ファッションとアニメの関係が深まる中、アパレルブランドをはじめ、雑誌や商業施設、街づくりの領域にまでアニメを活用する動きが広がっている。アニメと企業・ブランドをつなぐ“コラボレーター”の役割を担う担当者たちや、ファッションとの協業に積極的に取り組むアニメ制作スタジオに話を聞いた。アニメファンダムの圧倒的な熱量を実感するとともに、その期待に応えるコラボを生み出す現場の情熱に学びたい。(この記事は「WWDJAPAN」2025年4月14日号からの抜粋です)
PROFILE: 鈴木幹也/「ファッジ」編集長
ファッション誌「ファッジ(FUDGE)」(三栄)は2022年11月号で、ジブリのアニメーション映画「魔女の宅急便」を特集した。「メンズファッジ(men's FUDGE)」(22年12月号)を右に置くと、主人公キキと友人トンボが話す映画のワンシーンが完成する。この表紙に見覚えがある人もいるかもしれない。なぜなら、重版するほど注目を浴びた特集号だからだ。
鈴木幹也「ファッジ」編集長は、「絵を二つに分けるというアイデアは、両誌を併読している読者も一定数いる『ファッジ』と『メンズファッジ』だから挑戦できた」と振り返る。この大胆な表紙アイデアがフックとなり、「映画公開のタイミング以外では表紙に登場しない」というジブリ作品の暗黙のセオリーを覆した。
表紙は1年の月日をかけて完成した。「普段より時間も工数もかかった」と苦労話を語る一方、その表情は晴れやか。月刊誌として異例の重版という結果が付いてきたからだ。発売から2、3日で、書店から97%の在庫が消えた。メルカリでは一時期、4000〜5000円で高額転売されていたという。鈴木編集長は、「ジブリのコンテンツの強さを感じた。同誌の発売前、金曜ロードショーが『魔女の宅急便』を放映したこと、主題歌を歌った松任谷由実さんがベストアルバムを発売したこと、愛知・長久手のジブリパークの情報解禁を控えていたことが追い風になった」と分析する。
どの媒体にも負けない
ファッション誌としての誇り
鈴木編集長は「読者のエンゲージメントが高いからこそ、安直な採用理由では読者の反発を招くだろう」と考えていた。「ファッジ」がアニメ作品を特集テーマに据える上でこだわったのは、コンテンツと媒体の相性の良さ。例えば、特集の登場人物に着想したコーデ集は、普段のファッションページにあっても全く違和感がない。ワンピースを主役に、赤をポイント使いしたキキのコーデ。ボーダーTシャツ×デニムというトンボのベーシックなスタイリング。ウルスラのラフに着崩したボーイッシュな着こなし。これらは全て、「ファッジ」の代名詞のようなスタイルだった。
ファッションの視点から大真面目に作品をひもといたのは、何より“ファッション誌”であることに誇りを持っているから。同誌は表紙に芸能人やインフルエンサーを起用せず、「付録なし」を貫き、ロンドンガールやパリジェンヌを手本にしたタイムレスなスタイル提案で読者を魅了し続けてきた。「正直、アニメを表紙にすることに抵抗がなかったわけではない。『ファッジ』らしくないと感じる人もいるだろうから。でも『魔女の宅急便』なら、『ファッジ』が打ち出すファッションと共鳴するという確信があった。今もそんな作品を探している」。