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八丈島出身の次世代バンドMONO NO AWARE “音楽”と“ファッション”と“沈没家族”と

 「フジロック」をはじめ多くの音楽フェスに出演し、「バズリズム」や「Love Music」など音楽番組でも注目を集める次世代ロックバンドMONO NO AWARE(モノノアワレ)。ZAZEN BOYZの向井秀徳からもイベントの対バンに指名されるなど、ミュージシャンからも愛される存在だ。4月6日に公開されたドキュメンタリー映画「沈没家族 劇場版」では主題歌を担当するなど、活動の幅を広げている。今回、八丈島出身の玉置周啓(Vo.&Gt.)と加藤成順(Gt.)の2人に、音楽、ファッション、沈没家族について語ってもらった。

WWD:2人は八丈島出身だが、それが音楽を作る上で影響があったりする?

玉置周啓(以下、玉置):それはまったくないですね。BEGINさんのように音楽に地域性を取り入れているわけではないですし。ただ、島のことは愛していますよ。

WWD:MONO NO AWAREというバンド名の由来は?

玉置:「もののあはれ」という言葉の響きや、無常観、とどまらないといった言葉の意味が好きでつけました。僕らの音楽も一つにとどまらず、いろいろなジャンルをやっているので、そういった意味でも合っているなと。それで日本語表記よりもアルファベット表記の方がかわいいなと思って、そうしました。

WWD:自分たちの音楽をジャンルで分けると何になる?

玉置:今までは「ジャンルレス」って言っていたんですが、最近はポップというのは外さないということを大事にしています。ニッチな音楽をやっているわけではないので。大衆音楽ではありたいと思っています。

WWD:影響を受けたミュージシャンは?

玉置:僕はRADWIMPS、BUMP OF CHICKEN、ORANGE RANGE、フジファブリックです。中学、高校はほとんどこの4バンドしか聴いていなかったです。

加藤成順(以下、加藤):僕はAC/DCとか洋楽から入って、中学時代だとサム・フォーティーワン(SUM41)とかリンキン・パーク(Linkin Park)とかですね。

玉置:ミュージシャンの友だちと話すと、中学生とかでレディオヘッド(Radiohead)やゆらゆら帝国を聴いていたとかいうけど、八丈島でそんなの聴いていた同級生っていなかったよね(笑)。

WWD:八丈島にいた時の音楽の情報源は?

玉置:ラジオ番組「SCHOOL OF LOCK! 」が大きかったですね。東京の若者たちが聴いている音楽をそこで知るっていう感じでした。

加藤:僕は基本ウェブでしたね。そこで洋楽、邦楽、いろいろと探してました。

「世の中いろいろな考えの人がいます」だけでは先がなくなってきた

WWD:「東京」という曲も作っているが、くるりや銀杏BOYZなど多くのミュージシャンが「東京」という曲を作っている中で、あえて作ったのはどうして?

玉置:くるりさんや銀杏BOYZさんの「東京」は東京という土地を寂しい場所ととらえている曲が多かった。だから悲しくない感じの東京を歌うのもいいんじゃないかと思って作りました。

八丈島で撮影された「東京」のMV

WWD:「東京」のMVは八丈島で撮影したが、島を意識しながら曲を作った?

玉置:それが作っているときは八丈島のことはあまり考えていなかったですね。あくまで概念的な東京と故郷(ふるさと)の関係性から作りました。でも、歌詞の「ふるさとは帰る場所ではないんだよ」っていう部分を歌うときは、やっぱり島を思い出して寂しくなることもあります。

WWD:「轟々雷音(ごうごうらいおん)」という曲の歌詞は全て漢字で構成されていて、一見中国語的だが、どうやって歌詞を考えた?

玉置:学生時代に友だちとのメールのやりとりで、全部漢字で伝えるのが流行っていて。「我遅刻池袋十六時三十分着也」とかで、それで歌詞を作ったらおもしろいなと思って考えました。あと、日本語では書けない照れくさい歌詞でも、漢字だけにすることで伝えられるというのも大きいですね。

WWD:MONO NO AWAREが音楽で伝えたいことは?

