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バロック村井社長が語った「アズール」の誤算と「マウジー」第1世代向け新ブランド戦略

PROFILE: 村井博之/バロックジャパンリミテッド社長

村井博之/バロックジャパンリミテッド社長
PROFILE: (むらい・ひろゆき)1961年生まれ、東京都出身。84年立教大学文学部を卒業後、中国国立北京師範大学への留学をへてキヤノンに入社し、中国での現法立ち上げに携わる。97年に日本エアシステム(現日本航空)でJAS 香港 社長に就任。2006年にフェイクデリックホールディングス会長兼社長に就任、07年にフェイクデリックホールディングスなど3社を統合しバロックジャパンリミテッド設立。08年から現職 PHOTO : KAZUO YOSHIDA

バロックジャパンリミテッド(BAROQUE JAPAN LIMITED)の2026年2月期連結業績は、売上高が前年比11.5%減の514億9000万円、営業利益が同60.5%減の3億2100万円と減収減益となり、本業の収益力低下がより明確になった。主力の「アズール バイ マウジー(AZUL BY MOUSSY)」(26年2月時点で出店3、退店12の計112店舗)は苦戦が続き、売上高はピーク時の約240億円規模から200億円弱まで縮小した。なぜ主力ブランドは失速したのか。業績の明暗と構造的課題、そして新規事業を見据えた再建戦略について、村井博之社長に聞いた。

WWD:今年度の業績をどのように受け止めているか。

村井博之社長(以下、村井):昨年、中国事業から撤退したことで、国内事業が大きく伸びるはずだった。しかし中国の景気後退や渡航制限などにより、訪日客の売り上げが減少した。欧米客は増加したものの、ファッションの購買には結びつきづらい。体験消費が高まる中でも、衣料品への支出比率が高い中国人の急減は想定外だった。

WWD:各ブランドの成果は。

村井:中国客の減少を受け、「エンフォルド(ENFOLD)」や「リムアーク(RIM.ARK)」といった百貨店ブランドは後半にかけて落ち込んだ。一方、ファッションビル・駅ビル系ブランドは概ね計画通りに推移し、「マウジー(MOUSSY)」は100億円弱(前年比3.8%増)を売り上げた。一時低迷していた「リエンダ(RIENDA)」も、ギャルブームの再燃を追い風に回復している。郊外SCでは、「ロデオクラウンズ ワイドボウル(RODEO CROWNS WIDE BOWL)」(52店舗)が同12.3%増と伸長した。大規模な改装は行っていないが、VMDや店舗演出の工夫により旧来ファンの再来店・再購買を促すことができた。ただ、「アズール」は惨敗だった。

WWD:「アズール」は08年にスタートし、3年後に売上高100億円、16年には240億円に達した主力業態だ。何があったのか。

村井:24年度以降は客単価こそ微増しているものの、客数が減少している。競合ブランドとの差別化につながる世界観や発信力の低下、売れ筋商品の不足、顧客ニーズとのミスマッチなど複合的な要因があるが、主戦場であるショッピングモールの客層変化も大きい。もともとモールが弱かった若年層の開拓により、「アズール」は20〜30代前半の顧客を多く取り込んできた。しかし現在は30代以上が増え、各社が競合するレッドオーシャンとなっている。結果として、そうした競争の激しい領域に自ら踏み込んでしまった。本来、ニッチな層をターゲットに他社がやらない領域を押さえることがバロックの強みだが、その点を十分に徹底できなかった。プロモーション不足も含めて戦略ミスだったと認識している。

WWD:“戦略ミス”について具体的には。

村井:例えば、「マウジー」のリブランディング時のような発信や打ち出しが十分ではなかった。SNSは若年層ほど利用率が高く、年齢が上がるにつれて接触頻度は下がる。特にターゲットとした30代は子育てなどでライフスタイルや情報接触の仕方も変化している。その点を踏まえたコミュニケーション設計ができていなかった。つまり、誰に何を届けるのかという顧客の見極めと、それに対する発信の設計が不十分だったということだ。

