
「シロ(SHIRO)」は、店舗スタッフが着用し廃棄予定だった制服に、天然素材で染め直し新たな命を吹き込む取り組みを行っている。この取り組みは3月の広島ミナモア店での藍染制服に続くもので、着古したり汚れたりした制服にクリエイティブを加えることで、世界に1枚だけの個性あふれるユニホームを作ることを目指した。6月末にオープンした渋谷PARCO店では、染め直されたさまざまな色の制服の中から、スタッフが自身の好きな色を選んで着用している。他店舗では着用テストも兼ねて店長から着用を開始しており、すべての店舗スタッフへの展開は徐々に行っていく予定だ。今後は、染め上がった制服にワッペンやパッチワークを施し、さらに個性的な1枚に仕上げることも検討している。
天然染料で着古した制服を染める
今回の取り組みは、ブランドが2023年に表明した廃棄物ゼロを目指す「シロ 15年目の宣言」の延長線上にあるもの。これまでも使用済みガラス容器を回収して再利用する実証試験や衣類の回収などを継続的に行ってきた。「新しく作るのではなく、今あるものに価値を見出し、使い続ける」という想いから制服の染色に挑戦した。
その思いを形にしているのは、北海道札幌市で着物の染色やクリーニングを行っているほか、カジュアル着物ブランド「シブンノサン(SHI BUN NO SAN)」をプロデュースする野口染舗の野口繁太郎氏。仕立て直しや染め直しをして大切に使い切る着物を“日本人のものづくり”の原点として捉えている野口氏と、廃棄物ゼロを目指す「シロ」の理念がマッチしタッグを組んだ。
染色には野口染舗が用意した3種の素材に加え、小樽のワイナリーから出たブドウの果皮、規格外のコーヒー豆、間伐された白樺の枝のほか、「シロ」の製品製造過程で生まれた白樺とヨモギの廃液など7種類の天然素材を使用しているが、天然染料で着古した制服を染める作業は簡単ではなかったという。制服には油染みやメイク汚れが付着しているうえ、生地にポリエステルが30%含まれているため天然染料が浸透しづらいという問題があった。約3か月間ドライクリーニングや下処理を施し、濃度を上げて染める試行錯誤を重ねて完成したという。
「これまで廃液は使い道がなく廃棄せざるを得なかった。しかし、野口さんはこの廃液を“宝””だとおっしゃってくださった。視点を変えることで廃棄するものから活用するものへと一瞬で生まれ変わったのは、諦めることなく何度も何度も挑戦し続けてくださった野口さんによるものであり、私たちにとっては目から鱗の大発見だった」とブランドは述べている。