毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2025年11月17日号からの抜粋です)
井口:ファッション・ウイーク(FW)というと、4大都市と、日本に住んでいる場合は東コレを思い浮かべると思いますが、翻訳担当として日々米「WWD」をチェックしていると、さまざまな都市にFWがあって、それぞれ特徴があって面白いんです。最近だと景気がよく、まだ立ち上がって間もないサウジアラビアのリヤドでやっているFWを激推ししていて。そして、欧州というと、やはりベルリンですよね。
藪野:ベルリンは2007年からFWがありましたが、メルセデス・ベンツのスポンサー契約が22年で終了したんです。それから独自色を模索し始めて、面白くなってきているところです。ベンツはかつてニューヨークや東京などさまざまな都市のFWのスポンサーを務めていましたが、ファッション戦略を見直したため、各都市で手を引いています。大きなスポンサーの影響下から離れたFWが生き残っていくためには、いかに行政を巻き込むか、そして独自の視点を持っているかが大事です。
官民一体になって資金を注入している
井口:上海やソウルのFWは官民一体になって資金を注入して盛り上げているのが印象的でした。リヤドもかなりデジタル化が進んでいて、“シーナウ・バイナウ”が定着している様子。26年春夏シーズンのFWに25-26年秋冬のコレクションも結構混ざっていました。
藪野:東京ガールズコレクション的な感じですね。ベルリンでもたまにオンシーズンのショーをやっていますよ。ベルリンFWが盛り上がりつつあるのは、州政府の支援が大きくて、参加ブランドが助成金を得られるから。元独「ヴォーグ」編集長が会長になったことも大きいです。井口さんはどこの都市のFWに注目しましたか?
井口:私はタイのバンコクですね。すごく外に開かれていて、一般市民が事前登録で無料で見られますし、会場がオープンエアの場合は通りすがりの人も見られます。サイアム地区全体が盛り上がるようで、見てみたいです!
藪野:運営サイドに熱意があるのでしょうね。資金源の確保も大事ですが、結局は関係する人々の情熱が原動力ということを感じています。