デンマーク発ライフスタイルブランド「テクラ(TEKLA)」から初のキャンドルが登場した。「テクラ」は、上質なタオルやリネンといったテキスタイルで知られている。同ブランドは、香りの分野に進出するにあたり、アイルランド人陶芸家のサラ・フリン(Sarah Flynn)と協業。約1年半かけてキャンドルを開発し、パリ・ファッション・ウイーク期間中にポップアップイベントを開催した。パレ・ロワイヤルに程近い会場で、3種類のキャンドルの展示販売及び、キャンドルホルダーの鋳型などを展示。 ポップアップ初日には、フリンや「テクラ」のクリストファー・ユール(Kristoffer Juhl)=マネジングディレクターが来場者を迎えた。
北欧や日本にオマージュを寄せた上品な香り
キャンドルはインテリアの脇役的なものが多いが、「テクラ」のキャンドルは器をフリンが手掛けたということもあり、まるでアート作品のよう。インテリアの主役級の存在感がある。キャンドルの発表の場にパリを選んだ理由についてユールは、「2年間かけてこだわったキャンドルの発表には、芸術的、文化的な町であるパリがふさわしいと思った」と言う。古いアトリエのような会場には、3つの茶箪笥が置かれ、それぞれのキャンドルと素材を展示。来場者には、キャンドルの香りから着想を得たお茶とクッキーが振舞われた。パリにいながら、ちょっとした"ワビサビ”体験ができる落ち着いた空間だ。ジュールは、「茶箪笥はベルギーで見つけた。同じ茶箪笥を3つ探すのには一苦労した」と話した。
キャンドルの香りは3種類。白い器が"フロール”で、シトラスやベルガモットにスズラン、スミレなどの花の香りが加わった爽やかな香りだ。ベージュの器は、“コードー”。日本の香道から着想を得た香りでカルダモンやサンダルウッド、シダーウッドが組み合わさった寺院を彷ふつとさせる香りだ。黒い器は“ヴァスタ”。北欧の日常に欠かせないサウナで感じるスモーキーな香りをユーカリや白樺、バルサムモミなどで表現した。「それぞれの香りと、器の色や形がオーガニックに組み合わさっている」とユール。
螺旋階段を上がった2階には、器の鋳型や磁気の表面のテクスチャーのサンプルを展示。時間をかけてじっくりと開発された過程がうかがわれる。ユールは、「急がず、一つ一つの過程を大切にしながら作った」とコメント。
どこか懐かしい佇まいの器はアート作品のよう
「テクラ」とフリンの協業は、同ブランドのチャーリー・ヘディン(Charlie Hedin)「テクラ」創業者兼クリエイティブ・ディレクターからのメールだったという。フリンは、「ディオール(DIOR)」のジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)=アーティスティック・ディレクターがこよなく愛する陶芸家だ。彼が「ロエベ(LOEWE)」に在籍していたときから「ロエベ財団 クラフトプライズ」の審査員を務めている。
フリンは「私にとって、初の企業とのコラボレーション。相性が合うか心配したが、美しいメールをもらいそこから会話が始まった」と話す。フリンは通常、ろくろを回して1点1点、作品を制作する。このコラボで工場と協業して鋳型を作るのは初めてのことだった。最もチャレンジングだったのは、キャンドルのリフィルにフィットする器にすること。フリン特有の有機的なラインを表現するには構造的にダブルウォールにする必要があった。フリンは、「陶芸は乾燥させて焼くと縮む。リフィルにピッタリ合わせる形状にするのに苦労した。外側の表情にもこだわり、数百個サンプルを制作した」と言う。さりげない表情が施された壺のような器は、シンプルで美しくほっとする温かさがある。「人が古いものに反応するように、このキャンドルが、どこか懐かしく、私が感じたことを人々に語りかけてくれればうれしい」とフリン。
「テクラ」のビジョンとフリンの感性を融合させたキャンドルは、タイムレスであらゆる空間に馴染む。価格は4万円、リフィルが1万2000円。「テクラ」のECで販売中だ。