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「M・A・C」、創業41年で米セフォラに初展開 エスティ ローダー成長戦略の一環

エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)のメイクアップブランド「M・A・C」はこのほど、化粧品小売店「セフォラ(SEPHORA)」の全米105店舗およびオンラインストア、米百貨店コールズ(KOHL’S)内のショップ・イン・ショップ全店での販売を開始した。同チェーンでの販売は創業41年で初めて。

「M・A・C」のニコラ・フォルミケッティ(Nicola Formichetti)=グローバル・クリエイティブ・ディレクターは今回の取り組みを「2つのアイコンの融合」と表現する。エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES以下、ELC)のタラ・サイモン(Tara Simon)=アメリカズ担当プレジデントは、「専門店チャネルは急成長している。両者はどちらも業界を代表する存在で、組まない理由はない」と語る。

ELCは成長チャネルに注力

今回のセフォラ参入は、ELCのステファン・ド・ラ・ファヴリー(Stephane de La Faverie)最高経営責任者(CEO)が推進する、成長チャネルへの注力で売り上げ拡大を図る戦略の一環だ。同社では2024年に「クリニーク(CLINIQUE)」がアマゾン(AMAZON)に出店し、その後「エスティ ローダー」「ボビイ ブラウン(BOBBI BROWN)」「オリジンズ(ORIGINS)」「トゥー フェイスド(TOO FACED)」なども続いた。「M・A・C」は現時点でアマゾンに出店していないが、セフォラ進出は満を持しての決断だったという。

ELCのサイモン=アメリカズ担当プレジデントは「北米のメイクアップ市場で両社に大きな成長余地があった。『M・A・C』が再び勢いを取り戻し、シェアを回復している今こそが最適なタイミングだった」と説明する。

メイク部門は減収も「M・A・C」が成長

ELCの25年10〜12月期(第2四半期)の決算によると、同期間のメイクアップ部門の売上高は前年同期比1%減少したものの、「M・A・C」は増収を記録。北米セフォラ向け出荷の増加やリップカテゴリーの好調が寄与した。全社の売上高は同6%増の42億ドル(約6636億円)だった。

一方、25年度の年次報告書では、フェイスカテゴリーの不振や小売りでの軟調が影響し、メイクアップの売上高が同5%減少した。「M・A・C」の立て直しは、同社の業績回復に直結する重要課題となっている。

セフォラで若年層へのリーチ拡大

同社のコリ・ラインアーツ(Cori Reinartz)北米担当シニア・バイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーは、セフォラ進出によって若年層へのリーチ拡大を狙うと説明。「セフォラは若年層比率が高い。“リップガラス エアー ノンスティッキー グロス”のように若い世代に響いた製品をさらに広げる好機になる」と語る。

セフォラ側にとっても、メイクアップアーティスト主導のメイク文化やマキシマリズムの再燃を取り込むチャンスだ。セフォラのエイミー・エイブラムス(Amy Abrams)=メイクアップ部門マーチャンダイジング担当バイスプレジデントは、「ブランドの原点回帰と革新的な製品開発を進める『M・A・C』に注目してきた。長年のファンに加え、Z世代にも強く訴求できる」と期待を寄せる。

「M・A・C」はすでにカナダ、英国、中南米、欧州、アジア太平洋地域のセフォラで展開しているが、米国では今回が初めて。新製品のアイ&フェイスカラー“マルチスカルプト マット リキッド カラー”を2カ月間にわたりセフォラ先行で販売するなど、限定施策も実施する。

売り場には、フォルミケッティ=グローバル・クリエイティブ・ディレクターが自宅に持つ工具箱から着想したゴンドラ型什器を導入。「メイクの創造性を支えるツールボックスとしての『M・A・C』」を表現するデザインだといい、今後は他地域のセフォラにも拡大する可能性がある。

「『M・A・C』はカルチャーブランド」

また、フォルミケッティ=グローバル・クリエイティブ・ディレクターは、シンガーソングライターのチャペル・ローン(Chappell Roan)、モデル・インフルエンサーのガブリエット・ベクテル(Gabbriette Bechtel)、インフルエンサー兼クリエイターのクエンリン・ブラックウェル(Quenlin Blackwell)を起用したキャンペーンも手掛けた。大胆なメイクのイメージが強いブランドのもう一つの側面として、ソフトでクールなルックも提示。グローバルブランドアンバサダー就任後初の広告となるローンのビジュアルも話題を呼びそうだ。

競合には「メイクアップ バイ マリオ(MAKEUP BY MARIO)」「パトリック・タ(PATRICK TA)」「m.ph バイ メアリー・フィリップス(M.PH BY MARY PHILLIPS)」などメイクアップアーティストが創業したブランドが並ぶ。しかし、フォルミケッティ=グローバル・クリエイティブ・ディレクターは「製品力を核に、常に新しさを打ち出す。『M・A・C』はカルチャーブランド」と差別化に自信を見せる。

「M・A・C」は17年からアルタビューティ(ULTA BEAUTY)でも展開し、米国に88の単独店舗を構えるほか、多数の百貨店にも出店。24年7月にはTikTokショップにも参入した。「消費者がいる場所にいる」という全社戦略の下、チャネル拡大を進めている。

北米事業は11年ぶりに成長

ELCのサイモン=アメリカズ担当プレジデントは、北米事業全体が11年ぶりに成長へ転じたことを強調する。「『M・A・C』がフル稼働しなければ、規模の大きさゆえに足かせになる。だからこそ再建が不可欠だった。今は再び成長軌道に乗っている」と語る。

一方で、組織再編も進む。1月にはシニア・バイスプレジデント兼グローバルゼネラルマネジャーを務めたアイダ・ムダシル・レボワ(Aida Moudashirou Rebois)が退任。フォルミケッティ=グローバル・クリエイティブ・ディレクターの起用やリサ・セキーノ(Lisa Sequino)のメイクアップブランドクラスター担当プレジデント就任など、人事刷新が続いている。

ポートフォリオ再編も進行

また、同社が「トゥー フェイスド」「スマッシュボックス(SMASHBOX)」「ドクタージャルト(DR. JART)」の売却を検討しているとの報道もあり、直近では複数ブランドをまとめて売却対象とする動きが伝えられている。ELCは公式には認めていないが、ポートフォリオ再編も含めた構造改革が進行中だ。

「M・A・C」のセフォラ進出は、ブランド復活とグループ再建を象徴する重要な一手となる。

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