親密なランウエイショーを開催するブランドが増える中、「シャネル(CHANEL)」は2026−27年秋冬もグラン・パレでの壮大なショーを通して、ファッションの楽しさと夢を見せた。会場に入ると、そこにはおもちゃのようにポップなカラーで彩られた巨大なクレーン。それは、「夢を築くというアイデアにひかれた」と米「WWD」に話すマチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)が、今まさに「シャネル」で新しい夢を築きつつあることを示しているのだろう。
「対話 パート2」というコレクション名の通り、マチューは今季も創業者ガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)との“架空の対話“を続けている。「ファッションは毛虫であり、蝶でもある。昼は毛虫、夜は蝶になりなさい。毛虫ほど気楽なものはないし、蝶ほど愛される存在もない。体にまといつくドレスも、ひらひらはためくドレスも必要。蝶は市場に行かないし、毛虫は舞踏会に行かないのだから」 というガブリエルの言葉からヒントを得た彼は、メゾンの持つ「パラドックス(逆説)」に着目。「『シャネル』とは、機能であり幻想でもあり、感性であり魅惑でもある。『シャネル』は昼であり、夜でもある。つまり、毛虫と蝶のどちらを選ぶか、 いつでも自由でいられるということだ。私は、女性たちが自分らしく、そしてありたい自分でいられるキャンバスを創りたいと願っている」 と述べた。
そんな思いを込めたショーのファーストルックは、ジップアップのリブニットで表現した「シャネル」スーツ。その後も、今季はメゾンを象徴するツイードスーツの再解釈がカギとなった。デザインで新鮮なのは、ジャケットをワークウエア感覚のオーバーシャツやコンパクトなブルゾンに作り変えた提案。そこには、男性のワードローブと働く人の服装からインスピレーションを得ながら女性服に機能や実用性の革命をもたらした、創業者への敬意が込められている。また、デビューシーズンにも見られた1920年代のアーカイブとマチューの好むスタイルが共鳴するローウエストは、より実験的に。切り替えの表現や装飾要素として、ドレスの太ももあたりにベルトのデザインをあしらった。
「素材の魔術師」とも称されるマチューは、引き続きツイードの概念を拡張する新たな解釈にも意欲的だ。例えば、オーガンジーのような生地の上にブークレ糸でチェック柄を描いたシャツを限りなく薄く仕上げたツイードのジャケットとコートを合わせたり、それをフェイクレイヤードで表現したり。無地の生地の上にシリコン樹脂でチェック柄をのせたり、メタルメッシュでツイードを模したり、ルレックスを織り込んできらめきを加えたりと、多彩な提案が見られる。1月のクチュールではシルクモスリンで「シャネル」スーツを作り、「どこまで削ぎ落としても『シャネル』と分かるか?」に概念的に挑戦した彼は、今回のプレタポルテでは実際にシグネチャー素材を軽やかに仕上げてレイヤードできるようにしたり、新しい表現の可能性を見出したりすることで、さらにそのアイコニックな価値を高めている。
一方、スーツに交えて登場した軽やかなドレススタイルは、優雅でありながらエフォートレス。ギャザーを寄せた切り替えで丸みのあるフォルムを描いたシンプルなものもあるが、レースやサテンなどの軽やかな生地を組み合わせたスタイルや自由なアイデアとアトリエの技術で表現したカメリアを随所にあしらったデザインといった手の込んだアイテムが目を引く。幻想的なきらめきを放つその姿は華やかで、ガブリエルが語った“蝶”のイメージにつながる。
レディー・ガガ(Lady Gaga)の「Just Dance」のリミックスが流れる中、フィナーレに登場したさまざまな年齢のモデルたちは、マチューが目指したように「自分らしく、そしてありたい自分でいられる」ことを体現。その光景は、ファッションを通して生きることの喜びを表現しているようにも感じられた。