PROFILE: 中森友喜/NOSE SHOP社長

ニッチフレグランスのセレクトショップである「ノーズショップ」を運営するNOSE SHOPが17日、東証TOKYO PRO Marketに上場した。同社は11年オーガニックコスメを輸入販売業からスタートし、17年に世界各国からニッチフレグランスを集めた「ノーズショップ」を新宿ニュウマンに出店。大阪、名古屋、福岡などに出店し、18店舗を運営している。フレグランス市場の盛り上がりにより、毎年2ケタ増で成長し2025年の年商は19億円、純利益は1億6000万円になった。「ノーズショップ」をスタートした当時6ブランドだったのが、今では約90ブランド、1600種類近くを販売するまでに成長し、香水砂漠と呼ばれた日本において、「ノーズショップ」を通して香りの文化発展と市場拡大に寄与してきた。中森友喜NOSE SHOP社長に、上場について聞いた。
健康診断を受ける感覚で上場にチャレンジ
WWD: 上場を視野に入れ始めたのは?
中森友喜NOSE SHOP社長(以下、中森):約2年前から上場を視野に入れていた。NOSE SHOP創業の目的は、日本で香りを日常的に楽しむ文化の定着だ。一号店を出店してから約8年になるが、香水の使用率はここ数年変わらず約24%。それを50%にするには、まだまだ時間がかかる。この活動を続けていくために必要なことを考えた。創業社長としてイノベーションに注力してきたが、企業を強くするにはガバナンス構築が必須だと考えた。
WWD:東証 TOKYO PRO Market に上場する理由は?
中森:まずは、自分たちのガバナンスの成熟度を測ってみようと思った。現在、日本におけるフレグランスの市場規模は約500億円といわれているが、ファッションなどの産業に比べるとまだまだ小さい。未成熟の産業で株主を増やして株価を上げるのは違うと思った。だから、オーナーの変更も株の調達もしなくてもよく、外部から監査が入るTOKYO PRO MARKETを選んだ。今後、20年、30年、香りの楽しさをシンプルに伝えていくためには、企業としてクリーンであるべき。その土台作りとして、健康診断を受ける感覚でチャレンジした。
憧れの経営者は「コム デ ギャルソン」の川久保玲と「ユニクロ」の柳井正社長
WWD:上場にこのタイミングを選んだのは?
中森:日本市場における香水市場が成熟し始めた。このタイミングで、われわれが目指すことを腰を据えて正しく行っていくという姿勢を見せるべきだと思った。年商が約20億円になり、社員も100人を超えてくるとあうんでコミュニケーションはできない。上場するには資金が必要だ。そのための投資ができる組織体になり、組織を整えるタイミングだと捉えた。今後も成長し続けるためにはガバナンスの視点が必須だ。私自身、同時進行で大学院でMBAを学び経営者として脳のアップデートをしてきた。大学院卒業と同時に上場できるのはとても嬉しい。
WWD:上場後の戦略は?
中森:香りの文化を作るために新しいこともするが、身を引き締めて、やるべきことをひたすらやり続ける。戦略等についても数名で意思決定そするのではなくチームで考えていくつもりだ。
WWD:上場による変化は?
中森:社員の意識が変わった。監査という外部の視点が入ることで、単なるオーナー企業ではなく、社会的企業として認められう存在になる。それに対して、嬉しさもあると同時に不安もあると思う。社員それぞれが役割を果たして会社として成り立つ。みんなで作る会社であるということを実感してもらえるように、相互の信頼を高めながら進んでいきたい。
WWD:中森社長がリスペクトする経営者は?
中森: 「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」の川久保玲さん。クリエイター兼経営者として長年ファッション業界のカルチャーを作り続け、正にスーパースターのような存在。「ユニクロ(UNQLO)」の柳生正ファーストリテイリング会長兼社長のビジョンに対する情熱、遂行力、経営者魂に憧れる。このように、業界における文化や産業を創造している経営者から学ぶことは多い。
香水を漫画のように輸出できる産業に
WWD:今後の日本におけるフレグランス市場の展望は?
中森:フレグランス市場規模の年間伸長率は、世界も日本も約8%。日本ではユーザー数は増えていないが、使用頻度、所有本数が伸びている。市場が拡大しているように見えて足踏みしている状況で、今後、市場はさらに二極化が進むだろう。資本がある企業はマーケティングで事業拡大を図るだろうが、「ノーズショップ」では、購買体験を大切にしていく。販売員が、それぞれの消費者に寄り添い提案できるかが重要だと考える。その接客プログラムを作るために、ショップとは別にサロンをオープンし、カウンセリングサービス(有料)を始めた。ディスカッションしながら、香りの好き嫌いを言葉にし可視化し、嗅覚だけでなく味覚、神経学、生理学なども活用しながら分析する。「ノーズショップ」に行けば、好きな香りが見つかるという場所にしたい。
WWD:日本のフレグランス市場をどのように進化させるか?
中森:漫画のように世界に輸出できる産業にしいきたい。漫画は、日本人の解釈で欧米のアニメをカルチャーにし、クリエイターがどんどん生まれる産業になり、海外に広がった。香水も元々はヨーロッパの文化。アジアでもそれぞれの文化を反映した香りのクリエイションが花開いているが、日本は少し遅れている。まずは、世界中の香水を集めて試せる「ノーズショップ」で文化を広げ、次は日本発のクリエイションを作り、世界に届けたい。オリジナルフレグランスの開発を始め、調香師の教育機関設立、クリエイター・起業家支援などを行い、ゆくゆくはフレグランスを輸出産業にしていきたい。