒業後、「ファッジ」や「ルラ ジャパン」でファッションエディターとして活動。2014年にアクセサリーブランド「エスティー キャット」を設立。17年にブランド名を「アトリエ. エスティーキャット」に改名し、世田谷・上町に直営店を出店。23年にブライダル専門ブランドに移行し、代々木上原に店舗を移転。東京都女性起業家プロジェクトApt Women8期生選出 。狩野は、神奈川県出身。高校卒業後、ジュエリースクールへ進学し、ジュエリー制作について学ぶ。2017年「アトリエ エスティーキャット」設立と同時に入社。ジュエリーデザイン担当しながら職人としてブランドのモノ作りを率いる。22年自身のジュエリーブランド「アキホ モリ」をスタート。26年から現職 PHOTO:SHUHEI SHINE

ブライダルに特化したジュエリーブランド「アトリエ エスティーキャット(ATELIER ST, CAT)以下、STキャット」は6月27日、東京・代々木上原に二店舗目の「ユー アトリエ エスティーキャット」をオープンした。同ブランドは2014年、ファッション業界で編集や広報に携わった林聖子代表が設立。手作りのビーズアクセサリーの販売からスタートし、17年にシルバージュエリーのブランドへ移行して、世田谷・上町に直営店を出店した。23年からはブライダルジュエリー専門ブランドとして歩んでいる。 SNSを起点にファンを獲得し、集客の9割以上をSNSが占める。ブライダルジュエリー専門になってからは、日常に寄り添うデザインを幅広い選択肢で提案。ショップにはアトリエがあり、顧客一人一人の要望に耳を傾けながら、オーダーメードでジュエリーを届けている。20〜30代中心に支持を集め、年商はブライダル専門へ移行後に掲げた目標5億円に届きそうだという。さらなる出店も視野に入れ、3年後には年商20億円を視野に入れている。

“消費されるアクセサリー”からシルバージュエリーへ

起業当時は、一般的なハンドメード市場はまだ黎明期で、林代表が作り始めた大ぶりのビーズアクセサリーへの反響は大きかった。インスタグラムを入り口に自社ECやセレクトショップに卸販売し、ブランドの認知も広まった。一方で同代表は、「作っては消費される商品に違和感を感じるようになった。模倣品も増えて、市場にないものを作りたいという思いからかけ離れたものになった」と語る。そして彼女は、本当に作りたいものを向き合うために彫金を学び、彫金の学校で出会った狩野明歩クリエイティブ・ディレクターと共にシルバージュエリーを作り始めた。ブランド名の「STキャット」は「ストリートキャット(野良猫)」が由来。王道ではなく、寄り道や偶然から新しい価値が生まれるという意味を込めた。ジュエリーブランドへ転換したタイミングでブランド名に「アトリエ」を加えた。林代表は、「単にジュエリーを販売するのではなく、モノ作りの現場と顧客の対話が生まれるようなブランドにしたいと思った」と話す。その意図を反映し、ショップには工房を併設している。

アトリエ併設だからできたブライダルへのシフト

22年頃からブライダルを強化した背景には、市場環境の変化があった。コロナ禍でファッションが売れなくなり、ファッションジュエリーのブランドが急増。それらブランドの多くは大量に生産し販売するスタイルが中心だった。林代表は、「その土俵で戦うのには限界があると感じた」と話す。「STキャット」ではブライダル需要もあり、顧客と対話しながらセミオーダーで制作していた。それができるのはアトリエがあるから。林代表は、「アトリエ型店舗の強みであるセミオーダーに注力しようと思った。ブランド名のように、王道ではない”自由な結婚指輪”をコンセプトに掲げた」と話す。ブライダルのデザインや素材を増やしてSNSで発信を始めたところ、順調に売り上げが伸び、売上高の中心を占めるようになった。

マリッジリングは、20のデザインがあり、10種類の素材(18金が4種類、14金、10金が4種類、PT)、3種類の幅、そしてさまざ加工を組み合わせてオリジナルのリングを作ることができる。デザインを担当する狩野は、「結婚指輪は毎日着けるものだから、自然と指に馴染み美しく見えるデザインにこだわる」と話す。一見シンプルだが、あらゆる人の指に馴染むようカーブを施すなど計算し尽くされたリングをそろえている。「日々、顧客の声をデザインに生かしている。小さなアップデートの積み重ねが商品に反映され、結果を生んでいる」と狩野。販売員は置かず、狩野をはじめ、職人や事務スタッフなど全スタッフが接客を担当するスタイルもユニークだ。購入後も担当者がLINEで相談に応じるなど、細やかな対応で顧客との長い関係作りを目指している。

モノづくりを中心に据えたアナログなスタイル

今後は、地方出店に加え、ウエディングフォトや記念日ジュエリーなど、結婚後のライフイベントなどの事業も視野に入れているという。林代表は「売り上げだけを追うのではなく、お客さまにもスタッフにも丁寧に向き合いながら、できることを一つずつ増やしていきたい」と語る。ハンドメードアクセサリーから始まったブランドは、シルバージュエリーを経て、人生に寄り添うブライダルジュエラーへと進化した。SNSから派生したブランドでありながら、マーケティングではなくモノづくりを中心に据えたアナログなビジネススタイルが若年層の心をとらえているのだろう。

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