WWD:急務とする「アズール」の立て直しはどう進んでいるのか。

村井:まずは進行中の全店舗のスクラップ&ビルドを遂行する。VMDを含め、黒から白を基調とした内装へと刷新していく。加えて、この春物から順次投入しているが、商品クオリティーの見直しを進めている。デザインの再構築に加え、低〜中価格帯の商品でも素材メーカーと協業し、新素材や機能性の強化に取り組む。これまでは上位ブランドが優先して素材開発を進めてきたが、「アズール」においてもオリジナリティーと顧客ニーズを踏まえた商品開発を進めていく必要がある。また、郊外を中心にフランチャイズ比率が高いブランドであるため、各店舗や顧客の声を十分に吸い上げられていなかった点も課題である。今後はその体制を強化していく。

課題はファッションの“刺激”をどう生むか

WWD:ファッション以外の需要も高まっている今の商業施設での戦い方とは。

村井:画一的な店舗づくりではなく、その商業施設ごとの特性に応じた打ち出しが必要である。池袋、新宿、渋谷、銀座といった都心でもエリアごとに顧客特性や売れ筋は異なる。強みである顧客理解に基づいた店舗運営を徹底し、人材配置も含めて最適化することで収益力を高めていく。ピーク時には月商1億円を超える店舗もあったが、そうした水準に近づけていく必要がある。

WWD:現在の20〜30代の消費動向や顧客心理をどう読んでいるか。

村井:非常に複雑に感じている。社内の若手社員を見ても価値観は多様化している。かつては社員割引で服を買えること自体が動機となっていたが、現在は初任給や昇給といった待遇面も重視される。また、Z世代と一括りにはできない。初期にそう呼ばれた層はすでに30代に差し掛かっており、現在の20代とは考え方も異なる。最近の若年層には、再び刺激のあるものへの関心が強まりつつあると感じている。

WWD:その“刺激”に何が必要と考えるか。

村井:急速にブームをつくるブランドの多くはインフルエンサー発であり、話題性は高いが持続性に課題がある。だからこそ、中長期で育てるブランドと短期的に話題を生む取り組みをどう組み合わせるかが重要だ。業界全体としては無難でコンサバティブなモノづくりに寄りすぎている。打率を気にするバッターばかりで、ホームランを狙うプレーヤーが少なくなっている状況は望ましくない。ファッションとしての“刺激”をどう生み出すかが今後の課題だ。

WWD:新たな一手とする新規事業の開発について。

村井:「マウジー」人気の根底にあるのは2000年代に築いたムーブメントであり、その第1世代の顧客は現在50代に差し掛かっている。その層に向けた新たなブランドを構想中だ。今の百貨店ブランドは価格が高く、低価格ブランドとの間には十分な選択肢がない。その中間ゾーンに、かつて「マウジー」や「スライ」を好んでいた層が共感できる商品を提案していく。「マウジー」の派生ではなく新ブランドだ。既存顧客にはどこか懐かしさや今らしさを感じさせる要素を持たせながら、新たな顧客層も取り込む。将来的には100億円規模を目指す。

WWD:経営者としての今の課題は。

村井:最も大きいのは人材育成だ。若手の定着率は業界を問わず低下しており、優秀な人材ほど流動化している。その中で、いかに人を育て、組織として持続的に成長していくかが問われている。100年後も存続する企業であるためには、人と基盤の両方を着実に整備していく必要がある。

WWD:直近の業績を踏まえ、中期経営計画を刷新したが、今後の成長戦略について。

村井:上場当初から売上高1000億円を掲げてきたが、現状はそこから後退している。要因を振り返ると、国内では成果を出せても大舞台では力を発揮できない状態が続いている。背景にはグローバルで戦うための基盤整備の不足がある。今後2年間は拡大よりも基盤づくりに注力する。勢いだけで成長するフェーズは終わっており、緻密な戦略とそれを実行する組織・サプライチェーンの構築が不可欠だ。その上で30年までに売上高1000億円規模を達成し、グローバルでも成長できる企業へと進化させていく。

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