
ユナイテッドアローズは、若年層との新たな接点づくりを目的に新プロジェクト「UAキュレーテッド」を10月に始動した。いま特に若者の間では、趣味嗜好が細分化し、“〇〇界隈”と呼ばれる小規模コミュニティーの中でトレンドが生まれる傾向がある。その動きに着目し、根強いファンコミュニティーを持つクリエイターが自らの感性で同社の商品をキュレートし、オンラインストアで販売するという新たな試みに乗り出す。初回はスタイリストのTEPPEI、完全予約制美容室「フリューリ(FLEURI)」、クリエイティブチーム「マジック アイランド(MAGIC ISLAND)」を起用した。
斬新な企業広告でユナイテッドアローズの多面性を訴求
同社の目下の課題は、40〜50代が中心となった顧客の若返りだ。中期経営計画で掲げる主要戦略「UA CREATIVITY 戦略:企業ブランドのリブランディング」の下、次世代とのタッチポイント創出に取り組んできた。
昨年10月に発信した企業広告第1弾では、中条あやみや原口沙輔、リカちゃんなどを起用し、トラッドな企業イメージを覆す近未来的ビジュアルでアプローチした。今年2月には第2弾として、若手歌舞伎役者の片岡千之助と現代アーティストの森本啓太を起用したビジュアルを発表。ビジュアル表現を通じて、ユナイテッドアローズの多様性を打ち出してきた。
松崎善則社長執行役員CEOは、「狙った層に確実に届いた実感がある。ある意味、ノイズを生み出すことそのものが目的だったので、社内外から『あの広告は何?』という声が上がった点はうれしかった」と話す。
界隈に合わせて丁寧に深く届ける
そこからさらに、ターゲット層の来店や購買につなげようとする施策が今回の第3弾「UAキュレーテッド」だ。「セレクトショップから遠ざかっている次世代層にどう届けるかを、若手メンバーを中心に議論するなかで、出てきたのが“界隈”の存在だ。例えば釣りやキャンプ、美容室など、さまざまなカルチャーの周辺には、ファッションは好きだが当社には触れたことはない潜在顧客が多くいると感じた。だからこそ、セレクトショップという大きな傘の下ではなく、それぞれの界隈に合わせて丁寧に深く届けていく必要があると考えた」と語る。
今回協業したスタイリストのTEPPEIは、ファッションアイコンとして若年層を中心に根強いファンコミュニティーを持つ。彼の「UAの商品には一貫して品がある」という気づきを出発点に、「品」をテーマにタブロイド紙を制作。ユナイテッドアローズ各店や専門学校、美容室などで配布しているほか、11月5日には下北沢のアドリフトで音楽ライブを交えた配布イベントも開催予定。オンラインとオフラインを横断しながら、立体的にコミュニケーションを設計している。
松崎社長は「今、流行を作る人たちの情報の得方は非常に複雑化している。そうした行動を正確に捉えなければ、企業はマス化してしまう。当社に対する“食わず嫌い”を払拭し、選択肢の一つとして捉え直してもらえたらうれしい」と話す。来年にかけても、異なるクリエイターを起用したストアを発表予定だ。
同社は「シテン(CITEN)」「アティセッション(ATTISESSION)」、韓国のライフスタイルセレクトショップ「ナイスウェザー(NICE WEATHER)」など、新規事業を通じて若年層との接点を拡大してきた。松崎社長は、KPIとしているUAクラブ会員における20〜30代の比率も徐々に上昇していると手応えを語った。