2025年1月からWWDJAPAN.comでマンガ版「ザ・ゴールシリーズ 在庫管理の魔術」が連載中です。在庫過剰に陥ると、つい値下げセールに頼ってしまう――。しかし、本当にそれしか方法はないのか?利益を高め、最大化するための解決策を、アパレル在庫最適化コンサルで「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」(共に日本経済新聞出版)の著者である齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、同マンガを読みながら、解説して行きます。
在庫は量よりも、その中身が大切
第1話では、多くのアパレル店舗が経験する"売れ残り在庫の値下げ処分"の現実が描かれています。特にそれを象徴しているのが、最後の方で「ハンナズ」の店長を務める主人公・安堂徹が「こんなに安くしても売れない……」と嘆くシーンです。
マンガ「在庫管理の魔術」の第1話は コチラ 。
アパレル店舗の多くは、在庫が過剰になると、販売価格を下げてセールを実施します。でも、失敗に終わることはよくあることです。思ったような売り上げが立たない――。こうした状況になる理由は何でしょう。
店頭の在庫が多ければ、お客さまは、欲しい商品が店内にあるのでは?と期待します。しかし、その一方で、実際に品定めを始めてみたものの、自分が欲しい商品の、お気に入り色の、自分のサイズがなければ、お客さまは買ってはくれません。シーズンの最盛期から後半にもなれば、人気色のサイズが歯抜けになっていることも珍しくありません。在庫は量よりも、その中身が大切なのです。ここがセールを実施する時の落とし穴です。
アパレルに限らず、小売りビジネスの起点は、お客さまの需要であることは言うまでもありません。お客さまが何かが欲しいと思って来店した時に、店頭に在庫を揃えておくことが、小売業の使命です。
在庫が過剰だからといって安易にセールを行うと、お客さまは"欲しい商品がない"と感じ、期待を裏切られてしまいます。その結果、定価で購入してくれる本来のターゲット層が離れ、代わりに"安く買いたいだけの客"が増加。値下げを繰り返せば、価格競争に巻き込まれ、利益率はさらに低下。やがて値下げしなければ売れない状態に陥ります。
一時的に来店客は増えても、"欲しいものがないセール"では、かえって不満を生むだけです。「安いけど魅力がない店」と思われれば、リピーターが減り、ブランド価値も下がります。
在庫が過剰になれば、値下げに頼るしかない……そんな状況から脱却し、利益を最大化するにはどうすればいいのか?
第2話以降、需要予測や適正在庫の考え方について詳しく解説して行きます。