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「ホンダ」“プレリュード”試乗レポート 令和に成熟した電動化時代の“デートカー”

本田技研工業の「ホンダ(HONDA)」が2025年9月5日、2ドアクーペ“プレリュード”を発売した。24年の時を経て復活した同モデルは、発売後1カ月で約2400台を販売し、月間販売目標の300台に対して約8倍の立ち上がりを見せた。昨年11月には、「2025〜2026日本自動車殿堂カーデザインオブザイヤー」を受賞。12月には、「2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤー」で2位にランクインするなどした業界注目のモデルだ。筆者は2日間にわたり、道幅の狭い住宅街から高速道路まで、さまざまなシチュエーションで試乗し、令和に復活した“スペシャリティスポーツ”の真価に迫った。

“デートカー”の代名詞
「ホンダ」プレリュードの歴史

“プレリュード”の誕生は、1978年にさかのぼる。乗用車の所有が一般化し、クルマに個性を求める声が高まった時代に合わせ、“スペシャル・プライベート・カー”として打ち出したのが初代プレリュード。ワイド&ローのスタイルに、前席の快適性を追求した2+2のFFクーペというパッケージの基礎が築かれた。スピードメーターとタコメーターを同軸上に配置した“集中ターゲットメーター”や、国産車初の電動式サンルーフなどの個性的な装備も備えた。

82年に発売した2代目では、スーパーカーブームを意識してフロントフードを低く、アイコニックなリトラクタブルヘッドライトも搭載し、洒落っ気のあるエクステリアに昇華した。有名な装備として、運転席から手の届く位置に設けた助手席のリクライニングレバーがある。ドライバーが後席の荷物や乗員を下ろしやすくする便利な装備であるが、デート中にはロマンチックな使い方もできたようだ。エレガントなスタイルや、走りを意識したスペック、内装の快適性、152万円台(XZグレード)の若者の手が届きやすい価格設定など、同モデルが“デートカー”として名を馳せた理由が、この組み合わせに詰まっていた。

続く87年発売の3代目では、2代目の空力性能を引き上げ、流麗なエクステリアに昇華。世界初の量産車用4WS(四輪操舵)やエンジンの高出力化、ボディー剛性アップなど、最新技術を盛り込んでブラッシュアップした。国内販売台数は約17万5000台にのぼり、シリーズ最大のヒットを記録した。以降、4代目では燃費とパワーを両立可能にする“VTEC”を、5代目ではカーブの走行安定性に起用する駆動力配分機構の“ATTS”などの先進技術を導入するも売り上げに伸び悩み、2001年に生産終了した。

それから24年。エレガントなスタイルと快適性を備え、技術で時代を切り開く開発姿勢を受け継ぎながら、「電動化時代にふさわしい新たな“スペシャリティスポーツ”」として再定義し、6代目“プレリュード”を打ち出したのだ。

優雅な滑空を体現した
個性的なシルエット

“グライダー”を着想源とした同モデルのコンセプトは“UNLIMITED GLIDE“。「優雅に滑空するような高揚感と非日常のときめきを感じさせるクルマ」を目指したという。伸びやかなエクステリアは、その走りを体現している。

低く、広く構えた大枠のスタイルは先代までを踏襲しながらも、ロングノーズ、ショートデッキのレイアウトとは異なる。ノーズを縮めてルーフの頂点をやや高く前方寄りに設定し、 まさに揚力(浮き上がる力)を受けながらの滑空を思わせる、個性的なシルエットを形作っている。薄くエッジのきいたヘッドライトにはストライプのディテールを施し、左右に広げた翼のようなダイナミックさを演出。前後のバンパー下部に配したブルーのアクセントも、アイコニックな造形の一つだ。

エクステリアの中でも、リヤの造形がとりわけ印象的だ。なだらかなルーフラインと一文字に光るテールライト、“Prelude”の筆記体ロゴの組み合わせが洒落ている。さながら欧州メーカーのRRスポーツのような垢抜けた佇まいだ。マフラーを見える箇所に出さなかったのは、未来感を押し出す演出だろうか。信号待ちでは、後続車から見える姿を想像して、思わず得意げな表情になってしまう。

快適性と走りへの期待感が
同居するインテリア

シートレイアウトは2+2。ヘッドクリアランスは必要十分で、ボディータイプから想像するほど狭く感じない。試乗車の内装色は“ブルー&ブラック”で、和紙を思わせる柄のライニングに施した、刺しゅうロゴがまず目に入る。ブルーとホワイトの2色を巧みに使い分けたステッチワークも上品だ。インパネ周りは水平基調で、運転席からはステアリングやモニターの上部がフロントガラスの下端と一直線にそろっており、前方視界は凹凸もなくクリーン。D形ステアリングやセンターマーカー、金属製のパドルシフトなど、走りへの期待感をあおる要素も、絶妙なバランスで散りばめている。シンプルながらも小洒落た印象だ。

スポーティーでありながら、上質で快適。“スペシャリティスポーツ”としてのこだわりで興味深いのは、運転席と助手席で座面を作り分けたパーソナルシートだ。ホールド力の高いバケットタイプの背面をベースに、運転席にはサイドサポートにワイヤーを通し安定感を高め、スポーツ走行に適したシートに。助手席は座り心地を柔らかに、乗降しやすいように低めのサイドサポートを採用。助手席に座る“大切な人との時間”を意識した粋な計らいは、“プレリュード”の系譜であることの象徴だ。

