皆さん、こんにちは。「WWDJAPAN」の村上要です。2026-27年秋冬のパリ・ファッション・ウイークが終了しました。「WWDJAPAN.com」では注目ブランドを続々リポートしていますが、ここでは、そのほかのコレクションを一挙にダイジェストでご紹介。今回は私の頭の中を皆さんにご紹介するイメージでしょうか?編集長の“ひとりごと”に最後までお付き合いいただければ幸いです。今日は、3つのブランドについて呟きます。
美しきデコルテで「光と闇」
を描く「バレンシアガ」
「バレンシアガ(BALENCIAGA)」は、ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)に変わって2シーズン目。前回のマイ・ベスト・コレクションを見せてくれたブランドの進化が楽しみです。
今季は「光と闇(もしくは影)」に魅了されたブランドが多い印象ですが、「バレンシアガ」も同じ。ショーでは(日本ではメジャーな配信プラットフォームではありませんが)HBOの人気ドラマ「ユーフォリア」で脚本から監督まで制作を総指揮するクリエイター、サム・レヴィンソン(Sam Levinson)とコラボレーションした映像を投影しています。ピエールパオロは、「サムは物語を語る。批判も、非難も、称賛もせず、ただ人間的で感情豊かな視点を提示する。彼は、暗闇の中に光を見出す特別な感性を持っている。私たちが今生きている時代を考えると、それは非常にメタファー的だ」と話します。アメリカとイスラエルによるイランへの攻撃など、今季のファッション・ウイーク期間中に残念ながらもう一段階混沌の様相を呈した世界などを思っているのでしょう。
ファッションショーは、闇を象徴する黒で幕を開けました。オールブラックの洋服に身を包んだモデルは、スポットライトに照らし出されたランウエイを歩きます。「光と闇」の表現です。探求したのは、ファーストシーズン同様、縫製を最小限に留めたコクーンシルエット。特に背面がふくよかな、ボリューム感のあるアウターの数々です。加えてウィメンズでは、立ち上がる襟と体をふんわりと包み込むデコルテが印象的な、彫刻的とも言えるピーコートなどが登場します。チェスターコートはオールブラックながら、セクシーとは違う形でモデルのデコルテ、白く美しい肌を覗かせます。そのコントラストもまた「光と闇」なのです。合間に挟むのは、ベロアやモダールを巧みに手繰り寄せたドレープドレス。脇腹はあえて覗かせ、クリエイションの中心にある身体の存在を際立たせます。ピエールパオロのシルエットにまつわる、長年かつ類稀なる才能から生まれたアプローチやシルエットが、創業デザイナー、クリストバル・バレンシアガ(Cristobal Balenciaga)を思わせるのは言うまでもありません。
カラーリングは、最後までブラックを基調に、時折鮮烈なレッドやパープル、オレンジなどを闇に差し込む一筋の光のように加えました。ニードルパンチで闇から光へのグラデーションを表現したアウターもあります。美しいけれど、ガザルという素材自体も改良したファースト・コレクションほどの興奮はなかったかな?
「アン ドゥムルメステール」は
プレザーなどでプレッピームードも
「アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)」は、音楽由来のロックスピリットと相反する脆さ・儚さというブランドらしさに、ティーンエイジャーな自由なマインドと同時に大人っぽいスタイルに憧れる気持ちなどを上手に表現して進化を続けています。
今季はテーラリングもしくはシフォンをたっぷり使った繊細なドレスというコアアイテムに、2026年春夏コレクションに続いてヴィクトリアン調のナポレオンジャケットでクラシックなムードを、学生服チックなチルデンニットやブレザーでプレッピーなムードを融合しました。破れた裾や裏地が覗く紋章付きのクラッシュベルベットのブレザーや、ゴールドの側章をあしらったデニム、ラフに巻きつけたネクタイなどがニューアイテムです。
ロックンロールと詩情あふれるロマンティシズム、そしてスニーカーや厚底ブーツなどで表現する現代の若者らしいリアリティ。ワードローブを少しずつ豊かにしていく発想から生まれる継続性を含めて、良いブランドに仕上がってきました。
百貨店への進出が続く「ザ・ロウ」
装飾やジュエリーも加えエレガントに
こちらも進化が続く「ザ・ロウ(THE ROW)」。直近は銀座三越、そしてこの次は池袋西武などで拡張・新規オープンが続き、ファッション・コンシャスな人たちだけでなく国内外の富裕層にもリーチし始めた印象です。
そんな進化の現れなのでしょう。コレクションは、ベーシックアイテムを自由奔放に着こなすノンシャラン(気取らない)スタイルから、もう少し普遍的な美しさやラグジュアリーなムードに傾倒しました。ダークカラーのトップコートに純白のシャツ、ケープをあしらったトレンチコート、力強いショルダーラインのジャケットなどは、ベルトなどで自由に着こなすムードは残しつつも、ラグジュアリーな雰囲気にシフト。生地を摘んで花柄を描いたり、ダチョウの羽根やファーでヘムラインなどを飾ったりと、装飾が一定の存在感を醸し出しているのも新しいポイントです。翡翠のブローチやダイヤモンドのラペルピンなどもありました。
一方でオリーブのコーデュロイパンツや純白のトラックパンツ、オーガンジーのレイヤードなど、「ザ・ロウ」らしい意表を突くスタイリングも健在。良いバランスです。