人の感性に寄り添う
新型“ES”
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会場で一際目を引いたのは、2026年春頃に発売を目指す次世代セダン型EV・新型“ES”だ。“ES”シリーズ8代目となる同モデルは、“Experience Elegance and Electrified Sedan”をコンセプトに、これまでのブランドが培ってきた余裕のある乗り心地と静粛性を継承しながら、プラットフォームを刷新。“実現したい空間を先に追求し、車体サイズなどを見直す” という従来とは逆転の設計プロセスをたどりながら、ホイールベースを含む全ての車体寸法を延長し、さらなる快適性を実現したという。日本ではバッテリーEVとハイブリッドのパワートレインで導入予定だ。
注目すべきは、“人の感性に寄り添う空間”を目指したインテリアだ。竹細工の工芸品を思わせるインパネ周りのディテールやドアトリムの幾何学模様など、同ブランドのシグネチャーマテリアルである“Bamboo(竹)”の要素を、触れて楽しめる造形で散りばめた。さらに、車載システムとして“センサリーコンシェルジュ”を初搭載した。同システムは“舞台芸術”の世界観をコンセプトに、選択したモードに応じて、空調や音響、フレグランスなどの独自機能も連動。人が持つあらゆる感覚に働きかけることで、これまでにない没入型の車内空間を追求した。
同システムで搭載するのは、集中力を高める空間を演出す“ラディエンス”、リラックスしたい時に最適な“リバイタライズ”、高揚感を煽る“インスパイア”の3モードだ。印象的なのは“リバイタライズ”モードで、ゆったりとしたピアノとチェロの演奏をBGMに、ウッディ系のやわらかな香りが広がりながら、シートマッサージ機能も連動。眠りに誘うかのようなムードを体全体で強く感じられた。
同システムは中国市場から先行導入し、今後国内市場への導入を検討する予定だ。
EVに走りの楽しさをプラス
新型“RZ”
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25年秋以降発売予定のクロスオーバー型バッテリーEV・新型“RZ”の乗車体験では、トヨタ自動車が保有するテストコース“第3周回路”での擬似走行を体験。最新のステアリングシステムや独自のサウンド演出など、ドライバーの感性に訴えかける新たな魅力を体感した
“ステアバイワイヤシステム”は、シャフトを通じてステアリングと駆動輪が物理的に連動する機構を廃し、ワイヤのみで電子信号を介して操舵する最新のシステムだ。これによってステアリングの回転角とタイヤの切れ角の比率を電子的に制御し、走行速度や道路状況によって最適化する操舵性能を実現したという。“VGRS”といった従来のステアリングギア比の可変機構とは違い、同システムは走行速度などの条件にすら縛られない“自由なステアリングフィール”の実現を示唆していた。なお、万が一システムに不具合が生じた場合でも操舵を継続できるよう、バックアップ機構が備えられているので安心だ。
たとえEVであっても、“走りの楽しさ”への工夫を忘れないのが「レクサス」流。ブランド初搭載の“インタラクティブマニュアルドライブ”では、アクセルやパドルシフトと連動したサウンド演出をスピーカーから発生するほか、シフトアップ・ダウン操作時特有の揺れであるシフトショックすらも物理的に再現したという。バッテリーEV専用車である“RZ”シリーズに、内燃機関車ならではの走りの体験を加えた。
嗅覚で体感する
オリジナルフレグランス
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前述した新型“ES”に搭載予定の“センサリーコンシェルジュ”の演出は、車内にみちる“香り”にまでも抜かりない。時の流れによる自然の移ろいをテーマに、“晨明(SHINMEI)”“恵風(KEIFU)”“青陽(SEIYO)”“天光(TENKO)”“半夜(HANYA)”という日本特有の名称が付けられた5つのフレグランスを、同システムのために専用開発した。
“心と体に作用する機能性”、“日本着想の美意識”、“サステナビリティ”の3つのキーワードをベースに、世界最大の香料メーカーであるジボダンを迎えて共同設計。インテリアと同様に、すべての香りに“Bamboo Accord”と呼ばれる竹の香りを取り入れ、車内空間との調和を深める工夫がなされているのも興味深い。
驚きなのは、パッケージデザインだ。さながらリップスティックのようなスタイリッシュな造形で、竹の節からインスピレーションを受けたカットラインを施したほか、素材には粉砕した竹を混ぜ込んだ樹脂を採用する徹底ぶり。「置いてあるだけで美しい」とも思える佇まいで、搭載時には見られない箇所にまで世界観を追求する姿勢が、いかにも「レクサス」らしい。
“Bamboo”の世界観を味覚で堪能
「レクサス」×「美山荘」共創スイーツ
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ブランドの世界観を象徴する“Bamboo”と、専用フレグランス全てに取り入れた香り“Bamboo Accord”を着想源に、京都にあるミシュラン二つ星レストラン「美山荘」と共創したオリジナルスイーツも振る舞われた。
中東久人「美山荘」四代目当主は、“Bamboo Accord”から着想を得て、「竹林の中で筍を掘り起こす」情景をイメージ。それをヒントに、同店が誇るスイーツ“杉薫水羊羹”をアレンジした。さらにスイーツに合わせて“粽笹の水(ちまきざさのみず)”も提供。参加者たちはそのペアリングを楽しんだ。
自動車では難しい“味覚”へのアプローチを加え、ブランドの世界観を五感すべてで体験可能なコンテンツを実現した。
「レクサス」が考える
感性を刺激するEVの未来像
従来の“走りの楽しさ”は、エンジン音や振動、ガソリンの匂いといった内燃機関車特有の要素から生まれてきた。「レクサス」は今、その感覚をEVでどう置き換え、あるいは超えていけるかを探っている。
「レクサス」広報担当者は「EVの強みは、内燃機関車にあった制約の少なさだ。今回搭載したシステムは、5つの香りや1つの走行音を利用したものだったが、将来的には自分好みの香りを取り入れたり、走行音を自在に変えたりできるかもしれない。より自分らしい運転体験のベースを整えながら、“五感を刺激する楽しさ”を広めていきたい」と、ブランドが目指すEVの未来像に思いを寄せた。
利便性だけでなく“走りの楽しさ”までもパーソナライズする。そんな没入型EVが「レクサス」から見られる日は、きっとそう遠くはないだろう。