ロックバンド、ニルヴァーナ(NIRVANA)の超希少なビンテージTシャツコレクション200枚を掲載した「NIRVANA T-SHIRT BOOK HOW LOWNG?」(リットーミュージック)が12月20日に発売された。
近年、世界的な盛り上がりを見せているビンテージTシャツでも特に人気のニルヴァーナのTシャツ。同書では、1990年代のTシャツの中でも、特に希少な200枚以上を掲載。その多くはニルヴァーナTシャツの世界的コレクターの門田健が所有するものだという。加えて、本書をプロデュースした「ベルベルジン」「フェイクα」のスタッフで、ニルヴァーナ・マニアの門畑明男による7万字に及ぶカート・コバーン評伝も掲載されている。
今回、書籍「HOW LOWNG?」の見どころとニルヴァーナTシャツの魅力について門畑と門田の2人に聞いた。
「HOW LOWNG?」の構成
WWD:「HOW LOWNG?」は門畑さんにとっては、2冊目のニルヴァーナTシャツ本ですが、出版の経緯は?
門畑明男(以下、門畑):もともと2018年に1冊目(「NIRVANA T-SHIRT BOOK HELLOH?」)を出版した時点で、ある程度自分の持っているコレクションは出し切ったので、2冊目は考えていませんでした。でも、ニルヴァーナTシャツを200枚以上持ってるというコレクターの門田さんと知り合って、門田さんのコレクションをお借りできれば2冊目もできるんじゃないかなと思い始めていた時に、1冊目の編集を担当した米田(圭一郎)さんから「カート(・コバーン)の本を出しませんか」と電話があって。ちょうどいいタイミングだなと思い、「カートの本ではないですが、ニルヴァーナのTシャツ本をもう1冊作りませんか」と提案して、それで2冊目を出すことになりました。
WWD:構成は前回と今回でどう変えたんですか?
門畑:今回掲載しているTシャツに関しては、9割ほどは門田さんのコレクションで、前回は基本「メード・イン・USA」が多かったんですけど、今回は「メード・イン・ヨーロッパ」の物が多いのと、90年代のブートも多く掲載しています。
門田健(以下、門田):1冊目は公式のアイテムや古着として価値の高い「メード・イン・USA」のTシャツが大半を占めていましたが、今回はヨーロッパの公式アイテムだったり、本当に手に入らない貴重なブートだったり、世界中の珍しいものを集めました。コレクターでもなかなか見たことがないTシャツも掲載しているので、本気のコレクターには今回の方が楽しめると思います。
WWD:やはりブートも人気なんですね。
門畑:そこはファンでも結構意見はわかれると思いますね。オフィシャルしか認めない人もいれば、ブートの方が好きという人もいる。オフィシャルはオフィシャルでデザインもしっかりしているんですけど、ブートの方が自由な発想で作っているので、デザイン的に遊び心もあって、面白いデザインも多くて、好きな人は多いですね。でも、そういった物って、基本的に店に出回らなくて、コレクター同士で取り引きされているので、なかなか見つけられない。今回の本は普段は表に出ないような貴重なTシャツが掲載されています。
門田:90年代は海外アーティストのライブ会場の外でよくTシャツを販売していたんです。「パーキングロット」、「駐車場Tシャツ」なんて言われてますが、日本でも海外の大物アーティストのライブに行くと、大抵売ってましたよね。個人が勝手にツアーの日程などを入れたものとか。
このラストアルバム「イン・ユーテロ」のジャケットデザインを大胆にアレンジしたTシャツは、94年の2月のイタリア公演の時に売られたもので。総柄で、アートワークも手描きで相当好きな人がデザインしたんだなって感じです。僕は2000年からニルヴァーナTシャツを集めてきて、これは他では見たことがないです。値段もつけられないくらい貴重な1枚ですね。
ニルヴァーナのTシャツの魅力
WWD:近年、ビンテージTシャツの値段がどんどん上がっています。その中でもニルヴァーナのTシャツは特に人気です。
門畑:もともと3000円、5000円だったものが、2010年前半ごろに7000〜8000円になって。10年代半ばにはそれが2万円くらいになって、17年には平均4万円ぐらいになっていきました。今だと平均10万円ぐらいじゃないですか。もちろん何百万円するものも、もっと安いものもありますけど。
WWD:ニルヴァーナTシャツの魅力は?
