ビューティ

「クリード」のオリヴィエ・クリード調香師が死去 250年以上続く名門の6代目

高級フレグランスブランド「クリード(CREED)」を率いてきた6代目当主であり、マスターパフューマーを務めたオリヴィエ・クリード(Olivier Creed)が死去した。ブランドは20日(現地時間)、ソーシャルメディアを通じて訃報を発表した。

インスタグラムに投稿されたモノクロ写真とともに、ブランドは次のようにコメントした。「先見性を持つクリエイターであったオリヴィエは、人生をかけてオートパフューマリーの芸術を継承し、再創造してきた。揺るぎない卓越性への追求に導かれ、世界中を旅して最高級の原料を探し求め、信頼する生産者たちとの永続的な関係を築きながら、メゾン独自の“アート・オブ・ミレジム(厳選した天然素材を生かす香水哲学)”を形作った」。

故オリヴィエ・クリードは、歴史ある家業を世界的人気を誇るラグジュアリーフレグランスブランドへと発展させる上で、中心的な役割を果たした人物だった。ブランドはさらに、「彼のクリエイティブディレクションのもと、『クリード』を象徴する数々の香りが誕生した。その全てに、彼ならではの才能、好奇心、そして妥協のない基準が反映されている。彼のレガシーは、全ての『クリード』の香りの中に生き続けている。それは時代を超越したエレガンスの表現であり、これからも世代を超えて人々を魅了し続けるだろう。私たちの思いは、彼の家族、愛する人々、そして彼に人生を変えられた全ての人々とともにある」と述べた。

ロレアル リュクス部門プレジデントらが追悼コメント

現在ブランドを所有するロレアル リュクス部門のシリル・シャピュイ(Cyril Chapuy)=プレジデントも声明を発表し、「オートパフューマリー界は偉大な人物の一人を失った」と哀悼の意を示した。「『クリード』がロレアル リュクス部門に加わるより前、私は数年前にオリヴィエ・クリードと出会う機会に恵まれた。すぐに印象付けられたのは、彼の静かな情熱、謙虚さ、そしてクラフツマンシップと卓越性への深い献身だった」と述べた。さらに、「オリヴィエのビジョンと献身によって、何世代にもわたり歴史を築いてきた特別なメゾンを守り、高めることに貢献した。彼のレガシーは、『クリード』、そのクリエーション、そして日々その精神を受け継ぐ才能あるチームによって、今後も生き続けるだろう」と続けた。

昨年、ブランドのトップに就任した、「クリード」のナタリー・ベルジェ・デュケーヌ(Nathalie Berger-Duquene)最高経営責任者(CEO)も21日、ビジネス特化型SNSリンクトインに追悼メッセージを投稿した。クリード氏を「卓越した遺産を守る先見者」と表現し、「人生をかけてオートパフューマリーの芸術を継承し、再発明してきた人物」だと称えた。さらに、「オリヴィエは『過去こそ未来の力だ』と言っていた。この言葉は、彼のレガシーの本質を捉えている。彼は何世紀にもわたるクラフツマンシップとサヴォアフェール(高度な職人技術)の伝統を守ることで、託されたヘリテージを尊重しながら、絶えず革新を続けた。そして真正性、洗練、卓越性という価値観が、これからの世代にもインスピレーションを与え続けることを確かなものにした」と記し、「彼のレガシーは、全ての『クリード』の香りの中に、そしてメゾンに根付かせた卓越性の精神の中に生き続けている。その精神は、日々この特別なメゾンを前進させる才能あるチームへと受け継がれている」と付け加えた。

世界的人気ブランドへの成長をけん引

1943年生まれの故オリヴィエ・クリードは、英国王ジョージ3世時代に事業を創業したジェームズ・ヘンリー・クリード(James Henry Creed)の直系子孫であった。ブランドは1760年、ロンドン・メイフェア地区でテーラーとして創業し、その後フレグランスメゾンへと発展。これまでに“アバントゥス(Aventus)”“バイキング(Viking)”“ヒマラヤ(Himalaya)”“グリーン アイリッシュ ツイード(Green Irish Tweed)”など、200種類以上の香水を世に送り出してきた。

