
上村英太郎デザイナーによるウィメンズブランド「エイタロウ(EITARO)」は9月19日、デビューとなる2026年春夏コレクションをショー形式で発表した。上村デザイナーは23年に香蘭ファッションデザイン専門学校ファッションデザイン専攻科を卒業。同年、第97回装苑賞でグランプリを獲得した。今回は同賞のバックアップを受け、資生堂のヘアメイクアップアーティストを迎えて渋谷のトランクホテルで行った。
学生服を再解釈した青々しいデビューコレクション
テーマは「サナギ」。幼虫から成虫へと変わる過程をインスピレーション源に、「チョウと同じように、成長していくサナギの姿も美しいのでは」と、社会人2年目の“未完成な大人”という等身大の自分と重ね合わせた。そして、数年前まで着用していた学ランやセーラー服といった学生服にオマージュし、台頭するブレザーとは違う、スタイルの多様性と独自性を描写した。「僕は中高生時代、真面目な学生生活を送っていたので、制服をアレンジしたことはなかった。でもその不規則なルールがファッションというカルチャーとして根付いていくことに面白さを感じた」。
学ランは、オリジナルツイードで仕立てた短ランやデニムのオールインワンで再解釈。また、特徴的な詰め襟は多角的に模索し、胸元が大きく開いたテーラードジャケットや襟にフリルのようなうねりを加えたベロアジャケットなど、クラシックな素材や女性らしいシルエットを通じてエレガントに昇華した。カンコー学生服と協業したオリジナルのボタンもアクセントになった。
さらに、サラシを思わせるビスチエや体操着のようなトラックジャケット、ブルマー風のマイクロミニパンツといった着想源を派生させながらも、“腰パン”にインスパイアされたような3つのウエストを重ねたスラックスや、学ランとプリーツスカートを組み合わせたドレスなど、「コスプレ見えしないように」と工夫を凝らしたルックもあった。インナーパンツがのぞくほどローウエストに設計したオーバーサイズのパンツは、脱ぎ落ちそうなほどの大胆なシルエットが会場の視線を集めた。
知識ゼロの悔しさをバネに、グランプリをつかむ
上村デザイナーは2001年生まれ、山口県出身。実はファッションの専門学校に進む直前まで、中高一貫校で寮生活をしながら医学の道を志していた。しかし進学に挫折したことを機に、新たな知識や学びを求めて、興味のあったファッションに進路を転換。とはいえ、「ファッションの専門知識は全くなかった。専門学校に入ったとき、日本のブランドは『ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)』の名前しか知らず、『イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)』や『ダブレット(DOUBLET)』などのブランドに詳しい周囲との差に悔しさを感じた」と振り返る。そこからファッションに関する知識を吸収し、入学時に掲げた装苑賞受賞という目標を実現させた。
そして卒業後の23年に自身の名を冠したブランドを立ち上げた。コンセプトは「叙情服」。人の気持ちや感情を映し出すモノづくりを根底にとらえ、「いつか社会に直接影響を与えられるブランドにしたい」と語る。まずは東京コレクションへの公式参加や国内のアワード獲得が目標だ。“競合”として挙げたのは、「フェティコ(FETICO)」と「アキコアオキ(AKIKOAOKI)」。「コンセプトを重視した服作りと、ストレートに表現できる自分だからこそ打ち出せるウィメンズ服で勝負したい」と意気込みを示した。