ファッション

UA栗野氏が語る「日本のものづくりとこれから」

 “ユナイテッドアローズワン”を掲げた原宿本店のリニューアルや、ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS以下、UA)の創業メンバーにして、長らくクリエイティブ・ディレクターを務めてきた栗野宏文ユナイテッドアローズ上級顧問(以下、栗野)はこの数年、日本の産地企業と連携し、新たなモノ作りに取り組んでいる。なぜ今、メード・イン・ジャパンなのか。本人に聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):最近よく産地で、UAの話を聞く。栗野上級顧問の産地との関わりはいつから?

栗野:UAとしては自らのプライベートレーベルがあるので、これまでも当然日本でモノ作りをしてきた。けどそれとは別に、この10年間くらい、世界中から優れたテキスタイルメーカーが出展するパリの素材見本市「プルミエール・ヴィジョン(PREMIERE VISION)」を訪れる中で、そのたびに感じていたのは日本企業のレベルの高さ。これならもっと日本で作りたいな、と。

WWD:なぜいま素材を?

栗野:先ほども言ったように、日本の素材は素晴らしいし、先進国なのに自国で生地から仕上げ、縫製までモノ作りが一貫してできる環境自体が、世界を見回しても貴重なこと。でも5年前くらいかな。それまで日本のアパレルやリテーラーは海外に生産を移転させ続けてきたのに、コストが上昇したら日本に戻す動きがあり、逆に日本での生産が追いつかないような事態になった。アパレルやリテーラーの都合で振り回しているようで、恥ずかしい気持ちになった。少なくとも振り回す側にはなりたくないな、と。

WWD:ジャカードで知られる山形県米沢市の産地企業と関わるきっかけは?

栗野:3年前くらいに、秋山(隆興ホライズン代表)さんに頼まれて、米沢に行ったことがきっかけ。調べてみたら、米沢には非常に大きな魅力があった。そもそも米沢藩主だった上杉鷹山は、ジョン・F・ケネディが尊敬する人に挙げているほどの人物で、(ケネディの娘である)キャロライン前駐日大使も、あまり出歩かなかったのに実は米沢には訪れている。

秋山隆興ホライズン代表(以下、秋山):僕自身はトゥモローランドの元バイヤーとしての経験を活かし、日本の産地企業のモノ作りをお手伝いする中で、アパレルやリテーラーの意見を直接聞くのが良いと思って、栗野さんをお呼びした。ジャカードで有名な米沢産地だけど、当時はその多くがミセス向けとブラックフォーマル向けが大半だった。メンズ向けを開発できないかと思っていた。

栗野:僕はあくまで小売りの立場であって、それは服をお買上げいただく店頭のお客さまの立場と近い。ジャッジというか、最終的な服の形から遡って考えているだけ。日本の産地企業は、ある面で科学者的。テキスタイルメーカーなら生地を作ることにコンセントレイト(集中)しすぎていて、(最終的な服の)形になるのが遠いから。

嘉藤嘉明ワボー社長(以下、嘉藤):米沢産地はそれまで、密度が高く、柄もクラシックなものが多かった。UAチームには当初、過去の膨大なアーカイブを見てもらって、その中から今にあったものをセレクトし、そのアイテムを作るところから始めていった。米沢の特徴は、経糸(たていと)にフィラメントを使っていて、メンズ向けでも軽くシャープなテキスタイルを作れること。シーズンを重ねるにしたがって、トレンドの色柄だけでなく、異素材をミックスしたわれわれならではの製品も作れるようになってきた。ちょうど12月に展示会があり、ぜひ多くの人に見てほしい。

WWD:UAは、米沢の繊維企業であるワボーとの間で、一緒に生地を作り、その生地をワボーはUAのためだけではなく、他のアパレルにも販売している。

栗野:僕らはバイイングでも基本的に特定のブランドに対して、エクスクルーシブ(注:UA以外で取り扱わないように契約すること)を一切しない。それと同じことだよね。知識やノウハウに関してシェアすることも今後は大事だと思う。

WWD:ここまで産地のサポートに力を入れる理由は?

栗野:良いものが作れなくなったらマズイという危機感かな。僕がやれることは限られているけど、できることはやりたい。バイイングで伝説を残すのもかっこいいけど、それ以上に良いものをきちんと残して下の世代に残す、そんなムーブメントが残すほうが、僕の洋服道と商人道だ。

■ヨネザワ・ジャカード・プレゼンテーション
日程:12月11〜15日
時間:10:00〜19:00
場所:香音里
住所:東京都新宿区天神町17

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