バーバリー(BURBERRY)の2025年3月期決算は、売上高が前期比17.1%減の24億6100万ポンド(約4749億円)だった。営業損益は前年の4億1800万ポンド(約806億円)の黒字から300万ポンド(約5億7900万円)の赤字に、純損益は前年の2億7100万ポンド(約523億円)の黒字から7500万ポンド(約144億円)の赤字となった。なお、営業損失には事業再建用の特別費用として2億9000万ポンド(約559億円)が含まれており、これを除いた調整後営業利益は同93.8%減の2600万ポンド(約50億円)だった。
部門別での売上高は、バッグなどのアクセサリーが同20.3%減の8億4100万ポンド(約1623億円)、ウィメンズは同16.5%減の7億1800万ポンド(約1385億円)、メンズは同13.1%減の7億3200万ポンド(約1412億円)、子ども服を含むその他の部門は同30.2%減の1億400万ポンド(約200億円)と全ての部門で2ケタ減収。
地域別で見ると、アジア太平洋地域が同18.9%減の10億4300万ポンド(約2012億円)、EMEIA(欧州・中東・インド・アフリカ)は同17.2%減の8億4200万ポンド(約1625億円)、南北アメリカは同15.4%減の5億1000万ポンド(約984億円)と、やはり全ての市場で減収となった。
なお、24年度における既存店ベースでの小売りの売上高は同12%減で、24年4~9月期(上半期)で見ると前年同期比20%減だったが、24年10月~25年3月期(下半期)は同5%減と回復基調にあるという。
1700人の人員整理などコスト削減を推進
ここ数年、バーバリーは一段階上のラグジュアリーブランドへの転身を図りつつも、マクロ経済の悪化や社会情勢の変化などもあり、24年3月期決算は減収減益となるなど苦戦。22年4月から同社を率いていたジョナサン・エイクロイド(Jonathan Akeroyd)前最高経営責任者(CEO)は24年7月に退任し、後任としてコーチ(COACH)やマイケル・コース(MICHAEL KORS)のトップを務めていたジョシュア・シュルマン(Joshua Schulman)CEOが同7月に就任した。
同氏は11月、ブランドの魅力を再燃させ、長期的な価値創出や成長を促す事業戦略“バーバリー・フォワード(Burberry Forward)”を策定。“タイムレスな英国ラグジュアリー”への注力や、さらなるコスト削減策などが盛り込まれている。同社は24年に4000万ポンド(約77億円)のコスト削減計画を打ち出しているが、今回それをさらに拡大し、27年までに1億ポンド(約193億円)の削減を目指すことを明らかにした。その一環として、本社を中心にグローバルでおよそ1700人の人員整理を発表。これは全従業員の約20%に当たる。同社はまた、英北部のヨークシャー地方カッスルフォードにある、トレンチコートなどを製造している工場の夜勤シフトを廃止する。これは過剰生産の防止とコスト削減の両方を目的としているが、工場の従業員の約25%が影響を受けるという。
こうした事業戦略やコスト削減策などを市場は好感し、バーバリーの14日の株価は前日終値比17.0%高の9.67ポンド(約1866円)をつけた。
ダニエル・リー=チーフ・クリエイティブ・オフィサーの進退は?
さまざまな変化が起きているバーバリーだが、クリエイティブ面での変更は予定しておらず、22年10月に就任したダニエル・リー(Daniel Lee)=チーフ・クリエイティブ・オフィサーは続投する。シュルマンCEOは、「ダニエルと私は、共に『バーバリー』を前進させることにコミットしている。彼は就任以来、タイムレスな英国ラグジュアリーを比類のない表現で提供し続けている」と高く評価した。
同氏はまた、アナリスト向けの説明会で、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領政権による関税の引き上げに関して「米国市場が当社の売り上げ全体に占める割合は約19%なので、競合と比べると影響は少ない」としながらも、「価格調整の意味もあり、1ケタ台半ば程度の値上げを行った」と説明。また、売り上げの30%程度を占めるアジア太平洋地域により依存しているとの見方を示した。