PROFILE: 鈴木杏香(すずき・きょうか)/heart relation ロジア事業部マネジャー

「WWDJAPAN」2026年 1月5 & 12日合併号で、日本における下着市場の現状および、好調ブランドを紹介した。好調ブランドの一つとしてピックアップしたのは、小嶋陽菜がプロデュースするランジェリーブランド「ロジア バイ ハーリップトゥ(ROSIER BY HER LIP TO)」(以下、ロジア)。ここでは、紙面で伝えきれなかった鈴木杏香 heart relation ロジア事業部マネジャーのインタビューを紹介する。
「ロジア」は2022年9月にスタート。自社EC、ECモール、表参道の直営店「ハウス オブ エルメ(HOUSE OF HERME)」と有楽町マルイの直営店で販売するほか、主要都市のファッションビルや百貨店でポップアップイベントを開催している。25年3月にはフェムケアラインを発売し、ビジネスを拡大している。
ーーアパレルの「ハーリップトゥ」とは別にランジェリーカテゴリーを始めたきっかけは?
鈴木杏香 heart relation ロジア事業部マネージャー(以下、鈴木):「ハーリップトゥ」のインスタライブで、お客さまから「どんな下着を合わせればいいか?」という声が多くあったから。肩や背中が開いている服が多く、下着選びに悩む人が多く、フェミニンな世界観でランジェリーを作りたいという小嶋の想いもあった。機能性は必要だが、あまりさっぱりしたデザインだと気分が上がらない。そのギャップを埋めるブランドという発想だ。下着は直接肌に着けるアイテムなので、お客さまとの心理的な距離がより近く感じられる。
ーー「ロジア」のブランドコンセプトは?
鈴木:“女性らしさを選んでいこう”がコンセプト。“ロジア”は、“バラ色になる”という意味を込めている。
ーー女性が身に着けるランジェリーのコンセプトに、わざわざ“女性らしさを選んでいこう”とした理由は?
鈴木:ブランドがデビューした22年頃は、ジェンダーや多様性について語られることが多くなり、“女性らしさ”をアピールしづらいと感じていた。“女性らしさ”は悪いことではないし、その選択を肯定するブランドにしたいという考えからだ。デビュー時には、「背中を押された」など共感の声が多く寄せられた。
アパレルから派生した下着需要を形に
鈴木:ブランド設立時から販売している「ロジア」を象徴する“エブリディ エッセンシャル ブラ”がトップセラーだ。“エブリディ エッセンシャル ストラップレスブラ” “パーフェクト ヒップ ガードル”なども人気。“エブリディ エッセンシャル ブラ”は、ブランドコンセプトを体現する商品。当時、ミニマルなデザインの下着がトレンドだったが、「ロジア」は女性らしさにこだわり、シンプルにエレガントな要素を入れ、絶妙なバランスにこだわった。肌馴染みのいい色=ベージュというイメージがあるが、気分が上がる要素を出したいと”ヌードローズ”というベージュとは一味違うオリジナルカラーにこだわったのも響いたと思う。
ーーデビュー時からの売上高の推移は?
鈴木: 24年度の売上高は初年の約3倍になり、前年比70%増だった。コロナ禍を機にECで下着を買うことに抵抗がなくなった。そのタイミングとブランドの立ち上げが重なったのが追い風になった。25年3月にスタートしたフェムケアラインが非常に好調で、それが上乗せになった。ランジェリーも、SNS発信が奏功し、“エブリディ エッセンシャル ストラップレスブラ”などが好調だった。
ーー販路や売り上げ比率は?好調の要因は?
鈴木:売り上げ比率は、自社ECが約65%、その他が約35%。好調理由は、昨年には24年にスタートした楽天やゾゾタウンなどのECモールの販売が軌道に乗ったから。購入動機に影響するクチコミが蓄積され、SNS戦略と連動して売上高を伸ばした。また、昨年、目的別に購入しやすくするためにMDの構成を2軸に分けた。“エブリディ エッセンシャル ブラ”や“パーフェクト ヒップ ガードル”などは、機能性がありどんな服にも合わせやすく、1週間毎日着用できるというコレクション。エクスクルーシブコレクションは「ロジア」の世界観をギュッと詰めたラインで価格帯も高い。
マーケティング思考で“今欲しい”を届ける機動力
ーー新作を出すタイミングは?
鈴木:シーズンは関係なく、春夏、秋冬コレクションとして発表はしない。ポップアップのタイミングで新作・新色を発売し、ECでも販売をスタートする。アパレルの「ハーリップトゥ」は、2週間ごとに新作や新色を出すサイクルで、「ロジア」も同様の方法をとっている。お客さまが今欲しいものを、機動力を生かしてスピーディに商品化し、SNSで発信し購入に結びつけている。春夏・秋冬と大きな山を作るのではなく、こまめに売れ筋動向やお客さまの声を反映して、軌道修正できるのがわれわれの強みだ。10~15人という小さなチームで、分業化せず、全員で商品企画から販売、SNS発信まで全て行う。小嶋とのミーティングも、メーカーとの商談も毎回全員が出席する。チーム全員が全てを把握しているからできることだ。
ーー従来のアパレルブランド違う運営ができるのは?
鈴木:共同経営者はもともとIT業界の人間で、役員もIT出身者が多い。そのため、マーケティング思考が強い。そのため、リーチするべき消費者に情報が届いて、売り上げに結びついている。ランジェリーやインナーを買うきっかけは、短いスパンでこちらで作ればいい。例えば、冬用のあったかインナーは、寒いと感じて購入する人が多いはずだ。だから、インナーの発売日を一番気温が低い日に設定するなど、気温に合わせて調整する。それにSNSに連動させて消費者の目に商品を触れさせることで購入につなげている。そういったきっかけ作りを常に考えている。それに対応できるスケジュールで商品開発・生産できるのは、小さなチームで関係性が密だから。最初のサンプルと完成品が異なる場合もあるが、全スタッフが開発経過を見ることで、ECのうたい文句やインスタライブでも熱量を持って商品をアピールできる。
ECを軸に「良いものを多くの人に届ける」
ーー今後の成長戦略は?鈴木: 良いものを多くの人に届けていきたい。その結果、ビジネスが大きくなるのが理想だ。ブランドの世界観を直接届けられるのは、ポップアップや直営店など。だから、今後はブランドの体験ができる動線を増やして、その体験を共有してもらい、「体験したい」と思わせるような連鎖を作っていきたい。直営店を増やすことも視野に入れ、ポップアップを開催する地域も増やしていきたい。とはいえ、ビジネスの軸がECである事に変わりはない。より多くの人に届けるためにはECが最適だ。ECで下着を買いやすい工夫を今後も追求していく。
ーー現在の下着市場のトレンドや消費者の購買をどう見る?
鈴木:「ファッションを楽しみたい」という発想で下着を購入する人が多い。だから、下着とファッションとを連動させてもいいと思う。もう一つ下着に求められるのは、スタイルアップ。ノンワイヤーが主流だが、スタイルアップできるアイテムに需要がシフトしていると感じる。ラクな下着かスタイルアップする下着かの二択ではなく、その日の気分や体調、ファッションに合わせてランジェリー・インナーを選ぶ時代だ。「ロジア」も、着心地重視の日には“エブリディ エッセンシャル ブラ”、スタイルアップしたい日は“ビービーブラ”など、ブランドの中で使い分けを促すようにしたい。