工藤花観デザイナーが手掛ける「カカン(KAKAN)」は3月16日、2026-27年秋冬コレクションを発表した。昨年、東京都と日本ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)が主催する「東京ファッションアワード(TOKYO FASHION AWARD、以下TFA)」を受賞。ブランド初のランウエイショーとなった。
「カカン」は2024年に設立。ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズ校(Central Saint Martins)でファインアートとファッションアクセサリーを、ミラノのマランゴーニ学院(Istituto Marangoni)でファッションデザインを学び、「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」や「シャネル(CHANEL)」などで経験を積んだ工藤デザイナーを中心にチームで構成させている。シグニチャーは、インハウスの職人が手掛ける羊毛のハンドニットだ。
今シーズンのテーマは「WILD, NOT PURE」。工藤デザイナーは「厳密には『Beauty is wild, not only pure.(美しさは純粋なものだけでなく、野性的な側面も持っている)』という意味」と説明する。「美しさは純粋さだけではなく、野生や揺らぎを含むもの。整えられた理性の一方で、人は曖昧で衝動的な存在でもある。揺らぎながらも前向きに生きる私たちの姿を、否定するのではなく抱きしめるように表現した」という。
羊毛はフェルトや糸へと姿を変え、都会的アプローチへとつなぐ多様な表情を見せた。素肌をのぞかせる手紡ぎのニットドレス、毛羽立つブラトップやベルト、大地の土をほうふつとするブラウンのタンクドレス、レザーのハンドバッグから垂れる花のつる。ここでいう“野生”は単なる荒々しさではなく、都市の雑踏に潜む有機的なエネルギーとして表現されている。ゆとりのあるテーラードスーツや小花モチーフをあしらったシアーシャツなど、今らしい軽やかさと着心地の良さも際立った。エレガンスと交差させることで、“野生”を現代的な美として再構築した。
初のランウエイで想起したのは、土の上を裸足で歩くモデルの姿だった。実際に土は敷かれていないものの、モデルはゆるやかなテンポで裸足のまま歩いた。その背景には、着想源の一つである人類学者クロード・レヴィ=ストロースの著書「野生の思考」と、自身の妊娠体験があり、頭で考えるより先に身体が「そうなってしまう」感覚に、あらためて気づいたという。
ショー後の囲み取材の代わりに、会場の各席には工藤デザイナーによるA3サイズのメッセージが置かれていた。そこにはコレクションや初めてのショーへの思いに加え、「座席に置く印刷物の内容に悩んでいるうちに、ショーの2日前になってしまった。(中略)本来であれば服づくり以上に時間をかけられるはずなのに」といった言葉が綴られている。不器用さを素直にさらけ出す一方で、クリエイションは繊細かつ情緒的。その両義性がブランドの輪郭を形づくっていることがわかる。次回のショーでは、ぜひとも彼女の言葉を直接聞ける機会があるとうれしい。