
「美容成分」への関心が高まり、ビタミンCやレチノールなど特定の成分にフォーカスしたコスメが市場をにぎわせている。配合成分が高濃度であるほど効果が期待できる印象はあるが、果たしてそれは本当なのか。最もポピュラーな成分である「ビタミンC」を例に、スキンケアとインナーケアの両軸から専門家に聞いた。
数多のビタミンCコスメを「濃度」で比べるのが難しい理由
店頭に並ぶビタミンCコスメを選ぶ際、生活者は何を基準に判断しているのか。「10%」「20%」といった成分濃度の表示は、効果を推しはかる一つの目安として受け止められがちだ。実際に濃度が上がるほど効果が期待できるのか、ロート製薬の木村駿研究員に聞いた。
「同じ基剤、同じ処方の製品であれば、ビタミンCの濃度が濃いほど、理論上は肌への吸収量も増えると考えられます。肌に取り込めるビタミンCが豊富だからです。一方で、基剤や処方が異なる製品の場合、一概に比較はできません。低濃度であっても、肌への吸収率を向上させる、さまざまな技術が存在するからです」。
基剤とのバランスであえて低濃度で配合するケースもあり、市場をにぎわせるビタミンCコスメを、濃度だけで判断するのは難しいのが現状だ。さらに濃度が上がるほど、人によっては刺激を感じるリスクも生じてしまう。
「肌にビタミンCを補給することはもちろん大切ですが、われわれはもう一歩進んで“ビタミンCが実際にはたらく細胞内”にきちんと届くことこそ、真のゴールではないかと考えました」。
細胞が取り込むビタミンC量には限界がある
そこで木村研究員は、「培養細胞を用いて細胞内のビタミンC濃度を計測する」という、地道な研究に着手する。その結果、細胞は一定濃度以上になるとビタミンCを吸収しにくい性質が明らかになった。
「周囲にたくさんビタミンCが存在しても、細胞がお腹いっぱいで取り込めないイメージです。細胞にはビタミンCを取り込むチャンネルと排出するチャンネルがあり、常に細胞内のビタミンC濃度を一定に保っているためです」。この研究から生じたのが、いかに細胞内のビタミンC濃度を“高止まりさせるか”という新たな課題だ。細胞内ビタミンC濃度に寄与する300以上の素材をスクリーニングしたところ、イリス根エキスにたどり着いたという。
「メラニンを作る色素細胞にビタミンCとイリス根エキスを添加すると、細胞内のビタミンC濃度が増加することが確認されました。さらに色素細胞内におけるメラニンの合成量が減少することも確認しています」。
体内において「単体で働く」成分はないに等しい
ビタミンCは塗布するだけでなく、服用もされる成分だ。サプリメントにおいても高濃度のほうが効きそうなイメージがあり、1000mgや2000mgを配合した製品もあるが、実際はどうなのだろうか。アスリートであり、プレミアムインナーケアブランド「オーソモル(ORTHOMOL)」の日本総代理店MSTの湯川正人代表に聞いた。
「水溶性であるビタミンCは体内に蓄積されにくく、利用されなかった分は排出されます。そのため特に美容シーンでは、比較的多めに摂取されることもあるでしょう。一方で、体内の利用効率には一定の限度があり、何より栄養素同士の組み合わせに配慮が必要です。『オーソモル』は分子栄養学の考え方をもとに、成分単体のインパクトではなくこの“栄養素同士の関係性”を重視しています」。
分子栄養学とは、栄養素の代謝を分子レベルで研究し“その人の体が必要とする栄養素を、正しい組み合わせで摂取する”ことを目的としている。
「体内の生理プロセスにおいて、栄養素が一つだけで働く場面はほとんどありません。例えばビタミンCは鉄の利用に関与しますが、同時に摂取する成分の種類や量によって、吸収効率に影響するケースもあるからです」。
「厚生労働省が示しているビタミンCの推奨量は、健康維持のための一つの基準です。『オーソモル』はその数値を起点にしつつ、栄養素同士がそれぞれ本来のパフォーマンスを発揮し、日常的に取り入れやすい量として、ビタミンC950mgを配合しました。他の栄養素との組み合わせを前提に設計されています」
近年はこのように「体本来の機能」と「ビタミンCの働き」に立ち戻り、濃度のみでは戦わないビタミンCアイテムが登場している。その一例を紹介する。
細胞内ビタミンC量に注目し進化を遂げたロングセラー
今年で誕生25周年を迎えるロート製薬の「オバジ(OBAGI)」のCセラムシリーズは、ピュアビタミンCの安定的高濃度配合に挑んだ先駆者的美容液だ。その Cセラムシリーズが2月10日にリニューアル発売する。新生Cセラムシリーズはさらに一歩進み、細胞内のビタミンC濃度に注目した。角層のすみずみまでビタミンCを届ける浸透技術を新たに搭載し、毛穴やキメの乱れ、くすみなど肌悩みに多面的に働きかける。最高濃度の“C25セラム ネオ”は、ハリ感や乾燥小ジワにもアプローチする点が頼もしい。
分子栄養学をもとにビタミンCや各種栄養素を黄金比で配合
「オーソモル」は分子栄養学に基づき、ドイツの医師・薬剤師が監修するプレミアムインナーケアブランド。ブランドを代表する“マルチビタミン&ミネラル”には、ビタミンCを含む22種類の栄養素を成分の量ではなく関係性を重視した黄金バランスで配合する。マルチビタミンは液体、鉄分は錠剤という独自の形状は、吸収や安定性を考慮した設計の一環。日々のコンディションと向き合うためのインナーケアとして、世界各国で親しまれている。
ビタミンC吸収のカギに注目した敏感肌用クリーム
敏感肌ブランド「ディセンシア(DECENCIA)」からは、“ディセンシアホワイト スパイク-VC”シリーズが3月10日に登場する。ビタミンCを肌に取り込むカギとなる「ビタミンCトランスポーター」に注目し、配合したビタミンC誘導体をロスなく受け取れるような肌状態を目指す。クリームはぱしゃっとはじける、みずみずしい感覚が印象的。肌になじんだ後はしっかりシールドして、乾燥をケアしながら本来の透明感を引き出す。
「成分濃度」は、生活者にとって分かりやすい指標の一つだ。一方で、肌への効果よりもマーケティング的な視点で「高濃度配合」が過熱している面はないだろうか。ロート製薬の木村研究員は、「高濃度やどれだけ多くの成分を配合しているかなど、分かりやすい情報が求められている時代だと感じます。化粧品は1つの成分のみが力を発揮するわけではなく、配合成分が多いから効果が高いとも限りません。他の成分との相互作用や、浸透技術、そして何より大切なのは安全に続けられること。われわれは効果が期待できて、安心して使えるものをお客様にお届けしたいと考えています」と述べる。
このような製品は、濃度に比べて真価が伝わりにくい面もあるだろう。しかし、実直な研究に基づいた、「濃度だけでは戦わないビタミンCコスメ」が存在することも知っていただきたい。その真価を生活者の方にもぜひ肌で体験してほしい。