門田:僕はやっぱりその種類の多さだと思います。他のバンドと比べると、圧倒的に多い。だからまだ持っていないTシャツもあって、探す楽しさもあります。あとは、やっぱりカートの生き様もあって彼の死後も人気は衰えない。だからこそ、ニルヴァーナTシャツを着たいと思う人も多いんだと思います。
門畑:僕が初めて買った時は、ただニルヴァーナが好きで買って、気が付いたら130枚も持っている。コンプリートするのが他のバンドに比べて難しいっていうのも魅力だと思うんですけど、やっぱりニルヴァーナの音楽やカートがかっこいいからそこに惹かれるんだと思います。
WWD:2人はどのTシャツがお気に入りですか?
門田:僕はこういうヨーロッパのブートに多いタイダイ柄のものが好きです。最初に無地のTシャツをタイダイに染めて、その上にプリントするので、ニルヴァーナだけではなく、他のバンドでも同じ柄が存在するんですよ。でも、このタイダイ柄のニルヴァーナTシャツって作られた数が少なくて、なかなか見つからないんです。
門畑:僕はすごく価値があるわけではないですが、個人的にこのカートがギターを弾いているTシャツです。この写真がすごく好きで。カラーも黒、白、赤。これは20代前半の時に高円寺の古着屋で買ったんですけど、当時はよく着ていました。今回の本では、前回とTシャツはあまりかぶらないようにしてるんですけど、これだけは今回も最後の締めとして掲載しました。それくらいやっぱり好きですね。
WWD:Tシャツのサイズは基本XLかLですよね。
門田:90年代の海外のバンドTシャツはやっぱりサイズが大きいのが主流で、ほとんどLより上ですね。逆に80年代とかそれより前になると、ビンテージの価値は高いんですけど、サイズは小さかったりします。
門畑:昔はプリントする版が一緒で、おそらくLかXLに合わせて版を作っていたと思うので、SとかMサイズだとプリントが入りきらなかったというのもあるんだと思いますね。
WWD:2人はまだ探しているアイテムはありますか?
門畑:もともと僕は探して買ったというのはほとんどなくて。130枚持っているんですけど、どれも古着屋でたまたま見つけて買ったという感じで、個人的に探して買ってはいないです。昔はそこまで競争率も高くなかったので、それができていたんですが、今だと難しいですね。
門田:僕は探しているものはありますね。詳しく言ってしまうと僕が買えなくなってしまうので、言えないですが(笑)。
WWD:門田さんはどんなTシャツがあるのか、全部把握しているんですか?
門田:やっぱり20年以上見ているので、だんだん分かってきましたね。
WWD:それこそ今ニルヴァーナのビンテージTシャツを探すとなると、どこで探すんですか? タイやカンボジアなどは注目されてますけど?
門田:タイにはまだいっぱいあると思います。パキスタンからタイにいっぱい流れてるので。でも、今だともう素人でもオンラインで売れてしまう時代なので、日本人がかなり買いに行っていて、なかなか一般の人がいいビンテージTシャツを探すのは難しいですね。僕の場合は長くお付き合いして信頼関係を築いてきたヨーロッパや南米、アフリカの友人からの紹介で、売ってもらう方が多いです。
WWD:最後に今回の本のおすすめポイントは?
門畑:ニルヴァーナのTシャツを集めている人も、そうじゃない人も楽しめるようなTシャツのラインアップになっていますし、ニルヴァーナ好きな人なら楽しめると思います。
あと、個人的には一応Tシャツの本ではあるんですけど、7万字のカート・コバーンに関する評伝を書いたので、それもぜひ読んでほしいです。結構今はTシャツが独り歩きしちゃってるじゃないですか。ニルヴァーナは聴いたことはないけど、Tシャツは好きっていう。僕の場合はニルヴァーナが好きで、Tシャツを買い始めたので、もしニルヴァーナの曲を聴いたことがない人はこれをきっかけに聴いたり、過去のライブの映像を見たりしてほしいなっていう気持ちを込めて書きました。だからこそ、Tシャツだけではなく、少しでもニルヴァーナの音楽に興味を持ってもらえればいいなと思います。
PHOTOS:MASASHI URA
「NIRVANA T-SHIRT BOOK HOW LOWNG?」
■「NIRVANA T-SHIRT BOOK HOW LOWNG?」
著者:門畑明男
定価:6050円
仕様:B4変形判(240mm×240mm) / 144ページ
発行:リットーミュージック
https://www.rittor-music.co.jp/product/detail/3124317109/