後席は、FFレイアウトのおかげでセンタートンネルが低く足の逃げ場があり、多少体の自由が利く。170cm以下の身長で、最寄り駅への送迎程度であれば居心地の悪さを感じることはないだろう。ちなみに後席倒せば、9.5型のゴルフバッグが2個積載可能。2人での長距離旅行も想定した、十分な積載量を備えている。

パワーシートやステアリングヒーターなど、近年標準的な装備になりつつある機能がオプションでも設定がない点は、同モデルの開発コンセプトを考えれば少し寂しい。

「ほぼバッテリーEV」な走りと
「ほぼ純内燃機関車」な加速感

同モデルは、ホンダ独自の次世代“e:HEV”をスポーティーに仕立てて搭載する、変速機を搭載しないハイブリッド車。高速巡行時以外はモーターで駆動するため、市街地走行時のフィーリングは静かでスムーズ。「ほとんどバッテリーEV」だ。ステアリングは左右1回転ずつで最大舵角に達するスポーティーな仕立て。シャーシを共有する「ホンダ」が走りを極めた5ドアのスポーツハッチバック“シビック タイプR”譲りのキビキビとしたステアフィールが特徴だが、全ての舵角で鋭敏に反応するわけでなく、切り始めはゆったりとしたマージンを設けているところが、「やる時はやる」紳士的なチューニング。急ブレーキ時には、ブレンボ製の4ポッドキャリパーが全輪をガッチリ挟みこんでピタリと頼もしい。手元のパドルシフトでは、回生ブレーキの効きを8段階で細かく調節できる。これによってほぼワンペダル走行が可能で、足の乗せ替えも少なくスマートに走行できた。

高速の合流地点でアクセルを目一杯踏み込むと、発電を担うエンジンが始動する。アクセル開度に合わせたエンジン回転の上昇と、それと同期したエンジン音をスピーカーから感じられる。モーター主体の駆動としつつ、それでは補いきれない加速操作への反応性を高めているのだ。飛び出すような加速力はないが、日常使いには十分。“LKAS(レーンキープアシストシステム)”がとても賢く、ステアリングを軽く握っているだけで、車線中央を自動で維持して走行できる。クルーズコントロールと組み合わせれば、長距離ドライブも快適だ。

走行モードによるフィーリングの変化が、意識を研ぎ澄まさずとも感じ取れるのも魅力の一つ。“コンフォート”から“スポーツ”へ切り替えると、足まわりやステアリング、レスポンスの穏やかさが、引き締まったスポーティーな感触へと変わる。その変化幅は、“プレリュード”が持つ二面性そのもの。“GT”はそれらの間に位置するモードで、“インディビジュアル”モードでは、ステアリングや足回りは“コンフォート”でゆったりと、レスポンスは“スポーツ”で機敏に、といった具合に細かく変更できる。

“S+”ボタンを押すと、ホンダ初搭載の制御技術“ホンダ S+シフト“が作動し、走りの高揚感が一段引き上がる。仮想の8速ATを介して、加減速に応じたエンジン回転数を実際に制御し、シフトショックを含めた加速フィールまで体感できるのだ。作動中は車内に響くサウンドも一段と存在感を増し、シフトダウン時には自動でブリッピングして快音を響かせる。メーター内には擬似的なタコメーターが表示され、アクセルをしっかりと踏み込めば、レッドゾーンまできっちり回り切ってから変速。基本はオートだがパドルシフトでの変速も可能で、つい低速ギアで回転数を上げたくなる。サウンドやシフトショックも嫌な誇張がなく、乗っている感覚は「ほとんど純内燃機関車」だ。

全幅1880mmは決して小さくなく、最小回転半径も5.7m。道幅の狭い道での右左折やUターンでは、大回りを強いられる場面がある。360度カメラも備わっていないため、イレギュラーな道路状況での取り回しには、ある程度の慣れが必要だろう。

“自然な走りの楽しさ”の搭載は
ニューベーシックになり得るか


令和に復活した“デートカー”は、スポーティーさと快適性を両立するという本質を継承しつつ、電動技術によって走りと乗り味を磨き上げ、同乗者と過ごす時間の質を高める紳士的な一台へと成熟。車内に響く快音は、電動化時代に向けた次なる章の幕開けを告げる前奏曲そのものだった。

“走りの楽しさ”を再構築した例は、「レクサス(LEXUS)」のバッテリーEV“RZ”の“インタラクティブ マニュアルドライブ”が記憶に新しい。擬似変速をマニュアル操作で強制する同システムは、操る楽しさを前面に押し出した、スポーツ色の濃い挑戦的な提案だったが、“ホンダ S+シフト”が追求したのはあくまで自然なフィーリング。アクセルワークのみで誰もが高揚感を得られるように設計されていた。

「ホンダ」は今後、このシステムを次世代の“e:HEV”モデル全てに順次搭載するとしている。これらの機能は“走りの楽しさ”だけでなく、走行速度とドライバーの感覚のズレを抑えるという点で、安全性の向上にも寄与する側面を持つ。メーカーや車種を問わず、モーター駆動ハイブリッドのニューベーシックになり得る可能性を十分秘めているのだ。

◼️車両情報
“プレリュード”
車両本体価格:617万9800円
駆動方式:FWD
パワートレイン:e:HEV(2モーター+2.0L直列4気筒エンジン)
全長×全幅×全高:4520×1880×1355mm
車両重量:1460kg

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