ファッション

キャラクター戦国時代に頭角を現すには 「教育番組」「ただのかえるたち」プロデューサーに聞く

説明するまでもなくキャラクタービジネスが盛り上がっている。都心の商業施設では途切れなく人気キャラクターのポップアップが開催され、キャラクターショップは平日であろうと大賑わい。「WWDJAPAN」でも毎日のようにファッション・ビューティブランドとのコラボを報じている。

時代を超えて愛されるキャラクターが確固たる地位を築く一方、ここ数年で浮上した新顔もいる。その1つ「教育番組」(@MNS_kyoiku)は、Xの開設こそ2024年2月と最近だが、5月末現在で38万人のフォロワーを抱える。ポストには安定して1万以上のいいねが付き、ときには1晩で10万いいねを稼ぐものもある。

競合がひしめく中、ヒットコンテンツはどのように生み出されるのか。「教育番組」ほか「ただのかえるたち」(@ponpoko_frog)のプロデュースを行い、さまざまなアニメやマンガ、ゲーム企画のディレクションを担う柴﨑一樹クオリアワークス取締役CEOにざっくばらんに聞いてみた。

PROFILE: 柴﨑一樹/クオリアワークス取締役CEO

柴﨑一樹/クオリアワークス取締役CEO
PROFILE: (しばざき・かずき)1996年生まれ。ZOZOを経てサイバーエージェントに入社。アートエキジビション「リパビリオン」やイラストレーター展「フラグメンツ」などのカルチャープロジェクトを主導する。さまざまなアニメ・ゲーム・ブランドのアートディレクションや「教育番組」「ただのかえるたち」などのキャラクタープロデュースを行う

WWD:元々ZOZOにいらっしゃったんですよね。

柴﨑一樹取締役CEO(以下、柴﨑):ZOZOでは、人気アニメやマンガ、ゲームとのコラボレーションを担当していました。とても楽しかったんですが、「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」はあくまでファッションプラットフォームなので、最終的に服に落とし込まなければならない。もちろん納得してやっていたんですが、あるとき服じゃないものも作りたくなった。それがキャラクターやイベントのプロデュースでした。

それをZOZOにいながらやることもできたと思いますが、どちらも中途半端になりそうな気がした。なので、思い切って2024年末にZOZOを辞めました。もう1年半くらい前ですね。

WWD:プロデューサーとして、まず取り組んだことを教えてください。

柴﨑:行動に移したのは、24年の頭くらい。自分から「教育番組」の作家さん(ももにくす)に声を掛けました。なので、ZOZO時代と被っています。日中は社員として定時まで働いて、終業後や土日にプロデュース業をしていました。きちんとお金が発生したのは退職した後で、このときは趣味に近い形でした。

退職後は、先ほど伝えたように服以外のプロデュースをしました。秋田県の老舗・山本酒造と若者向けのボトルデザインの日本酒をプロデュースしたり、池袋パルコとアートエキジビション「リパビリオン(RE:PABILLION)」を企画したり。

WWD:いろいろなジャンルに挑戦していたんですね。

柴﨑:でも、カルチャーに関わりたいという1本の軸はあります。メインカルチャーかサブカルチャーかはその人の受け取り方によるので、そこにこだわりはありません。時代の流れで、サブカルチャーがメインカルチャーになることだってありますし。

僕の場合、たまたま時代と自分の好きなカルチャーが一致しているので運が良いなと思います。アニメやゲーム、マンガは、コロナ前にはほとんどスポットが当たっていなかった。元々めちゃくちゃ好きなので、今の状況はとても嬉しいです。

「効率のよい裏技はない」

WWD:25年頭に開催したゲーム「アイドルマスター シンデレラガールズ」のイラストレーター展「フラグメンツ オブ アイドルマスター シンデレラガールズ(FR@GMENTS of THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)」は、そんな柴﨑さんのオタクな一面が成功の秘訣だったとか。

柴﨑:「アイドルマスター シンデレラガールズ」は、僕が小学生から中学生の頃にヒットしたゲームで、元々とても好きなコンテンツでした。このイラストレーター展も満足度が非常に高かった。そういった意味で、一番思い出に残っているプロジェクトですね。190人ものキャラクターをスタイリングしたんです。

WWD:スタイリングと一口に言っても、ファッション誌のスタイリングとは異なりますよね。

柴﨑:ファッションの撮影では、世界観やシーズンテーマを元にスタイリングするじゃないですか。でも、こっちはキャラクターのペルソナを元にしたスタイリングになるんですよ。重要なのは、あくまでキャラクターのスタイリングであって、作品のスタイリングではないこと。例えば、「進撃の巨人」っぽい服を着させるのではなく、「エレン」っぽい服を着させる。

