PROFILE: 高見澤璃奈/「美容室サロンド30」オーナー

全国の美容師・ヘアメイクアップアーティストを対象とし、昨年開催したフォトコンテスト「第6回 WWDBEAUTY ヘアデザイナーズコンテスト」では一般投票部門グランプリを、今年の同コンテストではグランプリ部門準グランプリを受賞した、高見澤璃奈「サロンド30(salon-de 30)」代表。一般ウケする作品が求められる部門と、(グランプリ部門の審査員である)プロの美容師をうならせるクオリティーが要求される部門、その両部門で受賞できるヘアアーティストは珍しく、その手腕が高い評価を得ている。ここでは同氏のクリエイティブ活動と、着想源に迫る。
WWD:クリエイティブ活動を始めたきっかけは?
高見澤璃奈代表(以下、高見澤):学生時代から創作活動が好きで、中学・高校時代は美術部で部長を務めていた。理美容専門学校ではヘアアートとネイルのコンテストで受賞、卒業してから入社したソシエでも社内のフォトコンテストで準グランプリを受賞するなど、ずっと作品作りが好きだった。
WWD:その流れでヘアサロン業界のコンテストに応募するように?
高見澤:キャリアのスタートは東京のソシエ勤務だったけれど、私の実家が長野県で美容室を開業していて、6年間東京で修業した後に戻って来る約束だった。長野に戻って、今から約4年前に大きな転機があった。それは、数々の美容コンテストでグランプリを受賞している、ヘアサロン「シャウルデッサン(CHARLES DESSIN)」の黒木利光さんとの出会い。黒木さんの周囲(オンラインサロンなど)では、“ジャパンヘアドレッシングアワード”(日本最高水準のヘアコンテスト)で受賞常連のクリエイターたちが創作活動をしていて、そのメンバーに入れてもらうことができた。それ以来、作品の撮影などはそのメンバーにお願いするようになり、クオリティーが上がっていったことで、業界のコンテストにチャレンジするようになった。今は母と一緒に長野の美容室でサロンワークをしながら、月1作品くらいのペースで創作活動をしている。
WWD:どのような系統の作品を作っている?
高見澤:ソシエに所属していた頃から、自身でもコスプレをするくらいアニメやゲームが好きだったので、そのテイストは常に作品に投影されていると思う。当時はコスプレ仲間をモデルにして作品を作っていたが、アングルや目線、表情などに徹底的にこだわる人たちなので、撮り方の勉強になった。コロナ禍を境に、あまり(アニメ好きが集う)コミックマーケットなどに行かなくなってしまったので、今はインスタグラムでフリーモデルを探してお願いしている。
WWD:具体的に、どのように作品を創作している?
高見澤:まず着想は、ティックトックやピンタレストなどのアプリから得ることが多い。私は音楽や絵画が好きなので、ティックトックでは音楽、ピンタレストでは絵画の検索履歴から提案される情報に刺激を受けている。例えば最近は“妖怪”がマイブームで、ピンタレストでよく検索しているので、次回の作品はダークでグロテスクなものになるかも。モデルと衣装に関しては、気になったモデルと衣装をアプリ上で合成し、さらにイメージしている世界観の背景も合成して、アプリ上で簡易的な作品を作って似合わせを判断することが多い。特に、肌の色と服の色とのマッチングは重要なので、モデルに声掛けする前にシミュレーションしている。
WWD:「ヘアデザイナーズコンテスト」の受賞作品は、どこからイメージした?
高見澤:一般投票部門グランプリを受賞した作品は、その前年がコロナ禍で家に居ることが多く、「何か楽しいことをしたい=ゲーム」という発想から、ゲームキャラクターの“ピクミン”をモチーフにした。衣装のインナーは、実は母が趣味の“ズンバ”を踊る際に着ているダンス衣装。ダンス衣装には個性的なものが多く、ポイントとして使うことも多い。
WWD:今年、準グランプリを受賞した作品は?
高見澤:“はかないイメージ”を作りたい気分だったので、アンニュイなモデルを探し、作品のテイストを、そのモデルのインスタグラムの世界観に合わせた。また、「はかない」で検索すると“押し花”が出て来て、その中に葉の葉脈がきれいな作品があり、インスピレーションを受けた。そこで、モデルの髪を葉脈に見立てて創作し、押し花のように立体感のない衣装を選んだ。今回のコレクショントレンドに“クワイエット・ラグジュアリー”があり、「上質だけど過度な立体感で主張しない服」はマッチしていると思い、その方向性で作品を仕上げていった。
WWD:今後やりたいことは?
高見澤:長野県からクリエイティブを発信している美容師は比較的少ないので、今後も仲間を集め、発信を継続していきたい。