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ロレアルやエスティ ローダー カンパニーズなど、海外美容企業の決算から見るスキンケアが好調な理由

 海外美容企業の2019年度通期および半期決算が発表された。引き続き全世界的にスキンケアが好調で、各社軒並み売り上げ、利益を拡大した。

 通期決算(2019年6月期)を発表したエスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)は、売上高が前期比8.3%増の148億6300万ドル(約1兆5754億円)、営業利益が同12.5%増の23億1300万ドル(約2451億円)、純利益が同60.6%増の17億9400万ドル(約1901億円)と増収大幅増益だった。売り上げをけん引したのは、スキンケアで売上高は同17%増の65億5100万ドル(約6944億円)と2ケタの成長となった。

 その好調の要因は、スキンケアトレンドが後押しするがそれ以外にも理由はある。「10年前から現在のスキンケアブームを予測し、イノベーションに投資してきた」とファブリツィオ・フリーダ(Fabrizio Freda)社長兼最高経営責任者。新製品の開発に加え、ロングセラー製品のより良い改良などを推し進め、さらには新旧問わず戦略製品の積極的なプロモーションを実施。それによりスキンケアが好調に推移、全体の売り上げを押し上げた。「09年から全社売り上げは毎年平均で8%伸び、その結果70億ドル(約7420億円)から150億ドル(約1兆5900億円)に倍増した」という。

 製品では、ロングセラーの「エスティ ローダー(ESTEE LAUDER)」の「アドバンス ナイト リペアSR コンプレックス II」や「ドゥ・ラ・メール(DE LA MER)」の「クレーム ドゥ・ラ・メール」の強化で、より強固な売り上げを確保する一方で、「クリニーク(CLINIQUE)」から発売した初のカスタマイズスキンケアは、新たな層の獲得で全体の売り上げの底上げにつながった。

半期決算発表企業もスキンケア好調

 スキンケアの好調は、グローバル売り上げナンバーワンのロレアルの19年の上半期(1〜6月)決算にも表れている。売上高が前年同期比10.6%増の148億1150万ユーロ(約1兆7329億円)、営業利益が同12.1%増の28億8840万ユーロ(約3379億円)、純利益が同2.4%増の23億3270万ユーロ(約2729億円)の増収となった。

 同社の特徴は、「ランコム(LANCOME)」や「キールズ(KIEHL'S)」などのラグジュアリーブランドだけでなく、「ロレアル パリ(L’OREAL PARIS)」や「ガルニエ(GARNIER)」などのマス向けブランドもスキンケアが好調だった点だ。これは、これまでメイク製品に注目していた若年層のスキンケアへの関心の高まりを受けたものと予想できる。その流れでいえば、スキンケアブランドを中心としたアクティブコスメティックス事業部の「ラ ロッシュ ポゼ(LA ROCHE-POSAY)」(同2ケタ成長)や、「ヴィシー(VICHY)」「スキンシューティカルズ(SKINCEUTICALS)」「セラヴィ(CERAVE)」が好調に推移したのは当然だろう。

 そのほかユニリーバ(UNILEVER)の19年上半期決算も、スキンケアブランド「ダーマロジカ(DERMALOGICA)」「レン(REN)」などを擁するプレステージブランドが2ケタ成長と伸長する。

“補正”アプリ登場でスキンケアに投資

 戦略の背景には、グローバルなスキンケアトレンドが大きく影響していることは事実だ。これまで欧米では、メイクアップにお金をかける人が多く、スキンケアに対する関心は低いと言っても過言ではなかった。それが近年のグローバルなウエルネスブームを受け、体だけに留まらず、肌そのものへの健康をも意識。加えて、デジタルネイティブの若年層は、アプリなどで簡単に“補正”ができ、フィルターを掛けたような“完璧な肌”への憧れが強まった。そこで注力したのがスキンケアで、投資する人が増えてきた。加えて、エスティ ローダー カンパニーズのように、それを見据えた戦略が、各社でスキンケアの拡大、売り上げの拡大につながっている。

 一方で、メイクアップはプレステージブランドを取り扱う大手企業は堅調に推移したものの、レブロン(19年1〜6月期決算は売上高が同3.8%減の11億2340万ドル、約1190億円)などのマス向けメイクアップ市場は苦戦する。メイクアップは、ダウントレンドと見ていたが、「グロシエ(GLOSSIER)」「カイリー・コスメティックス(KYLIE COSMETICS)」「カラーポップ(COLOURPOP)」をはじめとする、デジタルを活用したブランドが人気を得ており、ダウントレンドではなく、購買の仕方が大きく変わったとことが、既存大手に影響を及ぼした。これら人気ブランドは、若年層をターゲットにインフルエンサーと積極的にコラボしたり、SNSを通じて消費者とコミュニケーションを取ったり、さらには消費者から発信されるトレンドをいち早くキャッチし製品に落とし込んだり、ターゲット層の心をしっかり掴んでいる。このスピード感に大手企業がついていけず、売り上げを落としているようだ。

 スキンケアブランドの中でも、こういったデジタルネイティブなブランドが出始めている。好調の大手企業のスキンケアビジネスも、うかうかとしてられないのが現状。スキンケアといえども、いかにスピーディーにトレンドを掴み、それに対応し、さらには消費者とのコミュニケーション力を発揮できるかが、次のステージの成功の鍵になってきそうだ。