ファッション

失敗もネガティブコメントも価値になる 動画コマースという売り方

 近年注目を浴びているのが、動画で物を売る“動画コマース”という売り方だ。中国などではライブ配信によって数時間で数千万から億円単位の売り上げを立てる人もいるが、日本ではまだまだ広まっていないのが現状だ。サイバーエージェントの連結子会社でライブコマースを手がけるライブスタ(LIVE STA.)は、今年8月から自社ECを持ち、アベマTVで韓国コスメ通販番組「KANCOS HOLIC」を毎週月曜23時に生放送している。化粧カテゴリー全般ではなく韓国コスメに焦点を絞ったのはいわゆる“韓流サードウェーブ”といわれる今の韓国ブームに乗ったものではないという。ではなぜ、韓国コスメを売るのか、そしてなぜ生放送なのだろうか。大岩裕和ライブスタ社長に話を聞いた。

WWD:この番組とサービスを始めた経緯は?

大岩裕和ライブスタ社長(以下、大岩):アベマTVの関連事業として通販事業が立ち上がった。今アベマTVの通販番組は、買えるAbemaTV社の「買えるバトルクラブ」と、僕たちのやっている「KANCOS HOLIC(カンコスホリック)」の2つ。「KANCOS HOLIC」では毎回違う韓国コスメマニアや美容家のレコメンダーを呼び、商品を紹介してもらっている。コメント機能があるので、MCやナビゲーターがコメントを拾って生放送中に回答している。

WWD:韓国コスメに絞ったのはなぜ?

大岩:動画コマースで、アベマTVでやる意味として「ここでしか買えない」という要素が必要だと考えた。また、ECは商品軸が定まっていないと立ち上げにくいと思う。韓国コスメは日本でも広まってきたが、地方では買いにくいし、情報が少ないので入り込む余地があるのではないかと思った。また、韓国ブームが来ているというのも後押しになった。

WWD:視聴者数と購買層は?

大岩:視聴者は最も多くて9万人、普段は5万〜8万人くらいで、全年代が同じらくらいの割合。購入者の年齢は30〜40代の方が多いが、60代の方もいた。アベマTVにはもともと韓流と韓国バラエティを放送するチャンネルがあり、30代以上の視聴者が多いのも影響していると思う。

WWD:人気アイテムは?

大岩:今の売れ筋はクッションファンデーションやコンシーラーで、「シミを隠す」など、コンプレックス訴求となるので刺さりやすい。メイクアップアイテムは画面映えはするが、クッションファンデやコンシーラーに比べると買ってもらうハードルが高い。これまで一番売れたのは「ザ・セム(THE SEAM)」のコンシーラーで、1週間で1000個売れた。また、「クリオ(CLIO)」のクッションファンデも完売するほどの人気商品だ。

WWD:紹介するアイテムはどのように選ぶ?

大岩:当初は日本で流通していないものをメーンに売ろうとしていましたが、いざ始めてみたら韓国好きにはなじみのあるブランドのアイテムも人気だった。そのため、今は半々で売りたいと考えている。アイテムは社内で点数評価して、最初のリストのうち2〜3割が残る。残ったアイテムから候補をレコメンダーに提案する場合もあるし、レコメンダーからアイテムの提案がある場合もある。当社からアイテムを提案する場合は、レコメンダーが納得感をもって話ができるように、1カ月ほど設けて商品を使ってもらうので、使い方やおすすめポイントは熟知している。

ネガティブコメントも失敗も、大事な要素

WWD:視聴者からのコメントで多いものは?

大岩:アイメイクアイテムだと「一重まぶたでも使えるか」と必ず聞かれる。例えば二重まぶたの目がぱっちりしたモデルさんを起用すると、「元から可愛い顔だから似合うんだ」と思われる。なので意識的に一重まぶたのモデルさんを起用することもある。

WWD:ネガティブなコメントもあるのでは?

大岩:一度、クッションファンデのデモンストレーションで描いたシミを隠すタッチアップをしたら、レコメンダーが本番の緊張でシミを濃く描き過ぎてしまい、隠しきれなかった(笑)。案の定、「隠せてないじゃん」とツッコミコメントがきた。けれど、ネガティブなコメントの方が意味がある。生放送で失敗したことでリアルさが増したし、放送している側の逃げられない空気感も伝わった。結果的に、商品はちゃんと売れた。

WWD:つっこんだ質問が多いが、レコメンダーを選ぶ基準は?

大岩:“先生”の立ち位置になれる人をレコメンダーに選ぶので、美容のプロもいるし、メイクアップアーティストもいる。韓国通の高井香子さんやこんどうようぢさんにも出てもらった。

WWD:毎週放送の生放送に、仕込みの時間がとても長い

大岩:会社として、メディアとしてやるので企画や商品へのこだわりは、異常に踏み込んで行かないといけない。正直、インフルエンサーがライブコマースをした方が売れる可能性もある。差別化するためにも信頼は勝ち取っていきたい。

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