「シャネル(CHANEL)」は9月30日から10月20日まで、六本木ヒルズ(東京・港区)上層の森アーツセンターギャラリーと東京シティビューで、同ブランドのファッションにおけるメティエダール(芸術的な手仕事)の中心を担う、専門アトリエが集結する複合施設「le19M」に関するエキシビジョンを開催する。「le19M」は、パリの19区に「シャネル」が構えた、サポートする11のアトリエが集結する施設。ここで働く約700 人の職人は、工房ごとに刺しゅうやプリーツ、金細工、羽根細工などに携わり、「シャネル」の洋服を彩りながらサヴォアフェール(ノウハウや匠のわざ)を体現。「シャネル」のみならず、他ブランドの洋服やインテリアの装飾にも携わっている。エキシビジョンは、刺しゅうのアトリエで1924年に誕生したルサージュの100周年を振り返る回顧展と、5人のクリエイティブなゲストが監修するアトリエと日本の職人技によるクリエイションの紹介の2部構成で、情熱を持った職人たちが技術を伝承する意味を発信する。会場の一部は、田根剛率いる ATTA が手掛ける予定だ。
「le19M」のプレジデントも務めるブルーノ・パブロフスキー(Bruno Pavlovsky)、シャネル ファッション部門兼シャネル SAS プレジデントは、「大切なのは、専門技術を持ったアトリエにふさわしい空間を提供し、製品に魂を吹き込む職人の存在を可視化すること。それは、新たな人々や若い世代を引きつけるだろう」とコメント。一方で「le 19Mを構えて多くのメゾンダール(アトリエのこと)を集めたのは、その独自性を示すのみならず、意見交換することで進化すれば、メゾンダールは今以上の存在感を発揮できると考えたから」として、le19Mのメティエダールと、日本の職人や職人技との対話や融合を試みる。
そこでメティエダールと日本の職人技による技術の展示は、異なる分野で活躍する5人のクリエイティブなゲストが監修。映画監督の安藤桃子キネマ ミュージアム代表、マガジンハウスが発行する「カーサ ブルータス(Casa BRUTUS)」の西尾洋一編集長、緒方慎一郎SIMPLICITY 創業者兼クリエイティブディレクター、キュレーターの德田佳世、そしてle 19Mに拠点を置く刺しゅうのメゾンダール、モンテックスのアスカ ヤマシタ・アーティスティックディレクターが、le 19Mと共鳴する日本の職人技を監修する役割を担う。伝統と、その現代的な解釈の双方を楽しむことができるワークショップなども催す予定だ。
Le19Mによる国際的なエキシビジョンは、2023年のダカールに続いて2回目。ダカールでは、前年に開催したメティエダール・コレクションのファッションショーに次ぐ形で、3カ月にわたりle19Mの展示会を開催した。ブルーノ・プレジデントは、「我々はダカールで、人々が交わり、文化が交わり、アイデアが交換されるからこそ、人間は刺激を受け、メティエダールを含む文化は進化するという感覚を得た。きっと、日本でも同じような化学的反応が生まれるだろう」とコメント。来場者にメティエダールの価値を伝えるのみならず、「モンテックスのアスカ(アーティスティックディレクター)も、ダカールでは地元の文化や伝統を学び、その価値はもちろん、継承している人たちの想いまで感じとった。一連の刺激はインスピレーションになって、日々の仕事をより豊かなものにしている」とle19Mの更なる活性化にも期待を寄せる。