ファッション

「ブリオーニ」はローマ、「シンヤコヅカ」は方南町 街並みの詩情を物語に紡ぐ 【2027年春夏ミラノメンズコレ ハイライトVol.3】


記録的な熱波の中繰り広げられた2027年春夏のメンズ・ファッション・ウイーク。ビッグメゾンのパリコレへの引っ越しや9月に行われるウィメンズコレへの合流などに加え、サッカーW杯はイタリア代表が予選敗退で蚊帳の外ということもあり、やや寂寥感も漂ったミラノメンズ。しかし、職人技と洗練が同居する質実流麗なミラノのクリエイションは、本質思考に回帰する今だからこそ新鮮に映ります。

今回、編集部からは単騎取材となった本橋涼介ヘッドリポーターとパリ在住ジャーナリストELIE INOUE(以下、井上)氏によるミラノメンズの取材ダイジェストVol.3をお届けします。最初は勢いがいいものの、だんだん暑さでエネルギーを奪われながら、それでも気合で乗り切ったファッションウイーク取材をプレイバック。

「シンヤコヅカ」はぼやけた視界を服に
初のミラノは口笛のように軽やか

井上:「シンヤコヅカ(SHINYAKOZUKA)」は昨シーズン、ピッティ・イマージネ・ウオモのゲストデザイナーとしてフィレンツェでショーを開催し、今回は初めてミラノ・ファッション・ウイークに参加しました。コレクションの出発点となったのは、転倒した際にコンタクトレンズを失い、ぼやけた視界で目にした街並みや、故郷で眼鏡を外して歩いた散歩道の記憶です。太陽が燦々と降り注ぐ緑豊かな中庭を舞台に、「口笛のように軽い服」という小塚信哉デザイナーの言葉を体現した、ロマンティックな詩情あふれるコレクションを披露しました。

中核を担うのは、風をたっぷりはらむシースルーのロングシャツです。歩みに合わせてふわりと揺れるシルエットと清涼感のある色彩が、猛暑日のミラノに涼やかな空気を運びました。新たな表現方法として取り入れた、滲む風景や風に揺れる草木を思わせるペインティングは、ゲルハルト・リヒターの抽象画に着想を得たもの。ショー直前まで滞在先のホテルで筆を重ねて完成させたという力作で、記憶の曖昧さを繊細に映し出していました。

街中を飛び交うスズメをイメージしたモチーフがシャツやデニムにプリントで施され、羽根をモチーフにした立体的な装飾や、“Homecoming”の文字を添えたアイテムが、どこかノスタルジックで幻想的なムードを醸し出します。また、中学生時代に親しんだMr.Childrenの楽曲「口笛」のミュージックビデオから着想を得て、小塚デザイナーにとって思い出深い東京・方南町の街並みをプリントに投影しました。グリーンを基調とした色彩と透け感のある素材が重なり合い、現実と記憶の境界が溶け合うような、淡く儚い空気をまとったコレクションに仕上がっていました。

クラシカルなブランドが集うミラノにあって、初参加の「シンヤコヅカ」は、記憶や感情を衣服へと昇華する詩的なクリエイションで異彩を放っていました。伝統を重んじるミラノは新進ブランドにとって決して容易な舞台ではありません。それでも、この街での時間や出会いが小塚デザイナーの感性をどのように育み、次なるクリエイションにつながっていくのか、楽しみに見守りたいと思います。

ローマの陽光を仕立てる「ブリオーニ」
布のように柔らかなレザー“ソッフィオ”

本橋:「ブリオーニ(BRIONI)」が打ち出したテーマは、ブランドの故郷であるローマそのもの。今季のカラーインスピレーション「ロッソ ローマ(Rosso Roma)」は、街を焦がす灼熱の太陽と、その光を照り返すテラコッタの壁、足元に続く石畳や石柱の色合いから生まれたものだといいます。テラコッタやオーカー、コーラルといった陽だまりのような暖色に、ユーカリプタスグリーンや水を湛えたようなブルーが差し込み、ローマの夏の情景がそのまま一着ずつに移し替えられていました。

