資生堂は4月15日、米州地域のロン・ジー(Ron Gee)最高経営責任者(CEO)兼グローバルM&Aリーダーが14日付で退任したことを発表した。アルベルト・ノーエ(Alberto Noe)欧州地域CEOが15日付で米州地域の暫定CEOを兼任する。
ノーエ欧州地域CEO兼米州地域暫定CEOは2013年に資生堂コスメティチ・イタリア(SHISEIDO COSMETICI ITALIA)の社長に就任し、欧州地域に10年以上勤務した。それ以前は「ランコム(LANCOME)」イタリア事業部のジェネラル・マネジャーを務め、「シャネル(CHANEL)」やLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)にも在籍していた。
ジー米州地域 前CEO兼グローバルM&Aリーダーについて
ジー米州地域 前CEO兼グローバルM&Aリーダーの退任に関して、「魚谷雅彦・前会長CEOが12月31日付で退任し、後任に藤原憲太郎が抜擢されたことも関係しているようだ」と情報筋は米「WWD」に話した。ある業界関係者によれば、「ジー米州地域 前CEO兼グローバルM&Aリーダーは、魚谷氏の部下だった」という。
ジー米州地域 前CEO兼グローバルM&Aリーダーは化学エンジニアから財務に転身し、21年7月に米州地域のトップに就任した。それ以前は、16年から同地域の最高財務責任者(CFO)を務め、マーク・レイ(Marc Rey)元社長CEO兼チーフ・グロース・オフィサーが退任した20年からは暫定CEOを務めていた。
ジー米州地域 前CEO兼グローバルM&Aリーダーは在任中、皮膚科学をベースにした米国発プレステージスキンケアブランド「ドクターデニス グロススキンケア(DR.DENNIS GROSS SKINCARE)」を手掛けるDDGスキンケアホールディングス(DDG SKINCARE HOLDINGS)の買収を主導。米「WWD」はまた、一時はスキンケアブランド「オーシア(OSEA)」の買収を検討していると報じたが、実現には至らなかった。
米州地域は「ドランク エレファント」の回復遅れにより減収
資生堂は苦戦を強いられており、24年のコア営業利益(営業利益から非経常項目を除き算出)は前期比8%減の364億円に落ち込んだ。米州地域は同年の第2四半期から業績不振に陥っている。同地域の通期売上高は同7%減少し、一方で欧州地域は同8%増加。米州地域のコア営業利益は同98%減少した。
米州地域のポートフォリオに属する「ドランク エレファント(DRUNK ELEPHANT)」の売上高は25%減少と、回復が遅れたことが減収の一つの要因となった。資生堂は19年、グローバルでの存在感を高めるために「ドランク エレファント」を8億4500万ドル(約1199億円)で買収。当時同ブランドの売上高は1億ドル(約142億円)近くと報告されていたが、最近では需要が大幅に鈍化し、ネット上では消費者の批判にさらされているようだ。
24年にブランド誕生30周年を迎えた、同地域のポートフォリオに属する「ナーズ(NARS)」の売上高は横バイだった。さらに複数のブランドでサプライチェーンの問題が発生し、ベストセラー製品に影響が出たという。米州地域での苦戦に加え、中国の経済成長の減速を受け、同国の免税小売市場である海南島も長きにわたり困難に直面している。
資生堂は24年11月29日、2カ年計画「SHIFT 2025 and Beyondアクションプラン2025-2026」を発表。主力ブランドに集中し、ブランドと地域での連携したオペレーション体制の強化に取り組むと述べた。売上高が1000億円を超える「シセイドウ(SHISEIDO)」「クレ・ド・ポー ボーテ(CLE DE PEAU BEAUTE)」「ナーズ」を“コア3”に設定。次の売上高1000億円ブランドとして「アネッサ(ANESSA)」「ナルシソ ロドリゲス(NARCISO RODRIGUEZ)」「イッセイ ミヤケ パルファム(ISSEY MIYAKE PARFUME)」「エリクシール(ELIXIR)」「ドランク エレファント」を“ネクスト5”と位置づけていた。
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