だからまず190人分のプロフィールを頭に叩き込みました。その後、それぞれのカルテのようなものを作成。それを元にスタイリングしました。「この子はこんな短いスカートはかない」とか「この子はパンツスタイルが好きそう」とか言いながら。ここに関しては、決して裏技があるワケじゃないです。

でも、これをやるには(ファッションとキャラクターの)両方の知識がないといけない。一流のスタイリストを入れたら成功するかというと必ずしもそうじゃない。

WWD:最近は、ファッションとアニメやマンガ、ゲームコンテンツの距離が近くなっているという指摘もあります。

柴﨑:僕はまだまだ遠いものだと思っています。ファッション側の人にはアニメに対する前時代的な感覚が残っているし、アニメ側の人はファッションのことを分からないものだと思っている。だからアニメ側がファッショントレンドを理解できなかったり、ファッション側がアニメの矜持を理解できなかったりする。相互理解が乏しいと、よく分からないものができる。そんな光景を見てきました。

ここであえてファッション側の人に警鐘を鳴らすのであれば、イラストコンテンツのことを一様にアニメと言わないこと。アニメもマンガもゲームも、それぞれ楽しみ方もファンも違うものです。これは自戒を込めて言いますが、1つ1つの作品にファンがいる。1つ1つに真正面から向き合わなきゃいけない。

WWD:柴﨑さんの役目はファッションとアニメの間に立つこと。

柴﨑:今はまだ希少性がありますが、これからはそんな人が続々と登場すると思います。Z世代を理解したかったら、Z世代と同じ立場に立たなきゃいけない。

WWD:同じ立場ですか。

柴﨑:そうですね。例えば、“推し活”という言葉がありますが、日常会話で使うZ世代はほとんどいないんじゃないかな。現象に名前を付けることで、ニュースに取り上げやすかったり、仕事が進みやすかったりするメリットはあると思うんですけどね。

WWD:コンテンツビジネスの仕掛け人はZ世代への理解も問われているんですね。

柴﨑:僕たちの相手は10代や20代です。そんな下の世代は、流行りものには一通り触れようとする“広さ”がある。そんなにアニメのことは知らないけど、かわいいからTシャツは着るみたいな。ちょうどニルヴァーナ(NIRVANA)の音楽は聞かないけど、彼らのバンドTシャツは着るように。“深さ”を求める上の世代とはまた違います。

でも、そんな彼らに膨大なグッズの中から選んでもらわなきゃいけない。まずデフォルトのイラストは買わないし、適当なアクスタ(アクリルスタンド)や缶バッジを作っていても買ってもらえない。ヒットコンテンツで作ったら売れるのではなく、ヒットコンテンツでめちゃくちゃいいものを作ってやっと売れる時代になったなと感じます。

WWD:埋もれないコラボにするために意識していることを教えてください。

柴﨑:作ったその後が重要かもしれません。コラボが溢れすぎて、ただSNSで告知するだけでは全く意味がなくなってしまった。今週放送する回で見せ場があるキャラの企画だから、それに合わせて出そうとか、出すタイミングまで練ります。例えば「呪術廻戦」の五条悟が「無量空処」をアニメで披露したら、その回に合わせてフィギュアを発表するとか。しかるべきタイミングで出した企画はやっぱり伸びるし、そうじゃない企画はいくら中身がよくても伸びないことが多い。

「人気キャラクターはそのときの世相を映す」

WWD:人気のキャラクターに共通していることはありますか。

柴﨑:僕がプロデュースしている「教育番組」や「ただのかえるたち」は高いコンバージョンをキープしています。「教育番組」はブラックジョークも取り入れたシニカルな作風。一方「ただのかえるたち」はほっこりと癒されるようなかわいさがある。一見すると真逆なんですが、共通していることは、作家性があること。「教育番組」はももにくす、「ただのかえるたち」はとりあたま。それぞれの作家の世界観をきちんと表現している。キャラクターデザインなのか、セリフなのか、何でもよいんですが、とにかく似ているものがどこにもない。そういった作家性がしっかりとしたものは、やっぱり売れます。

人は作家性を感じて初めてそのキャラを好きになる。「ただかわいい」「ただかっこいい」「ただ面白い」コンテンツはその一瞬を楽しませるだけで、持続性がない。バズることはあっても、ファンは増えないんです。フォロワーは20〜30万人いるけど、ポップアップを開催したら2、3人しか来なかったというコンテンツもあったように。

WWD:「ちいかわ」や「おぱんちゅうさぎ」など、最近は不憫なキャラクターに人気が集まっているように感じます。

柴﨑:物価が上がったのに賃金は上がらない。みんな苦しいじゃないですか。だから「教育番組」でも、(日々生きづらさを感じている)主人公のタマに分かりやすく共感が集まっている。

一方「ただのかえるたち」には辛い世の中だからこそ癒しを求められているように感じます。「共感したい」と「癒されたい」。現代を生きるファンの心を掴むために、どちらかに振り切ることも成功の秘訣かもしれません。

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