仕立てはどこまでも軽やか。フォーマルでも裏地を取り払い、芯地まで極力削ぎ落とした上着は、触れてみるとその軽さに驚かされます。中でも目を引いたのが、薄くしなやかなレザーで仕立てたブレザー“ソッフィオ(SOFFIO)”。「ぜひ触ってみてください」と促されて指を滑らせると、革とは思えないほど柔らかく、まるで一枚の布のよう。裏地なしのヘリンボーンのサファリジャケット“サハリアナ(SAHARIANA)”、ボタン位置を最下段まで下ろしてアーカイブの深い前合わせを再現したダブル「ゼフィロ(ZEFIRO)」など、シグネチャーが今季の色と素材をまとって次々に登場します。インに合わせるのは、襟を大きく開いた新作の「マルチェロシャツ」。ローマを代表する名優マルチェロ・マストロヤンニにちなんだ一枚で、肩の力を抜いたリラックスした表情をつくります。

昨年、創業80周年をローマで祝ったブランドだけあって、イブニングは特段華やかでした。黒一辺倒のブラックタイから一歩進み、日本の生地にクリアやダイヤ型のスパンコールを忍ばせた、光をはらむ装いが並びました。どこか着崩したノンシャランな空気をまとわせているのも、いかにもローマ流。今季は最上級の仕立てを体験できる新プロジェクト「マエストリア(Maestria)」をローンチし、スーツだけでなくシャツやニット、シューズ、革小物までパーソナライズの幅を広げます。

機能で磨く「ヘルノ」のエレガンス
ネックピローになるパッカブルアウター

井上:ピッティ・イマージネ・ウオモで発表したコレクションを、ミラノの本社ショールームでも拝見しました。エクセレンス(Excellence)・オリジン(Origin)・アドバンスト(Advanced)という3つのテーマを軸に、多様なライフスタイルに寄り添うバリエーション豊かなコレクションです。

中核となる“エクセレンス”では、スエードブルゾンやシルクのポロシャツ、ロロ・ピアーナ社のファブリックを用いたコートなど、上質な素材使いが特徴です。クレープ調に仕上げたコットンは肌触りが良く、真夏でも快適な着心地を実現。一方で、南仏リゾート地で過ごすワードローブをイメージした“サントロペ(Saint-Tropez)”ではマヨリカ柄をアクセントに、水陸両用ショーツやレザートリミングを施したリネンコットンブルゾン、ブークレのパイル地を思わせるジャケット、サマーニットなど夏を満喫するための装いが充実しています。

旅をテーマにしたカプセルコレクションの“ヘルノ フライト(Herno Flight)”は、軽量・防シワ・コンパクトさを追求しています。パッカブルのアウターは収納するとネックピローとしても使用できる優秀アイテム。ウールのような風合いを持つ高機能素材でスーツやジャケットを製作し、防水性などを備えたテープレス仕様のYKK製ジッパーを採用し、滑らかな開閉性を実現しました。メンズウエアでは機能性へのニーズがますます高まる中、「ヘルノ(HERNO)」はその流れを牽引する存在です。上質な素材やイタリアンエレガンスを損なうことなく、軽量性や防水性、携帯性といった実用性を磨き上げ、ラグジュアリーの新たなスタンダードを築き続けている印象を受けました。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

HOSOO特集 日本文化の基層を成す絹と大麻から未来の産業をつくる

「WWDJAPAN」7月13日発売号は、京都・西陣織の老舗HOSOO特集です。「More than Textile」を掲げ、織物の可能性を拡張し、人々がまだ見たことのない西陣織の美を追求しているHOSOO。その探究の中で出合ったのが、江戸時代の絹(シルク)や大麻(ヘンプ)で織られた着物でした。その品質を現代に再現し、さらに超えることを目指し、絹、大麻ともに日本の在来種を用いて、原料生産から取り組む…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。