ビジネス

高知大丸にみる地方百貨店の生き残り策

高知県で唯一の百貨店、高知大丸が生き残りをかけた変革を進めている。2021年から22年にかけて全売り場の7割を改装。従来の百貨店MDを圧縮し、集客の要になる専門店を入れた。同時に社員数を半分にする構造改革も断行した。山形県、徳島県、島根県など全国に「百貨店ゼロ県」が増える中、小島尚社長は「まだまだ百貨店としての戦い方はできる」と話す。

婦人服のOMOストアに手応え

2年前の改装では、消化仕入れで運営する百貨店区画の売り場を全体(約1.5万平方メートル)の6割に縮小し、残りの4割に集客力が期待できる専門店を入れた。専門店はハンズによる雑貨店「プラグスマーケット」、地元の家具店「シマダヤ」、アウトドア店「好日山荘」、オフプライスショップ「ラックラック」など。一方、百貨店区画で面積の大きかったアパレルは圧縮した。それに伴い、売り場にかかわる社員も減らした。

小島社長は「従来型の百貨店MDでは毎年5%ずつ売り上げが減っていた。お客さまの買い物の仕方や価値観が変わる中、大ナタは不可欠だった」と説明する。

ただ、現時点では期待したほどの成果が得られていない。本館4階のほぼ1フロアを占めるプラグスマーケットは手薄だった若い世代の集客につながっているものの、専門店による全体への波及効果は限定的だ。24年2月期の客数も前期比4%減の見通しとなる。専門店と連携した集客策に知恵を絞る。

集約した百貨店MDの中では、オンワード樫山による「オンワード・クローゼットセレクト(OCS)」が成果を見せている。オンワード樫山の「23区」「ICB」「組曲」など複数のブランドを扱うOMO(オフラインとオンラインの融合)型店舗で、消費者が同社ECサイトで気になった服を取り寄せ、試着した上で購入できる。これまで地方百貨店では売れ筋商品や色やサイズが必ずしも十分にそろわないケースが多く、機会損失になっていた。それが解消できる仕組みは好評で、売り上げに占めるネット取り寄せの比率が4割もある。

実はオンワードホールディングスの構造改革によって、オンワードのブランドは高知大丸から全て撤退していた。だが復活を望む声も多かったため1年後に「OCS」を開いた。小島社長は「単に百貨店MDを集約すれば良いわけでなく、OCSのような新しい取り組みがなければお客さまは満足しない」と言う。

外商ビジネスに伸び代

高知大丸の前期(24年2月期)の総額売上高は84億円の見通し。前の期に比べて微増にとどまり、赤字のままだ。今期(25年2月期)は総額売上高89億円で、6期ぶりの黒字を目指す。

達成のカギを握るのは外商だ。総額売上高の約29%を占める。高知県の人口は約68万人と全国で3番目に少ないが、祖父・祖母世代との同居や共働きの世帯が多く、所得に余裕のある世帯はそれなりにある。だが、県内では高知大丸を含めて高級ブランドの品ぞろえがほとんどないため、県外に消費が逃げてしまう。

小島社長は「店内に常設されている高級ブランドは『ロレックス』だけ。常設の売り場を増やすのは難しいが、外商のお客さま限定の『ルイ・ヴィトン』『ディオール』『ブルガリ』などの催事を増やしていく」考えだ。現状、約10人の外商員も増強する。親会社である大丸松坂屋百貨店の外商サイト「コネスリーニュ」も活用して、提供する商品やサービスの幅を広げる。

集約した百貨店MDについても、今秋に向けて婦人服、紳士服、化粧品、食品などを対象に部分改装を予定する。

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