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ホテル「星のや奈良監獄」、独居房連結のスイートルーム1泊14.7万円から

星野リゾートは、奈良市内にある旧奈良監獄を活用したラグジュアリーホテル「星のや奈良監獄」を6月25日に開業する。1908年に完成してから百年以上も刑務所として使われてきた。2017年に国の重要文化財に指定された歴史的建築物を宿泊施設として活用、保存する取り組みは日本初。星のやブランドとしては9施設目で、星のや沖縄以来6年ぶりの新規開業となる。

国が建物の所有権を保持したまま、民間が運営を担うスキームを採用する。観光による収益で文化財の保存を持続させることを前提とし、法務省、文化庁、奈良県、奈良市、地域関係者と連携しながら準備が進められてきた。星野リゾートにとっても、文化財活用の枠組みそのものに踏み込む難易度の高い事業となる。

同社の国内企画開発プロジェクトマネージャーの石井芳明氏は、この事業の狙いを次のように話す。「奈良監獄は唯一無二の個性を持つ建物。これだけの迫力を持つ建物はなく、重要文化財の運営に携わる機会もなかなかない。大きなチャレンジではあるが、成功すれば文化財は守るために閉じるだけの存在ではなく、活かしながら次の時代につないでいくという選択肢を示すことができる。文化財活用のひとつのモデルケースになりえると考えている」

旧監獄を活用したラグジュアリーホテル

旧奈良監獄は、司法の近代化を目指した明治政府が国の威信をかけて建設した五大監獄のうち、唯一現存する建物だ。「江戸時代には鞭打ちなどの身体刑が行われていたが、近代になり、監獄に収容して自由を制限する自由刑が導入された」(石井氏)という。設計者は数多くの裁判所や監獄の建設に関与した山下啓次郎氏。監獄を近代化するために西洋の監獄を視察し、ハヴィランド・システムと呼ばれる監獄建築を取り入れたのが特徴だ。

中央の看守台から5つの舎房が放射状に伸びる設計で、少数の看守で全収容棟の囚人を一元的に監視できるというメリットがあった。星のや奈良監獄では、この5つの放射状に連なる建物のうち、第1、第2、第4、第5寮を宿泊棟として活用。中央の旧看守台は、宿泊棟全体を見渡す象徴的な空間へと再解釈される。

コンセプトは「明けの重要文化財」。「監獄という言葉の響きから刺激的な体験を想像するかもしれないが、監獄ホテルではない。あくまで国の重要文化財である旧監獄を活用したラグジュアリーホテル」と、星のや奈良監獄・総支配人の掛川暢矢氏は強調する。重要文化財に宿泊するという唯一無二の体験を、星のやブランドのサービスと環境で提供するのが狙いだ。「星のやなら、重要文化財でかつ広い敷地を持つ希少性を最大限活かせ、歴史的建築物の価値を体験価値へと転換できる」という。

客室の小窓から差し込む光

改修工事ではラグジュアリーさと快適性を担保しつつ、明治建築の素材感やスケールを体感できるよう、メリハリのある修繕が行なわれた。例えば、旧看守台上部のドーバー窓は高所から自然光を取り入れることで高さと広がりのある空間を演出。ここでは漆喰を補修し、照明で光を補うだけの最小限の改修にとどめている。客室の壁面は、修復の過程で漆喰の下からあらわになった100年以上前の手積みのレンガがむき出しになったままだ。客室の小窓からは光が差し込み、時間帯ごとに変わる陰影がレンガ壁や空間に映し出される。

少し手を加えたのは、整然と並ぶ客室の重厚な木製ドア。木の呼吸を妨げないよう自然素材の柿渋を使い、風合いを残しながら色むらを馴染ませている。また天井から延びるタイバーという装飾的なフレームもきれいに塗り直した。

客室は計48室ですべてがスイートルーム仕様で、1泊14万7000円から。客室タイプは3つあり、例えば「The 10-セル」タイプは、かつての独居房(約5平方メートル)を10房分連結してひとつの客室に仕立て、寝室、ダイニング、リビング、バスルームを設けた。別棟のダイニングでは、日本人の感性で進化した日本のフランス料理を楽しめる他、「星のや」らしい非日常を味わえる空間演出やアクティビティも計画中だ。

敷地内にはホテル開業に先行して4月27日に「奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート」が開館する。奈良監獄の歴史や日本の行刑の近代化を紹介し、監獄という非日常の場を通して来館者が自分自身を見つめ直す場にしたいとしている。

日帰り観光が中心の奈良では、滞在時間が短く、観光消費額が少ないという課題がいまだ顕在化している。そこで星のや奈良監獄では連泊、滞在の長さに着目。施設内外で奈良県の魅力をPRすることで「エリア全体を滞在型観光地へと転換できるきっかけ作りになれば」(掛川氏)と、課題解決に向けた施策にも取り組む考えだ。

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