「バーバリー(BURBERRY)」が若返った。昨シーズンまで退任の噂の渦中でショーを発表したダニエル・リー(Daniel Lee)だが、その命題であるブランドの若返りを見事に達成したように感じた。
現地時間の9月22日、王立公園ケンジントン・ガーデンズのパークス・フィールドを舞台に発表した2026年春夏コレクション。珍しく秋晴れが続いた今季のロンドン・ファッション・ウイークを象徴するかのように、会場には青空の絵が描かれたテントが張られ、地面には来場者のシューズを容赦なく汚す赤土が敷き詰められていた。
ブラック・サバス(Black Sabbath)の「Planet Caravan」をBGMに、モデルたちはトレンチコートを無造作に手に持ち、ショートブーツで力強く土を踏みしめて歩く。その姿を見て、汚れなど気にせず、我が道を行く、その潔いアティチュードこそ、今季リーが引き出した「バーバリー」の新しい一面だと納得した。
ファッションと音楽の関係に着目
リーが着目したのは、ファッションと音楽の関係性、そしてカルチャーを作ってきた音楽アイコンたちのスタイルだ。バックステージでリーは、初めて訪れた英国の音楽フェス「レディング&リーズ・フェスティバル」ついて触れ、「あれが音楽カルチャーに触れた最初の思い出だった」と話した。オジー・オズボーン(Ozzy Osbourne)の死をきっかけに、父の影響で親しんだブラック・サバスやAC/DCの音楽を再び聴き込んだこともインスピレーションにつながったという。ウォッシュドデニムのセットアップにビートルズ(The Beatles)を想起させるプリントTシャツを合わせたルックも登場するなど、随所に1960年代ブリティッシュ・カルチャーへのオマージュをにじませた。
キーシルエットは、ショートブーツに合わせるAラインのミニドレスや細身のテーラードスーツ。ドレスはクロシェ編みやビーズで仕立てたり、きらびやかなスパンコールで装飾したり、粗野な雰囲気のなかにも、ラグジュアリーに欠かせない「クラフト」や「華やかさ」を忍ばせる。
リーはラグジュアリーファッションの本質とは、「感情や技術が込められた服をつくること」だと話す。「世界には素晴らしいハイストリートブランドがたくさんあるが、ラグジュアリーの違いはスキルやノウハウにこそあると思う」と続け、同ブランドの代名詞である防水加工は、デニムやコットン、ラフィアといった新しい素材のレインコートに施して伝統を現代につなげた。バッグは柔らかなシルエットに進化した"ハムステッド(Hampstead)"バッグや、ブライドルバッグに馬具から着想を得たハンドル付きのトートバッグなどが登場した。
また際立ったのは、鮮やかなカラーパレットだ。オレンジとグリーンが交差するタータンチェックや、ペイズリー模様をレーザーカットで浮かび上がらせたブラウンのトレンチコートに差し込むフューシャピンクのストールなど、大胆な配色もまた若々しいエネルギーを感じさせた。
ロンドン・コレクションの中で、唯一のメガブランドである「バーバリー」のショーは、毎シーズン多くのセレブリティが来場し、そのスケール感で他のブランドとは一線を画す。だが今回は、ロンドンの若手にも通ずる勢いとエネルギーがあり、イギリスらしい、ブランドのカルチャー的側面を思い出させてくれた。