ファッション

LVMHが伝説の2ブランドを復活 「ジェラルド・ジェンタ」「ダニエル・ロート」再興の経緯

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すでに1カ月以上前のことだが、LVMH モエ ヘネシー ・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)グループは、毎年1月に開催する新作時計の見本市「LVMHウォッチウィーク」でグループ傘下の「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」と「ゼニス(ZENITH)」「ブルガリ(BVRGALI)」「ウブロ(HUBLOT)」「タグ・ホイヤー(TAG HEUER)」の新作時計を発表した。

「ジェラルド・ジェンタ」と「ダニエル・ロート」
「ルイ・ヴィトン」傘下となって“復活”

その中には、新たに「ルイ・ヴィトン」傘下となって“復活”を宣言した、ふたつのブランドの画期的な新作もあった。そのブランドとは「ジェラルド・ジェンタ(GELARD GENTA)」と「ダニエル・ロート(DANIEL ROTH)」。2011年にこの世を去ったジェラルド・ジェンタが立ち上げたブランドは、さまざまなブランドの傑作となったデザインを提供した“世界最高の時計デザイナー”として知られている。一方、伝説の時計師として知られるダニエル・ロートが始めたもうひとつのブランドは、今では時計愛好家の間でしか知られていない状況だ。

ではなぜLVMHグループの時計部門は、このふたつのマニアックなブランドを“復活”させたのだろうか。また、なぜ2000年から「ブルガリ」傘下にあったこのふたつのブランドは「ルイ・ヴィトン」傘下に移管したのか。LVMHグループが買収する十数年前の1995年から、このふたつのブランド、創設者のふたりを取材してきた時計ジャーナリストとして考察・解説したい。

まず、LVMHは何のために「ジェラルド・ジェンタ」と「ダニエル・ロート」を復活させたのか?それは、自分たちの時計事業に対する本気と、時計文化に対する奥深い造詣や敬意を具体的に示し、時計部門の未来への大きなビジョンを世界にアピールするためだ。

現代の時計デザインにおいてジェラルド・ジェンタがいかにケタ違いに偉大な存在かは、2022年にオークションハウスのサザビーズが、彼がデザインした時計やデザイン画、絵画のオークションを大々的に開催したことで、時計愛好家以外の一般の人々にも知られるようになった。

現代の高級時計市場を創造したジェラルド・ジェンタ

ジェラルド・ジェンタと彼のブランドから生まれた時計の価値、その影響は「時計デザイン」の世界に留まらない。限りなく大きなものだ。思い切って言わせて頂ければ「現代の高級時計市場は、ジェラルド・ジェンタが創造した」と言っても言い過ぎではない。

現代の高級時計ブームは、クオーツ時計の登場により“オワコン”と思われていた機械式時計を1980年代末から90年代に「機械の芸術品」として再定義することで始まった。その究極を目指し、絵画のように歴史的・文化的資産として取引される複雑時計やハイジュエリーウオッチは間違いなく、ジェラルド・ジェンタと、1968年に創設された彼のブランドが時計業界に先駆けて生み出したものだ。

そして、デザイナーよりも裏方的な時計師、ダニエル・ロートと彼のブランドも、ジェラルド・ジェンタと同様に偉大な存在だ。

トゥールビヨン機構の研究で「ブレゲ」を復活させたダニエル・ロート

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