玉置:僕はずっと常識に縛られている人に対して「世の中いろいろな考えの人がいます」っていうフラストレーションがあって、断定しない歌詞を書いてきました。ただ最近になって、そうやっていろんな正義がありますっていうだけではその先がないのかなと思うようになって、自分が何を選ぶのかっていうのも伝えていかないといけないなと。もういろんな人に多様性みたいな考えは浸透しているけど、そこで終わってしまっている。音楽を政治的にするつもりはないけど、僕らがどうしていくのかっていうのを今後は提示していきたいです。

加藤:直接的な言葉だけでなく、音でも僕らが大事にしている部分を伝えられればとは意識して演奏しています。ライブにお客さんが来てくれて楽しんでいるのを見ると、モチベーションも上がって、がんばろうと思います。

WWD:大学卒業して音楽で食っていこうという決心はあった?

玉置:僕はまだ決心してない(笑)。「みんなでやっていくぞ」って意思確認もしたことないかも。これまでは勢いで続けていて、その状態の方が楽しいし、いい方向にいっていると思います。少なくとも僕個人は、音楽は何か目標を決めてやるものではないのかなと思っています。

WWD:今年はアルバムの発売予定はある?

玉置:ありますが、どうなるか(笑)。今、地道に制作中です。

服はほぼもらいもの。その服の物語を引き継ぐのが楽しい

WWD:ファッションのこだわりは?

玉置:僕はほぼ友人からのもらいもので、今日着ているジャケットは後輩のおじいちゃんのもの。肩幅もデカくていつの時代だよっていうね。そういう違和感があっても、何か縁があって引き受けたっていう服の方が着ていてテンションが上がる。だから、古着でも誰が着ていたかを聞いてその物語を引き継ぐのが楽しいです。

加藤:僕は無理しないことです。本当におしゃれな服に自分の顔が合っていないって気づいて、がんばってオシャレな服着ても無理な感じが出てしまう。だから無理せずに自分に合うブランドの服をヤフオクなどで買っています。最近は「カルネボレンテ(CARNE BOLLENTE)」がお気に入り。あとは友だちが作る服とかもよく着ています。

WWD:4月6日から公開されたドキュメンタリー映画「沈没家族 劇場版」では主題歌を担当しているがきっかけは?

玉置:監督の加納土(つち)君は八丈島で僕らの高校の1年下の後輩だったんです。もともと「沈没家族」は3年前に加納君が大学の卒業制作で作ったものだったんですが、今回それを映画化するということで、「音楽をやってくれませんか」ってオファーがあって、すぐ作ることになりました。MONO NO AWAREとしてオリジナル曲「A・I・A・O・U」を書き下ろしました。もともとはアルバム用に作っていた曲なのですが、映画のイメージにすごくマッチしました。

最新作「A・I・A・O・U」のMV

WWD:映画「沈没家族」は、1995年にシングルマザーが呼びかけで集まった人たちが共同で子育てをするという、実験的な共同保育で育った監督自身がルーツをたどるというものだが、加納監督がそうやって共同保育で育ったというのは知っていた?

玉置:いや、島にいたときは知らなくて、卒業制作を観て初めて知りました。

加藤:お母さんはパワフルだなっていう印象でしたね。

玉置:加納君の家の床が沈没する場所があって、その頃は別の意味で“沈没ハウス”と呼ばれていたみたいで。

加藤:小学生時代に、みんなでそこで鬼ごっこして落ちてケガしたりと、危険な遊び場でしたね。

玉置:そういった昔からの縁で今回音楽を担当できて、本当にうれしい。

WWD:2人にとって家族とはどんな存在?

玉置:“安全基地”です。無茶しても温かく迎えてくれるのは家族くらいだと思います。

加藤:僕も同じで、見守って、応援してくれているのがうれしい。そういう存在があるだけで、安心して好きなことができます。

WWD:2人はいずれ八丈島に帰りたいと思っている?

玉置:今はまったくないですね。今後、めっちゃ売れたら考えるかもしれません。

WWD:これからの目標は?

加藤:今年は自分たちの企画イベント「天下一舞踏会」を積極的にやって、しっかりと自分たちの音楽を伝えていきたいです。

玉置:好き勝手にやっていきたいという思いはあるけど、それだけやっていればいいっていう時代でもない。好きなことをやっているけど、それをちゃんと受け取ってくれる人がいるっていうシステムを自分たちで作っていきたいです。