同氏は特に、年間1000本規模だった事業を、世界的人気を誇るラグジュアリーフレグランスブランドへと押し上げた人物として知られる。1980年生まれの息子アーウィン(Erwin)とともに、フランス・フォンテーヌブローの工房で職人的な香水作りを行っていた。クリードはブランドブックの中で、次のように語っている。「祖母は私をとても助けてくれ、ボトル製造用の型まで与えてくれた。そして父は、もし香水が情熱なら、その道を進むべきだと言ってくれた。父は勉強だけでなく、実験することも常に後押ししてくれた。香水、布地、絵画——今でもその全てに興味がある。私は研究室に閉じこもり、どこにも行かないような人間ではない」。

実際、クリードは息子と共に世界各地を巡り、上質な原料を求めて農家たちと交流していた。お気に入りの植物原料産地としては、ベルガモットのイタリア・カラブリア州、オレンジのナポリ、レモンのシチリアなどを挙げていた。2012年にニューヨークで米「WWD」の取材を受けた際、クリードは創作プロセスや現場主義の経営スタイル、そしてブランドの進化について語っている。「私は画家のような感覚だ。農家でも、イスタンブールのアパートでも、田舎でも、どこでも描くことができる」。彼は生涯の情熱だった油絵と調香を重ね合わせながら、そう説明していた。また当時、家族経営であることの重要性も強調していた。「これはファミリービジネスである。古い会社はたくさんあるが、1760年以来、一度も途切れることなく父から息子へ受け継がれてきた会社は私たちだけだ」。

ケリング、ロレアル傘下でも受け継がれたメゾンの哲学

2020年、250年以上続いた家族経営に幕を下ろし、ブランドはブラックロック・ロングターム・プライベート・キャピタル(BLACKROCK LONG TERM PRIVATE CAPITAL)とスペイン人実業家ハビエル・フェラン(Javier Ferrán)に売却された。しかし、その後もオリヴィエと息子アーウィンは事業に関わり続けた。当時オリヴィエ・クリードは、「時が来たときに、ラグジュアリーなファミリービジネスとしての遺産を守りながら、世界中のより多くの人々へ私たちを届けてくれる最良のパートナーを選ぶことが重要だった」と語っていた。

23年には再びオーナーシップが変わり、ケリング ボーテ(KERING BEAUTE)が「クリード」を買収すると発表。取引額は20億ユーロ(約3680億円)台後半から35億ユーロ(約6440億円)規模とみられた。この買収は、同年2月にインハウスのビューティ部門構築を始めたケリングにとって、初の大型買収案件となった。「クリード」は、ケリング傘下初のニッチフレグランスブランドとなり、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」「ポメラート(POMELLATO)」「キーリン(QEELIN)」などのフレグランスブランド群に加わった。

さらに昨年、ケリングとロレアル(L’OREAL)はビューティおよびウェルネス分野における長期戦略的パートナーシップを締結すると発表。この契約には、ロレアルによる「クリード」の買収も含まれていた。今年初め、両社は40億ユーロ(約7360億円)規模のビューティ取引を完了し、ロレアルによるケリング ボーテ買収を正式に完了。これには「クリード」に加え、ケリング傘下ブランドのビューティおよびフレグランスライセンス契約も含まれている。その結果、ロレアルのステファン・ベジー(Stephan Bezy)=ニューラグジュアリーブランド プレジデントが、旧ケリング ボーテのブランド群を率いる役割を担うことになった。これらブランドは現在、ロレアル リュクス部門のポートフォリオに統合されている。

同社のベジー=ニューラグジュアリーブランド プレジデントも、リンクトインで追悼コメントを発表した。「私は、クリエーション、工場、ブティックで働くチームと会う機会があった。彼らは日々、誇りと精緻さ、そして寛大さを持って彼のビジョンを体現している。あらゆる場所、あらゆる所作において、彼が築いた基準と文化を感じることができる」。さらに、「オリヴィエ・クリードは、クラフツマンシップへの深い献身、美への探求、素材と人々への深い敬意という、稀有なレガシーを残した。彼の影響は、クリエーションから最終的な顧客体験に至るまで、静かに、しかし力強くメゾンの中に息づいている。ロレアル リュクス部門として、私たちはこの特別なメゾンに寄り添えることに感謝するとともに、その遺産を敬意と謙虚さ、そして志を持って未来へ受け継ぐ責任を感じている」と述べた。

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