メトロポリタン美術館は、新たに常設されたギャラリー「「コンデ・M・ナスト・ギャラリー(Conde M. Nast Galleries)」の開設を記念して5月10日から始まるコスチューム・インスティテュート特別展「コスチューム アート(COSTUME ART)」に廣川玉枝が手掛ける「ソマルタ(SOMARTA)」の無縫製ニット“スキン”シリーズを展示・収蔵する。特別展の一般公開は、来年の1月10日まで行う。
人間の身体美を表現した作品群
「ソマルタ」のシグネチャーアイテムである無縫製ニット“スキン シリーズ”は、“身体における衣服の可能性”をコンセプトに2006年から研究開発を続けてきた。身体に合わせ、デジタルプログラミングを活用しながら360度継ぎ目なく高密度に編むシームレス製法が特徴で、“第二の皮膚”とも称されている。
キュレーターのアンドリュー・ボルトン(Andrew Boston)は、廣川と「ソマルタ」の作品について「彼女の作品は、“身体”というテーマを象徴的に表現するだけでなく、最先端技術を駆使することで、ファッションという工芸表現の可能性そのものを拡張している。さらに特筆すべきは、アクセシビリティや多様性といった現代的な視点を、作品の中に自然に取り組んでいる点だ。緻密に構築されたコンセプトと卓越した技術的独創性を高次元で融合できる、極めて稀有なデザイナーだと感じている」と述べた。
廣川は「この度、世界を代表する美術館である、ニューヨークのメトロポリタン美術館において、作品が展示・収蔵されることになりましたこと、心より光栄に、そして深い喜びを感じております。衣服は身体とともに存在し、人の記憶や時間に寄り添いながら生き続けるものだと考えています。今回の収蔵を通して、私どもの作品が時代を超えて受け継がれ、未来の多くの方々の目に触れる機会を得られることを、大きな意義として受け止めています。この機会に深く感謝するとともに、今後も衣服の可能性を探究していきたいと思います」とコメントした。
作品一覧
Skin series Atlas Ⅲ
(2026)
人間の筋肉の流れに着目し、身体美を表現した同作は、2018年にパリの装飾美術館「ミュゼ・デ・アート・デコラティフ(MUSEE DES ARTS DECORATIFS)」で開催した「Japon et japanisme」展でも披露された。メトロポリタン美術館に収蔵されることが決定した「スキン シリーズ アトラス Ⅲ」は、本展示に合わせて編み技術を変えて、伸縮性を高める改良を施しながら、「アトラス Ⅰ」「アトラス Ⅱ」と開発を重ねた。本作は、5色の皮膚で構成し、計5点を収蔵する。
左:Skin series Tribal-SOMA Bijou
右:Skin series Tribal-Rabi Bijou
(2014)
ブランド設立時から研究する皮膚への装飾表現を、デジタル技術で組んだタトゥー編み文様にハンドクラフトを加えて具現化した。プリミティブなタトゥーの編み文様に沿って、ビーズやシークインの細かいパーツを全身に手刺しゅうしている。