
ユナイテッドアローズ(以下、UA)はこのほど、スタイリストのTEPPEI氏が監修したアートブック「ひとゝ服」を発売した。クリエイターらと協業し、同社の商品を新たな手法で提案するキュレーションストアプロジェクト「UA キュレーテッド(UA CURATED)」の一環。発売を記念し、メディア関係者向けに、同企画を主導した松本真哉執行役員CCO、TEPPEI氏、被写体として登場した学生モデルたちによるトークショーも開催。企画に込めた思いを語った。
“個性尊重型世代”にどう向き合うか
「UA キュレーテッド」は、若年層との新たな接点づくりを目指すプロジェクトとして2025年に始動した。第1弾では、若年層から支持を集めるアイコンとして、TEPPEI氏、完全予約制美容室「フリューリ(FLEURI)」、クリエイティブチーム「マジック アイランド(MAGIC ISLAND)」をコラボレーターに迎え、それぞれの感性でキュレートしたUAの商品をオンラインストアで販売した。
その取り組みを発展させる形で生まれたのが、「ひとゝ服」。松本CCOは、背景にはUAがこれまで十分に捉えきれていなかった若年層のファッション観への気づきがあったという。「当社の平均顧客は30代後半〜40代で、その世代は一つの大きなトレンドを正解とする傾向がある。一方、今の10〜20代は“個性尊重型”だと思う。つまり、一部に個性的な人がいるのではなく、世代全体としてそれぞれの“個性”を尊重し合う。その“個性尊重型”のファッション感覚が主流になった時に、果たして自分たちはやっていけるのだろうかという課題意識があった」と松本CCO。
TEPPEI氏に託されたミッションは、被写体となる若者たちの個性を、UAの商品を通して引き出すことだった。TEPPEI氏は「何をもって“個性”と捉えるかは、非常に時流を伴う話。プロジェクトの制作期間中は、今の時代に服を着ることの意味そのものを考え続けた。それをユナイテッドアローズという大きな船の中で伝えられることは、自分にとっても、ファッション業界に身を置くすべての人にとっても意義があるはずだと思った」と語る。
「モヒカンでも行ける」と友人に広めたい
モデルは10校以上の学校と連携して公募し、オーディションを経て選ばれた総勢36人が参加した。高校生から服飾学校学生、大学生らが参加し参加者の平均年齢は19.9歳。
普段はパンクファッションが好きだというモヒカンスタイルの学生は、「ひとゝ服」の中で、淡いブルーのトラックスーツにマルチカラーのチェックシャツを重ねた、クリーンでどこかノスタルジックな装いで登場した。感想を聞かれると、「普段は黒やレザーしか着ないのに、撮影の段階でUAらしさが自分の中にどんどん混ざってきて、こんなふうになれるんだと驚いた」と振り返った。
さらに、「周りの友人に『UAのモデルをやるんだよね』と話した時は、正直みんなに驚かれた。UAといえば、真面目でおとなしいイメージを持っていたから。でもこれからは、UAはモヒカンでも行けるぞ!とみんなに広めていきたい」と話した。
また、UAのリクルートスーツを着て就職活動に励んでいるという学生は、「プレスルームに行くと、街でよく見かけていた『シテン(CITEN)』のカラフルなバッグがあって意外だった。UAの幅の広さを知ることができてよかった」と感想を述べた。

松本CCOは、このプロジェクトを通じて「危機感が増した」と明かす。「被写体36人のジャンルレスな着こなしを見て、今の世代が“個性尊重型”だろうという肌感が確信に変わった。それはある意味、従来のファッションビジネスのやり方が通用しない時代が来るということでもある。当社が本気で向き合わなければならない課題だと思う」と話した。一方で、「ファッションとは何か、その問いに真面目に向き合う企業文化の証明として、この本を形にできたことはうれしい」とも続けた。
トークの終盤には、「あなたにとってファッションとは?」という話題にも広がった。学生たちからは、「自分らしさを感じる瞬間」「人とつながる手段」「自分の生きる場所」といった声が上がった。
TEPPEI氏は、「僕自身を振り返ると、自分に自信がなく、どうしていいか分からない少年時代に、服が根本的に人生を変えてくれた。そこから、ファッションと一緒に生きたら楽しいかもしれないと思い、今に至る。20歳以上年の離れた人たちとも、同じ『ファッション』という言葉を真ん中に置きながら向き合えたことは、すごくいい経験だった。それがファッションの素晴らしさなのだと思う。僕が20年以上前に感じた、ファッションに救われた体験や、その存在価値に気づく瞬間を皆さんと共有できたこと、そしてそれを書籍という形で残せたことに意義を感じる」と締めくくった。
書籍は六本木 蔦屋書店のほか、全国の書店10店舗で販売中。価格は2800円。