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福井発世界トップの“リボンの騎士”SHINDO、4万種が強み

 今年で創業50周年を迎える、福井県あわら市に拠点を置くSHINDOは、ラグジュアリーブランドからグローバルスポーツブランドまでリボンやテープを供給しており、ファッションデザイナーならなじみのあるブランドだ。しかし、そのユニークなビジネスモデルを知る人は少ない。

強みは多品種、小ロット対応、短納期

 同社はもともと、アパレルやスポーツメーカーからの受注生産を軸にビジネスを行っていたが、発注量に左右されることが多く安定的なビジネスを行うことが難しかった。そこで2000年に立ち上げたのが、オリジナルブランド「S.I.C.」だ。

 「S.I.C.」はプレーンな無地のテープ、意匠性のあるブレード、チロルテープ、ストレッチテープなどをそろえ、品番数は722点、色や幅を合計すると4万1069点にも及ぶ。その全製品の在庫を持ち、必要に応じて小ロット・短納期で対応できる点を強みにビジネスを拡大してきた。サンプル帳や写真をそろえるだけでなく、東京・原宿、フランス・パリ、アメリカ・ニューヨーク、そして中国は上海と香港にショールームを構え、それらを介して発注することができる。リボンやテープ4万種をそろえて即日出荷にも対応できるメーカーは世界的に見てもほかにはない。繊維事業を率いる堀健一・執行役員兼営業部門長は「通常は1反(通常は30mが多い)、サンプルカットなら1mの小ロットから対応できる点が強みだ。またメーカーであるわれわれは、糸を仕入れて、その後の編み、織り、染色、2次加工まですべて自社工場で行い、急な発注にも対応できる」と胸を張る。

海外戦略強化 売上高を25年に今の2倍に

 「S.I.C.」は特に海外市場が伸びており、中国ではアパレルの高級志向が始まって品質が重視されるようになり、13~18年は前期比約8%増をキープしている。欧州はこの2~3年が前期比5%増、米国も5~8%増の成長を続けている。国内が厳しいとはいえ、国内の繊維事業は4期連続で前期超えだった。19年は成長が鈍化しているが前年並みを維持している。

 今後はさらに海外戦略を強化する。欧州と米国の現地法人のトップも務める堀執行役員は「海外の売上高を25年には今の2倍、35年には今の3倍にする」と強気だ。その経緯を堀執行役員は「かつて海外のグローバルスポーツブランドはジャパン社が国内向けに国内でモノ作りをしていて、ジャパン社が服飾資材も購入していた。そのため、日本でもスポーツブランド向けのビジネスが大きかった。しかし、現在はグローバルに統括するようになり、日本でのモノ作りがなくなり、国内販売が落ち込んだ。そこから当社は海外の商圏を視野に入れたビジネスを展開し、それが形になってきた。日本市場は厳しいが、海外はハマるゾーンがあればまだまだ伸びる」と話す。

 海外戦略について、「宇宙に例えると、われわれはまだ太陽系しか見えていない。しかし、太陽系だけではなく、銀河系、アンドロメダ、さらにはブラックホールの先を見越すことが必要だと社内認識を共有している」という。競合企業については「今後は単品メーカーとの勝負になるだろう。十種競技は勝てる自信があるが、専門競技だと負ける可能性がある。そこをどう戦っていくかが肝になる」。SHINDOは自社で多くの織機や編み機を持ち、またそれらをアレンジして独自に設計できる点も強みである。

創業から50年間の転機は別事業と「S.I.C.」の立ち上げ

 SHINDOは繊維事業に加え、1991年に立ち上げたシリコーン事業、2004年に立ち上げた飛行機の部材などを扱う産業資材事業の3事業を柱にしている。18年7月期の売上高は121億円だった。

 「アパレルが厳しいときはスポーツ、繊維が厳しいときは産業資材やシリコーンで持ち返すといった具合にビジネスの安定化を図っている。また売上高の3~5%程度を先行投資したことも大きい」と堀執行役員は振り返る。例えば10年には、これまで9拠点だった繊維の生産部隊と工場、そしてインターチェンジ付近にあった物流センターを石塚工場に統合し、さらなる効率化を図った。リボンとテープのグローバルサプライヤーとして現在は「排水処理の徹底、太陽光発電、熱回収システムなど持続可能な生産を行っているが、それに加えて、リサイクル糸や和紙を用いた商品開発にも力を入れる」という。

 50年間の転機については、「1つ目は1989年の香港支店開設だろう。中国でコストを抑えた生産ができるようになった。2つ目は『S.I.C.』の立ち上げだ。われわれの強みは自己資本力91%でほぼ無借金経営という点だ。在庫をキープするにも資金力がないとできない」と語る。

 SHINDOはこれまでリストラによる雇用削減を行わずに成長を続けてきた。「“人がいるから会社がある”という企業理念のもと、雇用を守りながら事業を広げてビジネスを安定化した経緯がある」。AIやIoT技術を導入して作業の機械化にも取り組んでいるというが、それは雇用を減らすのではなく、働きやすい環境をつくるためだという。こうした人を軸にしたサステイナブル経営が同社の最大の強みだろう