ファッション

貝印の2025年度帽子コンテスト 前年の倍の応募数の頂点に文化服装学院1年生の大倉さん

グローバル刃物メーカーの貝印は11月6日、2025年度「カイ ハット&ヘッドピース コンペティション(KAI HAT & HEAD-PIECE COMPETITION)」の最優秀賞授賞式を開催した。4年目となる今回のテーマは「越境」。14の国と地域から、前回比130%増となる応募が集まり、その頂点に大倉小枝さんの「流動」が選ばれた。審査員特別賞には、チェンシィー恵蒔ルイースさんの「開花」が選出された。

同コンテストは、裁縫ハサミの開発・製造に40年以上携わる貝印が2022年に立ち上げた。そのきっかけは、フランス国家最優秀職人章を持ち、パリを拠点にラグジュアリーブランドのヘッドピースなどを手掛ける日爪ノブキデザイナーと8年以上もの縫製ハサミ「O(オー)」の開発過程において、ファッションや帽子業界の活性化を目的にスタートすることとなった。

審査員には、栗原の栗原亮社長、貝印の鈴木曜最高クリエイティブ責任者兼最高マーケティング責任者、日爪デザイナーをはじめ、今回は田中文江「フミエ タナカ(FUMIE TANAKA)」デザイナーと奈良裕也 「シマ(SHIMA)」ヘアメイクアップアーティスト兼アートディレクターが新たに加わった。

文化服装学院帽子デザイン科1年生の大倉さんは、テーマの「越境」を時間になぞらえて「流動」を制作したという。「形あるものが時間とともに崩壊へ向かう中で、風になびくこの帽子は、時間が止まった瞬間を切り取っている。当初は“越境”とは、普遍的な時間を止めることにあると思っていたが、制作を進めるうちに、この帽子の形そのものに強いエネルギーを感じ、一瞬に宿る力こそが“越境”の本質なのだと気付いた」と語った。

トロフィーを手渡した田中デザイナーは、「『流動』というタイトルの通り、360度どの角度から見ても動きと力強さがあり、同時に繊細さも感じられる。服を作りたくなる衝動を与えてくれるほど感動した」と称賛した。

授賞式後半には、丸山敬太「ケイタマルヤマ(KEITAMARUYAMA)」デザイナーと日爪デザイナー、ファッションジャーナリストの向千鶴によるトークセッションが行われた。今回のコンテストについて丸山デザイナーは、「帽子はひとつの“宇宙”のようで、五感をすべて使って生み出されるもの。どの作品も非常に完成度が高く、刺激を受けた」とコメント。学生時代に“コンテスト荒らし”と呼ばれた2人のデザイナーが、当時の挑戦とそれが現在のキャリアに与えた影響についても語り合った。

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