サステナビリティ

「グッチ」親会社ケリングが日本のスタートアップを表彰 最優秀賞にファーメンステーション

「グッチ(GUCCI)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」などを擁するケリング(KERING)は、サステナビリティを推進するスタートアップ企業の発掘・推進を目的とした「ケリング・ジェネレーション・アワード(KERING GENERATION AWARD)」の授賞式を3月13日に東京・虎ノ門で開催した。日本企業を対象に開催したのは今回が初。ファイナリスト11社の中から、発酵技術で循環型社会の構築を目指すファーメンステーションが最優秀企業に輝いた。2位には有機フッ素化合物「PFAS」を使わない透湿防水性の繊維素材を開発したアンフィコ(AMPHICO)、3位に藻類を活用した製品開発を手掛けるアルガルバイオ(algal bio)、特別賞にバイオマス微生物を原料にしたインディゴ染料を開発したマイクロバイオファクトリーが選ばれた。

上位3社には、長期的なメンターシッププログラムをはじめ、グループ傘下ブランドのトップまたヨーロッパを拠点とするテキスタイルメーカーなどとの意見交換の機会、ケリングがパートナーを務める世界最大級のサステナビリティサミット「チェンジ ナウ」への出展権などを授与。また最優秀賞企業には賞金として1000万円を贈った。

フランソワ・アンリ・ピノー会長兼CEOと関山和秀スパイバー社長が対談

授賞式ではフランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)=会長兼最高経営責任者(CEO)が登壇。同社が研究開発に協力してきたスタートアップで、人工タンパク質「ブリュード・プロテイン(BREWED PROTEIN)」を製造するスパイバーの関山和秀社長と「サステナビリティに取り組む情熱」をテーマに対談した。

ケリングは、グループ全体で温室効果ガスの絶対排出量を2035年までに21年比で40%削減する野心的な目標を掲げる。ピノーCEOは、この目標について触れ、達成のためにはまだ世の中に存在しないイノベーションの力が必要だと強調。「既成概念にとらわれず、既存のビジネスルールを問う視点を持ち続けてソリューションを導き出してほしい」と参加者に呼びかけた。

関山社長はスパイバーのこれまでを振り返り、「大きく成長できた瞬間は、決して想定していたものではない。むしろまったく予期していなかった危機に直面したときに、突然訪れたチャンスによって切り抜けてきた。未来を見据え、信念を持ち続ければ機会は訪れる」と来場したスタートアップ企業たちを励ました。

1位に選出されたファーメンテーションは、規格外の農産物や飲料・食品工場で排出される製造残さなどの未利用資源を、独自の発酵技術で機能性バイオ原料へと転換する技術を有する。例えば、米ぬかなどを原料に用いたボディーケア商材や、ワインの搾りかすから製造するエタノールを用いたアロマ雑貨などに応用できる。企業との協業事例も多数持つ。「ポーラ(POLA)」は同技術によりゆずの未利用部から開発した保湿成分を用いた製品を開発。亀田製菓は代表商品「ハッピーターン」の製造過程で生じる規格外品を原料に、発酵アルコール(エタノール)を精製。「ハッピーターンから作った除菌ウェットティッシュ」を企画した。また、ファーメンステーションは2022年に、「Bコープ」認証を取得している。

2位のアンフィコは、欧米で規制が進む有機フッ素化合物「PFAS」に着目。従来「PFAS」が多用されていたアウトドアアパレル向けの機能性透湿防水テキスタイルをPFASフリーで実現する技術や、水汚染などの環境汚染を大幅に削減する無水着色技術を開発した。

3位のアルガルバイオは、微細藻類の育種、量産、培養技術を有し、持続可能な代替原料として提案する。同社によると、藻類は森林・農地・食物生産に影響を及ぼさず培養でき、光合成で二酸化炭素を固定する能力に優れている利点を持つ。また、アンチエイジングやUV吸収、保湿などに役立つさまざまな機能性成分と天然色素を含有し、ビューティーやファッションの分野での活用が期待できるという。

ファイナリスト企業はほかに、ラグジュアリーに特化したリセールプラットフォームのアーカイブストック(ARCHIVESTOCK)、生産工程の生地廃棄ゼロを目指すデザインシステムのシンフラックス(Synflux)、繰り返し利用できる梱包材プラットホームのコンベイ(comvey)、AIを活用したオンライン・クローゼットのアプリを核とするスタンディングオベーション(STANDING OVATION)、植物廃棄物を原料とした内装を製造するスペースワスプ(Spacewasp)、余剰化粧品資源から工業資材を製造するモーンガータ、繊維やフィルム素材の多孔化技術を使った高機能性素材を製造するファイバークレーズ(FiberCraze)が選ばれた。

同アワードは、ファッションとビューティー業界のサステナビリティを推進するイノベーションを持ち込むスタートアップ企業を発掘・育成することを目的に、2018年に中国で発足。これまでにサウジアラビアでも開催した。日本初開催となった今回は、スタートアップ成長支援の専門部隊CIC インスティチュートがサポート。審査員は、ケリングのフランソワ・アンリ・ピノー=会長兼CEOやマリー=クレール・ダヴー(Marie-Claire Daveu)=チーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)兼渉外担当責任者らボードメンバーに加え、渡辺貴生ゴールドウイン社長や山崎智士サティス製薬CEOら9人が務めた。

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