ファッション

LVMHプライズ、25年度セミファイナリストに日本の「ソウシオオツキ」と「ピリングス」

LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は、12回目となる2025年度「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE以下、LVMHプライズ)」のセミファイナリスト20組を発表した。中には、セミファイナル2度目となる大月壮士デザイナーによる「ソウシオオツキ(SOSHIOTSUKI)」、初選出となった村上亮太デザイナーによる「ピリングス(PILLINGS)」の日本2ブランドが名を連ねる。

「ソウシオオツキ」を手掛ける大月は、1990年千葉県生まれ。文化服装学院メンズウェア学科卒業後の15年に自身のメンズウエアブランドを立ち上げる。2年目となる16-17年秋冬の東京コレクション(現・楽天 ファッション ウィーク東京)で「アキコアオキ(AKIKOAOKI)」「ケイスケヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)」などと、合同ショー“東京ニューエイジ”に参加。同年の「LVMHプライズ」のショートリストにノミネートされた。19年には「Tokyo新人デザイナーファッション大賞」を受賞。23-24年秋冬の東コレに、7年ぶり2度目のショーを行い、新たな節目を迎えた。「ソウシオオツキ」のデザイン哲学は、大月の日本の古典芸能に対する興味から生まれている。細やかな職人技と熟練した仕立てによって、日本特有の伝統的アイデアをファッションに昇華させている。

「ピリングス」の村上は、1988年大阪府生まれ。上田安子服飾専門学校を卒業後、山縣良和が主宰する「ここのがっこう」でさらにファッションを学ぶ。山縣の「リトゥンアフターワーズ(WRITTENAFTERWARDS)」のアシスタントを経て、2014年春夏に母の村上千明とブランド「リョウタムラカミ(RYOTAMURAKAMI)」をスタート。16年春夏から東コレに参加。20年、ブランド名を「ピリングス」に変更し、単独で手掛け始める。ニッティング・デザインスクール「アミット(AMIT)」をスタート。21年に「東京ファッションアワード 2022」を受賞。24年3月、サザビーリーグと事業譲渡契約を締結した。「ピリングス」の原点はまさに母が作ってくれた手編みのセーター。同級生にからかわれながらも、セーターを愛用していた村上にとっては愛情深い意味を持ち、同じように心のこもったモノを作りたいとデザイナーとして決意した。またニットの職人やメーカーに敬意を表し、彼らが活躍できるような環境をつくることを目指している。

アフリカや中東のブランドが初選出

ファイナリストは欧米やアジアに加え、13年の創設以来初となるエジプトとガーナ、サウジアラビアを含む15カ国からのブランドが発表された。「ソウシオオツキ」に加え、シンシア・メルヘジ(Cynthia Merhej)による「ルネッサンス・ルネッサンス(RENAISSANCE RENAISSANCE)」も21年度に続き2度目の選出となっている。なお、今年度の応募数は2300通を超えるものの、2500通以上だった過去最多の前年度に比べると減少している。

25年度「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ」のセミファイナリストのブランド名とデザイナー名、国籍は以下の通り。

「アランポール(ALAINPAUL)」/アラン・ポール、フランス
「オールイン(ALL-IN)」/ベンジャミン・バロン(Benjamin Barron)、アメリカ&ブロール・オーガスト・ヴェスタボ(Bror August Vestbo)、ノルウェー
「ボイェ・ドウ(BOYEDOE)」/デイビッド・ボイェ・ドウ・クシ(David Boye-Doe Kusi)、ガーナ
「フランチェスコ ムラノ(FRANCESCO MURANO)」/フランチェスコ・ムラノ、イタリア
「ジョシュ タフォヤ(JOSH TAFOYA)」/ジョシュ・タフォヤ、アメリカ
「ケーエムエル(KML)」/ アハマド・ハサン(Ahmed Hassan)、サウジアラビア
「メルート トールゲン(MERUERT TOLEGEN)」/メルート・トールゲン、アメリカ
「エムエフペン(MFPEN)」/シグルド・バンク(Sigurd Bank)、デンマーク
「ニクラス スコヴガード(NICKLAS SKOVGAARD)/ニクラス・スコヴガード、デンマーク
「ペナルティメイト(PENULTIMATE)」/シャン・ガオ(Xiang Gao)、中国
「ピリングス」/村上亮太、日本
「ルネッサンス・ルネッサンス」/シンシア・メルヘジ、レバノン
「シニード オドワイアー(SINEAD O’DWYER)」/ シニード・オドワイアー(Sinead O’Dwyer)、アイルランド
「ソウシオオツキ」/大月壮士、日本
「スティーブ オー スミス(STEVE O SMITH)」/スティーブ・オー・スミス、イギリス
「トル コーカー(TOLU COKER)」/トル・コーカー、イギリス
「トリシジュ(TORISHEJU)」/トリシジュ・ドゥミ(Torisheju Dumi)、イギリス
「ヤスミン マンスール(YASMIN MANSOUR)」/ヤスミン・マンスール、エジプト
「ヤングアンサン(YOUNG N SANG)」/イ・サンリム(Sang Lim Lee)&ホン・ヨンシン(Youngshin Hong)、韓国
「ゾマー(ZOMER)」/ダニアル・アイトゥガノフ(Danial Aitouganov)、オランダ

2回目の「サヴォアフェール賞」受賞者に期待

セミファイナリスト20組は、25-26年秋冬パリ・ファッション・ウイーク期間中の3月5〜6日にショールームでプレス関係者と審査員の前でプレゼンテーションを行い、8組がファイナリストとして選出される。またその中から、グランプリと準グランプリにあたる「カール・ラガーフェルド賞」、「サヴォアフェール賞」がそれぞれ選ばれる予定だ。また5〜9日には公式サイトから一般投票を受け付ける。

グランプリ受賞者は賞金40万ユーロ(約6300万円)のほか、サステナブルな商品開発やコミュニケーション技術、著作権、企業法務、マーケティングや生産・財務管理などについて、LVMHチームによる指導を受けることができる。「カール・ラガーフェルド賞」と「サヴォアフェール賞」の受賞者は、それぞれ賞金20万ユーロ(約3100万円)とLVMHチームによる1年間のメンターシップを受ける権利を獲得する。

デルフィーヌ・アルノー(Delphine Arnault)=クリスチャン ディオール クチュール会長兼最高経営責任者は、「テーラリングへの新たな可能性に加え、ハンドクラフトによる装飾や大胆なオケージョンドレススタイルなど、世界中の新進デザイナーが発揮する魅力あふれるデザインが多く見られた。チャレンジする精神や審美眼を高く評価したい。また、2回目となる『サヴォアフェール賞』と同じ、クラフツマンシップや革新性、持続可能性の重要性を捉えた視点にも期待している」と語った。

「LVMHプライズ」は同グランプリに加え、3月30日までファッションスクール卒業生を対象とした作品を募集している。3人が表彰される予定で、それぞれの受賞者と学校に1万ユーロ(約150万円)と、LVMHグループが擁するメゾンのデザインスタジオで1年間働く権利が授与される。

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