エディ・スリマンの後任に抜擢された若きデザイナー　アンソニー・ヴァカレロは何者なのか

　エディ・スリマン（Hedi Slimane）前「サンローラン（SAINT LAURENT）」クリエイティブ・ディレクターが4月1日付で退任し、後任に抜擢されたのがアンソニー・ヴァカレロ（Anthony Vaccarello）前「ヴェルサス ヴェルサーチ（VERSUS VERSACE）」クリエイティブ・ディレクターだ。同氏はメディアからのインタビューを断り、デビューシーズンの2017年春夏コレクションを発表する10月まで口を閉じ続けるようだ。しかし、36歳の同ベルギー人デザイナーを良く知る人は自身のブランドを休止し、今後老舗フレンチメゾンの大役を担う彼に大きな期待を寄せる。

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　ヴァカレロはブリュッセルで生まれ、国立ラ・カンブル視覚芸術高等専門学校で彫刻を専攻。06年にイエール国際モードフェスティバルで大賞を受賞し、「フェンディ（FENDI）」で2年経験を積んだ後、09年に自身のブランド「アンソニー ヴァカレロ（ANTHONY VACCARELLO）」をローンチした。11年にANDAMファッション・アワードを受賞し、13年に「ヴェルサス ヴェルサーチ」のゲストデザイナーになった。その後、15年9月に同ブランドのクリエイティブ・ディレクターに就任した。

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　ヴァカレロがANDAMファッション・アワードを受賞した際に彼にコーチングをしたラルフ・トレダノ（Ralph Toledano）＝プーチ（PUIG）ファッション プレジデントは「ヴァカレロのカリスマ性や知性、モチベーションは他の誰にも負けない。本当に努力家だ。私が彼に初めて会った時、洋服のデザインから裁縫、販売まで全て1人で行っていた」とコメント。また、デザインのスタイルについて「彼は飽和状態のファッション業界において、ニッチなマーケットを探し出した。その結果、彼が得意とするシャープでセクシーなスタイルが生まれたのだ。彼はこの業界で目立つためにははっきりしたアイデンティティーが必要だということを良く理解していた。『サンローラン』が彼を抜擢したのは正解。完璧主義の彼はデザイン力とクリエイティビティーを生かして、エディが築き上げたものをさらに育んでいくだろう」と話した。

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　ヴァカレロのミューズであるモデルのアンジャ・ルービック（Anja Rubik）は「『サンローラン』はヴァカレロ色に染まると思う。とてもクールでシックにね」とコメント。また、彼はスケッチをせず、ムードボードを作ってから生地を直接身体にドレーピングするという。「彼はブランドのビジョンを強く持っているところを尊敬するわ。一見とても落ち着いていて、シャイに見えるが、内側には真の情熱と強さを持っている人。彼は本当にデザインが好き。24時間デザインのことしか考えていないの。彼のデザインはとてもシャープで知性的よ。マスキュリニティーを女性のために解釈しているところがどこかとてもセクシーなの」。さらに、彼のデザインアイコンはジャンニ・ヴェルサーチ（Gianni Versace）やイヴ・サンローラン（Yves Saint Laurent）だという。

　サイフ・マーディ（Saif Mahdhi）＝ネクスト モデルズ（NEXT MODELS）ヨーロッパ プレジデントは「ヴァカレロはあらゆる女性からインスピレーションを受ける。女性が大好きなんだ」と笑う。マーディはヴァカレロを初期の頃から支えてきた。「彼の洋服はミニマルでシック、センシュアルなコレクションを手掛けてきたヘルムート・ラング（Helmut Lang）、アズディン・アライア（Azzedine Alaia）、ジャンニ・ヴェルサーチらを連想させる」。

　バイヤーも彼を高く評価する。ジェフリー・カリンスキー（Jeffrey Kalinski）＝ジェフリー（JEFFREY）創業者は「彼の洋服はとても派手なため、ある程度自信がある女性でないと着られない。彼は単にセクシーな洋服を作るだけでなく、それをきちんと計算しているのだ」。エディのファンだったカリンスキーは「エディは素晴らしかったが、ヴァカレロも同様に『サンローラン』で大いに活躍するだろう。しかし、大切なのは彼自身のやり方を保つこと」と加えた。リンダ・ファーゴ（Linda Fargo）＝バーグドルフ グッドマン（BERGDORF GOODMAN）シニア バイス プレジデントは「彼がセクシーさと自信たっぷりなアティチュードを理解し、洋服を通じてそれを表現していることはみんな分かっている。彼自身は謙虚だけどね。テーラリングや洋服の構築の高いスキルも持つ彼は、必要な条件を全て満たしている」とコメント。しかし、「全く新しいビジョンを持つデザイナーをメゾンに迎え入れることが最近の流れみたいだが、エディの世界観を引き継ぐのか、新しいDNAを持ち込むのかは本人とメゾンにしか分からない。メゾンにとって、顧客の信頼を失うことなく、生まれ変われるのかが鍵」と指摘した。「サンローラン」は最近公式インスタグラムの投稿を全て削除した。ヴァカレロのポートレートのみ残し、今後の全く新しいディレクションをにおわせている。