「WWDJAPAN」には美容ジャーナリストの齋藤薫さんによる連載「ビューティ業界へのオピニオン」がある。長年ビューティ業界に携わり化粧品メーカーからも絶大な信頼を得る美容ジャーナリストの齋藤さんがビューティ業界をさらに盛り立てるべく、さまざまな視点からの思いや提案が込められた内容は必見だ。(この記事は「WWDJAPAN」2025年5月26日号からの抜粋です)
生成AIの導入で仕事の職種がどんどん減っていき、美容の世界でもいろいろ侵食されそうという話題を以前このコラムでも取り上げたが、その時はまだ可能性のレベルだったのにアッという間にそれが現実になっていて、その速さに今、驚いている。化粧品のリリースやキャプションなど、単純な内容ならばAIで済んでしまうのは、都合の良い人と悪い人が極端にいる話だし、いかなる文章もこれはAIが書いたのでは?と疑われる時代が来るのかと思うとちょっと背筋が寒くなるが、もはやそれどころではない。
いつの間にか、化粧品の開発にもAIが導入されていて、例えば今期は「コスメデコルテ(DECORTE)」の“AQ 毛穴美容液オイル”が、世界で初めて量子コンピューターが割り出した処方を採用して、 話題を集めた。膨大な成分群から理想の成分の選定、配合量や組み合わせの算出も任せており、毛穴ケアという難易度の高いジャンルだからこそ、この判断が見事に功を奏した形。なんと1000 億通り以上の組み合わせから割り出したのはまさに人知を超えた処方なのだ。
また、感触の官能評価にも今やAIが使われ出していて「しっとり」や「さわやか」など最適な組成を割り出すのは、AIにとってはお手のもの。もともとは、熟練の開発者が自らの肌を使って、膨大な経験と自らの勘を頼りにひねり出したものを、 AIがいわば一瞬でやり遂げてしまう時代が来ているのだ。
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