サステナビリティ

トヨタ自動車が「レクサス」のシート廃材を活用したバッグブランド発表 金継ぎに着想

左から、坂口真生エシカルディレクター、一法師拓門デザイナー、加藤舞トヨタ自動車カラー&感性デザイン部新事業企画部事業開発室BEcreationグループ主幹、中村慶至トヨタアップサイクルプロジェクト オーナー、只熊憲治トヨタ自動車新事業企画部事業開発室室長

トヨタ自動車は9月19日、自動車の製造工程で発生する「レクサス(LEXUS)」用シートレザーの廃材を再利用した新ブランド「ツギ クラフト バイ トヨタ アップサイクル(Tsugi-Craft by TOYOTA UPCYCLE)」を発表した。

同日に東京・代官山の蔦屋書店で開かれた発表会では中村慶至トヨタアップサイクルプロジェクトオーナーは、バッグをブランドの第一弾アイテムとした理由について「日常的に使うアイテムだからこそ環境配慮を実感できる」と述べ、「アップサイクルに高い付加価値を加えることを目指した」と語った。性別や年齢を問わず誰もが使えるデザインを重視し、日常使いから週末のレジャーまで幅広いシーンを想定。各アイテムの正面に見えるパネル数を名称にしたシリーズで、9パネルのハンドバッグ、15パネルのトートやポーチ、巾着型バッグなど全6型を用意。バッグは6万4900円から9万9000円で、ポップアップなどで販売する。

ブランド名の「ツギ(Tsugi)」には、「素材をつなぎ合わせ、技術を継承し、人や未来へとつなげる」意味を込めた。使用した素材は「レクサス」のシート生産工程で発生する端材だ。高級車の内装素材らしく、柔らかさと耐久性を併せ持ち、耐熱性や耐水性がある。その一方で「不均一な廃材を活かすことが新しい技術的挑戦だった」とトヨタ自動車の加藤舞カラー&感性デザイン部新事業企画部事業開発室BEcreationグループ主幹は説明した。

不揃いの端材をどう生かすか?が課題に

デザインを担当した一法師拓門デザイナーも、端材をどう組み合わせるかが最大の課題だったと振り返る。「最初は継ぎ目を隠そうとしたが、それでは平凡になってしまう。金継ぎや襤褸に着想を得て、継ぎ目をあえて見せる方向に切り替えた」という。縫い代や重なり部分の処理、どこにステッチを入れるかなど、試作を何度も繰り返した。加藤主幹も「均一な素材を前提とする自動車量産とは異なり、不揃いな廃材を扱うのは全く新しい領域。コストや工程面でも大きな挑戦になった」と続けた。また、小さなパーツを一枚一枚丁寧につなぎ合わせる工程は機械化が難しく、職人の経験や感覚に頼る部分が多い。そのため縫製は国内工場の職人の手仕事で行った。

会見に続くトークイベントでファシリテーションを担当した坂口真生エシカルディレクターは「アップサイクルにプレミアム性を与えた点は重要。価格帯10万円前後は世界的に“アフォーダブル・ラグジュアリー”として注目されており、その流れにも合致する」と評価すると、一法師デザイナーは「アップサイクルで高品質を実現できたことを示せた」とし、加藤主幹は「アップサイクルを文化として定着させたい」と締めくくった。

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